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73話「いいな、チャックなどない!……はい、復唱」

 「粗茶ですが…………」

 「お酒があると伺いました。ワインの亜種だとか…………」


 緊張して固まっているマールにワインを要求する神様(幼児)。正直、下界用分身体が発す程度の神気とは言え1級神の濃密な神気である。この至近距離で耐えられるのは常時神気で生きているアユム位である。


 「あかん! 幼児に酒は最悪や!」

 「私、1億歳なのですが?」

 「あ、店主さん。お茶菓子とこの子のお代わりはブドウジュースでお願いしますね」


 ホワイト様がマールに目くばせすると、マールはぎこちなく一礼すると店に引っ込んでいった。


 お食事処まーるは基本外でのお食事である。屋台のスタイルと思っていただいてよい。

 そこに今6人程鎮座している。

 1人目はブラック様専用クッションで座高調整して椅子に座る、新作マスク装着済みのマスク・ド・ブラック様。その隣でブラック様を甲斐甲斐しくお世話をしているのはマスクのせいで美貌が台無し、最近仕事に忙殺されて出番のないマスク・ド・ホワイト様。そして何故だか地べたで土下座の金髪ツインロールで紅いドレス装着の12歳位のお嬢様。

 そしてテーブルを挟んでピンクの猫……?をイメージした着ぐるみ……もとい、ゆるキャラメイちゃん。その隣にびっくりイカ人間事イックン、そして2人の保護者アユム。


 最近お茶の入れ方にもこだわりを持ち始め、若干引かれている権兵衛さんの指導の下、マールが居れた緑茶が並んでいる。


 「中々なのです。お茶菓子に期待です」

 「甘味強めが希望です」

 「…………何しに来たんですか?」


 堪り兼ねたアユムが尋ねる。正論である。


 「…………足痛い…………」


 アユムに答えるようにお嬢様が声を上げる。あ、ホワイト様の額に青筋…………。


 「ひゃう!……………やめてくださいまし、ホワイト様。……あう!……、やめろっつってんだろうが万年2級神の行き遅れババア!」


 …………。


 あー、うん。俺しーらない。天界でホワイト様とブラック様の恋物語を知らぬものは居ない。いないはずですよ。あと、ブラック様を探すために1級神の昇進を断り続け神界の派閥まで生んでしまったのも有名な話です。因みに、1級神に複数の【我が子】を持つ唯一の神ホワイト様を指して【取り扱い危険神】と恐れらえていたりしました。ま、2年前にひょこっとブラック様が帰ってきて収束を見ているのですが……。そんなホワイト様の危険な部分を、お嬢様気にせず踏み抜きましたね……。もしかしたら、世界の二個三個消えちゃうかも。それも運命ですかね…………。どうでしょう? ゲストの運命神様。え、何? ちょっと、あの小娘の司る世界壊してくる? お母様にあの言葉遣い許せん? ですか。うん。危ない。あー、警備の方。創造神様達をお呼びして、あと可愛いぬいぐるみも~。うん? なんでぬいぐるみの事を知っている? バリバリキャリアウーマン風の運命神様、プライベートは乙女趣味♪は天界で有名ですよ?? あ、走って逃げていった。あ、警備の方、色々ご報告お願いします。


 さて、下界に目を向けてみると、ホワイト様が有無を言わせずブラック様をお膝に座らせてお嬢様を見下ろしています。


 「うふふふ、小娘。ブラック様に憧れているのね。悔しいわよね。貴方の世界にブラック様の欠片は転生しなかったのですものね。うふふふふ。残念ねぇ」


 ブラック様を撫でて悦に入るホワイト様。運ばれてきたチーズケーキに手を伸ばすがホワイト様にホールドされて手が届かないブラック様。しばらくしてそっとアユムがケーキをとりわけブラック様に手渡す。


 「アユム君ありがとーなのです!」

 「……ブラック様、その……、何とかしないのですか?……」


 聞きづらそうに尋ねるアユム。

 チーズケーキを頬張り満足げのブラック様。頬についてる欠片はお嬢様と言い合いをしつつも『ホワイト様がそっとぬぐう。


 「飽きたら終わるので放っておいていいですよ」

 「…………ジュースお持ちしました…………」


 マールが木のカップになみなみと注がれたブドウの様なダンジョン作物のジュースを置く。


 「待つのです。このチーズケーキを作ったのは貴女ですか?」

 「はい……お口に会いませんでしたか?…………」


 青い顔のマール。しかし、しっかり完食して頬にお弁当で着けたブラック様は不満などない。あったら『完食して言うな!』と突っ込んでいい。


 「貴女が望めばこの世界で一番の料理人を紹介しますよ。ちょうど今大陸西部で楽隠居始めたところなので、珍しい食材で釣れると思うのですよ。如何?」


 少しの時間悩むまーる。マールの師匠はハインバルグだが最近の放置に少し思う所もあった。


 「ちなみに、どのような御仁なのでしょうか」


 ハインバルグと一緒に弟子入りすればいいかと気軽に聞いてみるマール。


 「2年前まで神獣の御子様の護衛長をしていたマッスルな筋肉です」


 重複してます。筋肉。

 突っ込みどころだがマールは固まる。そして色がなくなり、その場で倒れてしまった。


 「いや、御子様が神獣様になって別世界に派遣神獣様で行っちゃったので暇になって旅をしていたらしいのですが、旅先で気があったドラゴンと『ドラゴンナイト参上!』とか言って遊んで歩いているのです。力を持つものとして世界に貢献させなければならないのです。という事でここで料理教室を……あれ? 聞いてます?」


