77話「K.K.N.40!」
こんにちは! というか、おはようございます!の時間から書き始めてこんな時間。。。
「そういうわけで、最近眠れないんです……」
マーマン、いわゆる魚人が魚型モンスター捌きながら、はぁ、と深いため息をつきながら語る。
『働きすぎだな。休むことを進める』
メイちゃんがホワイトボードを静かに掲げて目の前に置かれているカップを大きな口の中に入れ、中の人に受け渡す。
今アユムとアームさんとメイちゃんと最近お茶にはまりだした権兵衛さんが並んでいる。
きっかけは暗黒竜先輩のところのドラゴンブルーからの連絡だった。曰く『先日の36階層でモンスターを狩りまくった件について、管理主である40階層の階層主がいたく感動しておりまして、感謝を申し上げたいと』会計書類を抱えたドラゴンブルーはこう続けた『働き者なので、干物化工場も簡易なのでいいので作ってもらえたらなぁ、とか私は考えてます』。エレベータのおかげで35階層は物流拠点へと変化しているらしく、大きな収入源となっている魚型モンスター商品は数を確保したいようだ。
そして日程調整したうえで36階層に来たところ、水辺にいそいそと準備に追われていた魚人さんを見つけたのである。驚いたことにお茶とお茶菓子まで用意している。
「……。権兵衛さんみたいに部下をお持ちになればいかがでしょうか」
アユムはお土産として持ち込んだっダンジョン作物を置く。3袋ほどあるので厳選すれば5匹ぐらい知性に目覚めそうな量である。
「……。……」
マーマンは、正確にはあまたの魔法を駆使するデス・マーマンという恐ろしい魔物なのだが、袋に手を伸ばすと、すぐにおびえて手を引っ込める。そして気の弱そうな顔で一言。
「……反乱されそう……」
お茶を吹き出す管理職2名。ボー然とするアユム。そして、『お前天才か!』と目を丸くして納得しているアームさん。アームさんの目の前に干物がなくなったことに瞬時に気付いたマーマンはアユムたちから顔をそらさないように、アームさんにお代わりを差し出す。
『……お前、管理職向いてないわ……』
「確かに……」
うなずく二人。メイちゃんの中からお茶をすする音がする。
「でも、僕一人だと階層管理できなくなってきて…………」
涙目のマーマン。そこから語られる物語。
先代のマーマン死亡理由。過労死。HPぎりぎりまで管理作業(狂ったモンスター処分)をしていたため、ギリギリまで休まず。結果、眩暈でよろけたところダンジョントラップにかかったらしい。
ダンジョンマスターの苦笑いが目に浮かぶ。
しかし、意外なことにマーマンの話を神妙に聞いているのはアームさんと権兵衛さんであった。
「がう(つらいよな。一人で管理。一人じゃ処理しきれない仕事。でも、部下はいない。やりきれない、すぐに狂うやつら。予定の場所から移動して忙しい中探さなきゃならないし。でも、もっとも厄介なのはストイックな自分。責任感で頑張る自分。お母様のためにと頑張る自分。自分の中で大事なものが削られていく感覚がな……)」
「ボウ(部下がいても基本仕事量が半端ないからな、変わらんぞその悩みは……)」
「わかっていただけますか! さすが同士です!!」
感極まって抱き合う3匹。
『ダンジョンってブラック…………』
それ、ベンチャー社長に言われたくないと思うよ。
「ブラックってどういうことですか?」
ミイちゃんはため息をついてブラックを説明するが納得していただけない様子。中世の農業なめんなよ。ということでアユムにはまだまだぬるく見えるようです。
「で、お二人の現状はどうなんですか? まだ厳しい労働環境ですか? そんな中自分みたいな魚のために来て頂けてるなんて、魚的に感激です!」
「ボウ(……えっとだな。何といおうか…………)」
「がう!(三食昼寝付き! さらに仕事は冒険者がしてくれる!)」
マーマンは握っていた二人の手をそっと離して距離をとる、その目はとても冷たかった。
「お二人にはがっかりです。魚的に……」
その反応に慌ててたのは権兵衛さんである。
「ボウ(あれだ、俺の様にうまく部下を使えば余裕が…………)」
「人間関係で自死しちゃいます! 無理です! 魚的に!」
言い切ったマーマンに唖然とする権兵衛さん。そこでのっそりと立ち上がるアームさん。その表情は自信に満ちている。
「がう(そこは俺みたいに、他人に任せちゃいなよ♪ 意外と何とかなるもんさ! 逃げるのは悪いことじゃないよ!)」
「あなたの場合は、アユムさんと言うハイスペック人間と、多数の冒険者のおかげじゃないですか! そもそも、今でも25階層以降には冒険者さんたち面倒臭がって来てくれないじゃないですか! しかも30階層以降は、環境が劣悪だから普通の冒険者さんたち来れないし! あ、話してて魚的に絶望してきました……。……僕に価値なんかないんだ……。やってる仕事も意味ないんだ……。だって魚だし……」
一気に鬱が爆発したマーマン。アームさんはちょっと涙目で下がる。
「そんな時は、ニュータイプ理論に基づいた感覚領域拡張手術なのです!」
「はいはい、ブラック様。ハウス。ハウス。おうち帰りましょうね~」
「……最近アユム君の私に対する扱いが冷たいのです……」
最終手段をいきなり行使しようとした光の神は、空気を読んで帰っていった。
過労死間際のモンスターにさらに仕事をはかどらせる手術したら…………。
「あの幼児の人怖いです。魚的に……」
「とりあえずお帰り頂いたので話を戻しましょう」
アユムが仕切りなおす。
「とりあえず話をまとめますと、マーマンさんとしては先日の『魚系魔物を美味しく頂いた』会で大いに感動されたと」
「魚的に感謝です」
「でも、焼け石に水だったと」
「でも、魚的にはそこに活路を見出したいのです!」
「そこで、最近運営が安定してきたアームさんと権兵衛さんを呼んで、感謝と相談をしたいと」
「ネームドのお二人うらやましいです。魚的に」
ふうと息を吐くアユム。魚が若干うざい。
「先代と同じように過労死だけは避けたいので何卒お知恵を拝借したく思うのです! 魚的に」
『あ、すまん。そろそろ時間なので、キグルミファイト行ってくる』
「迎えに来たよ! メイちゃん! 僕とぉとぉ君だよ!」
突如現れた少年型のぬいぐるみはセリフを言いきると、小さく舌打ちをする「なんでこの私がこんな目に……」。反省していない様子のお嬢様でした。
そういうわけで。
次「マーマンの愚痴」と「キグルミファイト2回戦」どっちの視点にしようか迷っているところで今回のダンジョン農家終了です。
KKN40=K(過労寸前)K(階層)N(主)40(40階層)
すみません。。。脳みそが仕事モードから抜けない。書けない。が続いてます。
のんびりお待ちいただけると幸いです。
マーマン「名前募集中! 魚的に!」
こいつ絶対過労死しねーよ……。