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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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世界の常識

「それではよろしくおねがいいたします」


 俺はエルさんに頭を下げた。

 自分の持つ能力を確認したあと、国王様や大臣と話をしてお昼を食べてから、エルさんに一般常識を聞くことになった。


 ちなみに、国王様と大臣との話は、ほとんど大臣が、

「素晴らしい!」だの、

「世界を変えるかもしれない!」だの、

「あなたはこの国の宝だ!」だの、

 勝手に一人で盛り上がっていたので、スルーしておいた。

 助けてもらったので、この国には何か恩返しはしなければいけないと思うが、勝手にこちらの人生を決めないで欲しい。


 国王様は、何か力になれることがあるなら、遠慮なく言って欲しいと言ってくれたので、有り難かった。


 早速、エルさんにこの世界の常識的なことを教えてもらいたいと言ったら、すぐOKしてくれた。

 大臣は自分が是非お教えしたい、と言ってきたが、丁重に断っておいた。王族や大臣だと、一般常識とかなりズレていそうだからな。このまま、王城でずっと過ごすつもりも無いし。


 と言うわけで、今、部屋には俺とエルさん、そしていつのまにかエリーゼ姫が来ていた。国王様の許可が取れたらまた話をしましょうといってたけど、ちゃんと取れたのか?まあ、いいか。前の寂しそうな表情も気になっていたし。


「それではよろしくおねがいいたします」


「はい、よろしくおねがいいたします。では、まず何について聞きたいですか?」


「では、出来ればこの国のお金について聞きたいのですが……」


 まずはお金だ。この国の歴史や仕組み、情勢も気にならないわけじゃないが、これらは知らなくてもある程度は大丈夫。しかし、お金に関しては、知らなければ生きてはいけない。物価やお金の価値を知らなければ、最悪騙されてり、ボッタクられて野垂れ死ぬかも知れないからな。


「わかりました、では、まずこの世界のお金について説明致します」


 この質問を予想してたのか、エルさんはポケットから5種類の硬貨を取り出して机に並べた。


「これがこの世界の共通の通貨です」


「この世界の、ってことは、国ごとに違う通貨を使ってないんですね?」


「はい。この国のお金について聞きたいと言われたので、もしやと思いましたが、ヨシキ様の世界では、国ごとに違う通貨を使っているのですね?」


「そうですね、通貨も言葉も文化も国ごとに違っていました。ちなみに言葉や文字も共通なのですか?」


「はい、言葉も文字もみな同じものを使っています」


 なるほど。となると、万が一この国に居れなくなって出ていくときも、何とかなるな。


「そしてこの通貨ですが、ヨシキ様の向かって左から、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨となっています」


 銅貨と大銅貨は赤茶色、銀貨と大銀貨は銀色、金貨は金色と元の世界と同じ色だな。

 そして、銅貨と銀貨は百円玉ぐらいの大きさで、大銅貨と大銀貨、金貨は五百円ぐらいの大きさだろうか。


「銅貨5枚で大銅貨、大銅貨2枚で銀貨、銀貨5枚で大銀貨、大銀貨2枚で金貨となっています。路上の屋台などで売っている串焼きなど、簡単な食事で銅貨1〜2枚、食堂などの普通の食事で大銅貨1枚〜銀貨1枚ほどなのですが、この説明で通貨の価値は理解出来ますか?」


「ええ、大変分かりやすいです」


 やっぱり、この人は頭がいいな。俺の質問から、俺の世界が通貨が国によって違うことを感づいたし、通貨の価値も一般的で分かりやすい。

 とりあえず、銅貨が百円くらいで、銀貨が千円、金貨が一万円ぐらいと覚えておけば、大丈夫そうだな。


「あとは、ミスリル銀貨とセヴィール金貨と言う貨幣もあるのですが、これは国や貴族、大商人ぐらいしか使う機会はないので、省かせて頂きます」


 ん?ミスリルは聞いたことがあるけど、セヴィールは聞いたことがない。


「あの、ミスリルやセヴィールとは一体……」


「この二つは特殊な魔法金属で、ミスリルは銀色で硬く、魔力を通しやすい金属です。逆にセヴィールは金色で重く、魔力を吸収しやすい金属です。両方とも稀少な金属ですが、武器や防具に使われたりもします」


 なるほど。ファンタジーてよく聞く金属があったかと思えば、初めて聞く知らない金属もあるんだな。


「わかりました、ありがとうございます」


 ここで、今まで黙って話を聞いていたエリーゼ姫が、おずおずと質問をしてきた。


「あの、先生は何故ヨシキ様の世界が、同じ通貨を使ってないってわかったのですか?」


 エリーゼ姫はわかってなかったのか。


「それは、ヨシキ様が『この国のお金』と言ったからです。もしヨシキ様の世界で皆同じ通貨を使っていたのでしたら、この世界のお金と聞いてきた筈です。ですが、この国のお金と聞いてきたので、きっと通貨が国によって違うのだろうと予想したのです。」


「なるほど。あと、何故通貨の価値を話す時に、食事の話を例にしたのですか?」


「はい、人間が生きるのに必要なものに、衣・食・住があります。その中で一番お金を使う機会が多いのは食でしょう。でしたら、その一番お金を使う機会が多い食を例にした方が、身近でわかりやすいと思ったのです」


「わかりました、ありがとうございます」


 エルさんは教え方が優しいな。エリーゼ姫の先生だったというのも納得できる。

 エリーゼ姫も勉強熱心で、しっかりと人の話を聞いているみたいだ。


「今の衣食住の話で気になったのですか、一人がひと月生活するのにどのくらいお金がかかりますか?という前に、ひと月という暦はこちらにありますか?」


 冷静に考えたら、週や月、年という概念が、こちらにはないかもしれない。すると、


「はい、ありますよ。ひと月は35日で10ヶ月で一年です。一人が生活するには、月に金貨10〜12枚ぐらいでしょうか?もっとも家賃の金額にもよりますし、だいたい自炊をするという感じになってしまいますが」


 自炊をすれば、金貨10枚くらいでも生きていけるのか。一年の日数も元の世界とそこまで大差はないな。


「なるほど、ありがとうございます」


 そんな風にわからないことを聞きながら、一般常識の勉強は進んでいったのだった。






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