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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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王様と大臣

「……んっ、ここは……」


 私は目を開けた。白い天井が眩しい。

 横を見る、白い。


 軽く起き上がり周囲を確認する。私は今、壁、床、天井、全てが白い部屋にいるようだ。

 ベッドもシーツも白く、いつのまにか着ていた貫頭衣らしきものも白かった。


 えーっと、とりあえず私は記憶の糸を辿ってみる。

 勤務先が潰れて、アパートも追い出される寸前で、自殺して……



 それから、気がついたら不思議な場所にいて、ピンク色の光に包まれて、そして……




「……そうか、私は死ねなかったのか」





 私が物思いにふけっていると、不意に「ガチャッ」とドアが開く音がして、メイドらしき人が入ってきた。そして私と目が合うと、


「あら、お目覚めですか?少々お待ち下さいませ。」


 と言うと、そのままドアを出て行ってしまった。

 タッタッタッと足音がするから、少し急いでいるようだ。


 しばらくして、2人の身なりのいい男性を連れてきた。


「具合はどうですかな、天落者様。」


 いきなり50才ぐらいのガッシリとした体格の爺さんが、優しい笑顔で話しかけてきた。


「てんらくしゃ?」


 私は聞き返す。


「はい、この世界より上にある天の世界、そこよりごく稀に降りて来られる方々がいらっしゃる。その方々を天より落ちて来し者、天落者様と、呼んでいるのです。」



 話を聞いてみると、過去に天から落ちてきた人が、何人もいたらしい。そして、その人たちは様々な力を駆使し、この世界や国を助けたらしい。まるでファンタジーだな。



「それで、あなたはどんな力をもってるんですか?」


 いきなりもう1人の男が聞いてきた。

 小太りで、身長も高くなく、もみ手をしている。

 悪巧みとかしそうな人間だ。


「ちから?」


 私が聞き返すと、


「はい、天落者の方々は凄い力を持っていると聞いています。山をも切り裂く剣技を持っていたり、全ての攻撃魔法を使いこなせたり、死の淵にいた者を一瞬で全快させる回復魔法を使ったりと、数々の伝説を残しているのですよ。」


 だから私もそういう力を持っているはず、らしい。


「いや、いきなりそんなことを言われても……」


 突然のことに困って、とりあえず私は説明してみた。自分は普通の人間で、運動も勉強もそこそこで、元の世界でも目立たない存在だった、だからそんな力は持っていない、と。


「いやいや、そんな事は無いはずです。過去の天落者の方たちも、この世界に来てから力を使えるようになったらしいですし、これから目覚める可能性が高いんですよ。」


 小太りな男がしつこく食い下がってくる。


「だから、何か凄いことが出来るはずです。中には女神様の祝福を受けたり、神の加護を貰っていた人も。どうです?何か心当たりはありませんか?」



 女神……



 心当たりは、ある。ピンク色の光の中にいたあの子のことだろうか?

 だが、この男には言わない方がいい気がする。


「いえ、正直何も理解できないんですが……。天落者とか、力とか女神とか、今まで聞いたこともなかっんですから。」


 私がそう答えると、小太りな男は更に食い下がろうとした。

 しかし、


「大臣、天落者様は先程目を覚まされたばかりじゃぞ?

 まずはゆっくりお休みになってもらって、その後話をきけば良いじゃろう。」


 最初に話した爺さんが、小太りな男を制してくれた。


 助かった、ああいう自分の都合しか考えないような人は、苦手なんだよな。前にも自分の思い通りにならないと、しつこく付きまとってきた奴がいたけど、なんでああ言う人は他人の迷惑を考えられないんだろう。


「それでは本日はごゆっくりお休み下さい。えーと……」


 最初に話した爺さんが、何か考えている。


「そういえば、自己紹介がまだでしたな。

 ワシはこの国、商業国トレーの国王、レスター・トレー、

 そしてこの男が、この国の大臣の1人、バン・ソロバンじゃ。」


 言われて小太りな男こと、バン・ソロバンが頭を下げる。

 ていうかこういう時、国王自ら出てくるものなのか?

 私はつい聞き返してしまった。


「こ、国王ですか?」


「はい、天落者様がいらした時は、国を挙げておもてなしするものですから。それで、お名前を伺ってもよろしいですかな?」


 名前……うっ、嫌なことを思い出してしまった。


 というか、ここが日本と違う世界なら、本名を素直に言わなくても良いんだよな?


 私は国王に向かって名前を告げた。


「よ、ヨシキです。」


「ヨシキ様ですな、わかりました。それではゆっくりとお休み下さいませ。ドアの外にはメイドを待機させておきますので、何かありましたら彼女に伝えてください。それでは」


 そう言って、国王と大臣は部屋を出ていき、最後にメイドが一礼をしてドアを閉めていった。




しばらく、世界観の説明が続きます。ご了承下さい。

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