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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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訓練と実戦

ちょいグロが有ります。

苦手な方はご注意を!

「ええ、これならもう大丈夫でしょう」


「ありがとうございます」


今日、私はやっとエルさんから戦闘魔法の基礎魔法のOKをもらうことが出来た。生活魔法の方はもう使えるようになっていた為、最近はずっと戦闘魔法の訓練を行っていたのだ。

ちなみに今日はエリーゼ姫は不参加だ。なんでもマナーの訓練をしなくてはならないらしい。先生の指導が厳しいと涙目になっていたのを思い出す。


当たり前だが、王族というのはやはり大変だ。エリーゼ姫の出自を聞いているから、応援したい気持ちはあるのだが、私に何ができるだろうか?やはりまた、美味しいスイーツを作ってあげようか?そんなことを考えてると、


「ヨシキ様は戦闘魔法の基礎魔法についてはもう教えることはありません。あとはこれからどうしたいかをご自分で考えて下さい」


「自分で?どう意味でしょうか?」


「はい、今の実力でしたら、一般市民や弱い魔物に襲われたぐらいなら対処できるでしょう。しかし、相手が傭兵や冒険者だったり強い魔物だった場合、対処するのは難しでしょう」


確かに、相手があのガンボみたいな人だと瞬殺だろう。


「ですので、ヨシキ様がご自分でどこまで魔法を使えるようになりたいのかをしっかり考えて、それに対して適切な行動をとって頂きたいのです」


自分がどこまで魔法を使いたいのか……。考えていなかったな。魔法が使えて嬉しかったから練習を楽しんでやってただけだからな。


「今のままでいいのか、それとももっと魔法を使えるようになりたいのか。まずはそれを考えてみてください」


普通に生活するだけなら今のままでも十分大丈夫なのだろう。しかし魔法というものに、どうしても心をくすぐられてしまう。


「もし、もっと魔法を使えるようになりたい場合、どのような手段があるのでしょうか?」


「はい、大きく分けて二つあります。まずは魔道士に弟子入りするという方法。これは雑用や身の回りのお世話をする代わりに、魔法を教えてもらうという方法です。メリットは実際に魔法を見せてもらえる、直接指導してもらえるというところです」


なるほど……。


「デメリットは、弟子をとっている魔道士が少ない、属性の相性が合わない事がある、魔道士個人の独自の魔法は教えてもらえることが少ない、などですね」


「独自の魔法?」


「はい、魔道士の中には魔法を研究開発している人もいます。そうして開発した魔法を、魔道士ギルドに売ったり魔物退治に活用したりしています。なかでもオリジナリティに溢れる魔法は、その人の通り名に影響したりしますね」


「えっと、通り名とかもあるんですね」


「はい、例えば爆炎魔法で魔物を倒す『爆炎の魔女』とか、氷結魔法で食材の鮮度を保つ『氷結商人』などもあります」


「えっ?魔道士で商人なんですか?」


「ええ、魔法のスキルと商人のジョブを持っていれば可能です」


「なるほど……」


「あとは、よく魔法の制御に失敗して自滅する『自爆王』なんていう方も……」


そういう不名誉な通り名はいやだなぁ。


「話を戻しますね。魔法をもっと使えるようになるもう一つの方法は、独学で勉強する方法です。先程言った魔道士ギルドに売られた魔法は、有料で見ることができますし、王都の図書館でもある程度の魔法は見ることができます。

メリットは、自分のペースで出来る、働きながら出来る、弟子を募集している魔道士を探さなくていいところでしょうか?」


確かに自分のペースで出来て、魔道士を探さなくていいのは助かる。


「デメリットは、自分で実践して覚えていかなければならない、ギルドを使う場合お金がかかる、キチンとした指導を受けられない、と言ったところでしょうか」


なるほど。弟子入りみたいに実際に魔法を見れないのは習得する上では痛いな。文字から魔法をイメージしなければならないから。


「ですが、これからどうしたいかは追い追い考えていけば良いのです。ヨシキ様に今一番必要なのは、実戦で使えるようになることでしょう。練習で上手くいっていたとしても、実戦でも上手くいかとは限りませんから」


「確かにそうですね。実戦では緊張したり動揺したりしますから」


「はい、ですので明日の午後、王都近くの森でゴブリン退治をすることになっています、頑張って下さいね」


「…………えっ?あ、明日ですか?」


「はい、国王様もその方が都合がいいからと。騎士団でも新入団員の方は定期的に実戦訓練に出かけてますから」


「その騎士団の新入団員の方達と一緒にってことですか?」


「はい」


マジですか。

そういえば、私が今まで殺した生き物の中で一番大きかったのは、茶色で素早く動く通称『G』と呼ばれる昆虫だ。哺乳類なんて殺した事がないけど……。

私はゴブリンを実際に倒すことが出来るんだろうか?


◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎


「と言うわけで、ゴブリンと言えども何人もの人が命を落としている。くれぐれも油断せんように!」


国王様が騎士団の新入団員に発破をかけている。


「……あの……エルさん、いつも国王様自らが出てるんですか?」


私は率直な疑問をエルさんに投げかけた。


「いえ、いつもは部隊長ぐらいで……。大掛かりな討伐の時は騎士団長や王子が出ることはあるのですが……」


珍しくエルさんが動揺している。と言うことは、これは普通ではないことなんだろう。メイドのエルさんが来ていることも普通ではない気がするのだが……。


「エリーゼもあまり無理はせんように。実戦に慣れるためとは言え、攻撃魔法が使えんのじゃからあまり前には出んようにな」


「はい、お父様」


「というか父上、父上も若くはないのですからあまり無理をしないでくださいね」


「わかっておる」


そして国王様の近くには、エリーゼ姫とアレク王子がいる。いいのか?本当ににいいのか?王族全員でゴブリン退治なんて。


まぁ、国王様的にはエリーゼ姫にいいところを見せたいのだろう。そういう気持ちがわかりやすいほど出ている。


逆にアレク王子はなんで来たのだろう?国王と王子、二人とも城を開けてもいいのだろうか?そんなことを考えてると王子と視線がぶつかった、ような気がした。が、王子の視線は私の左に向いている。そして、そこにはエルさんが。


なるほど。


私はそっと距離をとり、ゴブリン退治の前線、騎士団の新入団員の方へ近づいた。ちょうどもうすぐゴブリンの巣のあたりだったはずだ。さて、練習の成果を試すか。



が…………。



「うぷっ……」


目の前では、阿鼻叫喚な光景が広がっていた。

「ギギャー!」というゴブリンの断末魔、宙を舞う生首、吹き出す体液……。


一時退避しようと後ろを見ると、


「ウインドバレット!」


国王様の放った魔法が、ゴブリンの頭を吹き飛ばした。

破裂する頭部、舞い散る体液。せめてもの救いは、体液が赤くなく緑色なところだろうか。


私は陣の真ん中で一人、吐き気と戦っていた。

そしてこの戦いで、私は全く何も出来なかった。





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