 いえ、マッスルOFマッスルのくだりで気絶してました。てか、ブラック様にとって世界への貢献度は、お料理教室 > 世直しの旅、なのですね…………。


 「…………」


 あきれていたアユムと神界政治にかかわる事なので口を挟めなかったイックンの肩をメイちゃん(中はおっさん)がちょんちょんと突く。


 『何しに来たのか聞こう』


 先ほどブラック様から『キャラを守る為には必要ですよね』と提供されたホワイトボードにそう書いて提示する。


 「ん、あ、すみません。チーズケーキ中々においしかったもので、テヘ♪」


 いや、この神そうとうなお年寄りですよ?


 「さて、ここに来た理由ですよね。………………ガリーシャさん。まずは謝罪を」


 ブラック様はホワイト様のお膝の上から高濃度の神気をお嬢様ことガリーシャ様に放つ、それは銃弾の様にガリーシャ様の体を打ち抜く。神とは言えこれは激痛なはずである。


 「えへへへ、これが愛しいブラック様の神気、存在にしみますわ」


 ガリーシャ様は残念な神様だった。


 「……ホワイトさん」

 「はい、戻ってこい発情期の雌猫!」


 ぶは!


 メイちゃん(中の人は二十台後半の起業家♂)が紅茶を吹き出す。メイちゃんは雌猫な設定である。


 「どうしました?」

 『問題ない。続けてくれ』


 ブラック様は可愛らしく小首を傾げながら、ガリーシャ様を見ます。


 「謝罪しないと、貴女の存在を否定する言葉を吐き続けますよ」

 「いやです。そしてごめんなさい。」


 即座に現実世界に戻ってきてメイちゃん(しつこい様だが男だ)に土下座するガリーシャ様。清々しいほど欲望に忠実である。


 『で?』


 でかでかと2文字。


 「まずは謝罪を。神の世界では契約は絶対です。それを破ったとあっては低級の者であれば存在の抹消もあり得た罪です」


 まさに、その通りなのだ。永遠の時を生きる神にとって約束は絶対である。何故そうなったのか、こんな話がきっかけでした。昔とある世界の創造神様と先代の結婚神様が婚姻を結ばれていました。神の世界で重要な役職を持つ恋愛神様は多忙を極めておりました。何といっても無数に存在する世界で全ての結婚を司るのですから大変だったらしいです。そこで、一つの世界で最高神とはいえ創造神様は結婚神様ほど忙しくはなく、暇を持て余した結果、……そう浮気をしてしまったのです。そして何とかなんとか仕事をこなし長期休暇を取った結婚神様の前で浮気がバレてしまったそうです。激怒した結婚神様。恋人つなぎで手を取り合って逃げる創造神様と女性神。アルカイックスマイル。結婚神様は創造神様と浮気女が逃げ込んだ、創造神様がつかさどる世界を見てほほ笑んで…………次の瞬間世界を一つ消し去りました。そんな経緯で、天界では契約、約束は絶対である。絶対なのです。絶対なんだよ。守れないなら口約束もするなよ? 世界が滅ぶぞ(リアルに滅んだし……)。


 「ハァ……」

 『うむ』


 お2人は納得がいっていないようですが、謝罪は受け入れたようです。


 「そして、風間大志かざまたいしさんの今後について説明に上がった次第です。……ここまで、よろしいでしょうか」


 メイちゃん(風間大志)が頷く。


 「正直申し上げますと、このまま地球へご帰還いただくことは不可能です」


 ホワイトボードを取り落とすメイちゃん(大ちゃん)。


 「地球と原住民が呼ぶ世界なのですが非常に渡るのが難しい世界なのです……困ったことに」

 「あ、ブラック様。このチーズケーキ貰うね…………うん、でりしゃす」


 さっと、現れたのデリバリー神獣様。うさ耳着物美人様だ。控えおろう!


 「見て頂いたように、神様と言え地球から出るのはできますが帰る為には非常にエネルギーが必要となるのです。それもひとえに地球が多重世界だからなのです…………」

 『多重世界?』


 ホワイトボードを拾い上げ震える手で書く。メイちゃん(恋人が心配なリア充男。爆発希望)。


 「いい質問です」


 軽く溜めるブラック様。うん。似てない。


 「大ちゃんは世界線ってネタはご存知ですか?」

 『大ちゃんいうな! メイちゃんと言え! と言うか、世界線は知っているがネタ言うな!』


 どうやらメイちゃん(シュタイ〇ズ・ゲートを知ってる男)はこのネタをご存知様です。


 「地球とは世にも珍しい【可能性世界】なのです。メイちゃん(笑)もこの世界が地球の価値観に近いのはご存知ですよね? 実は、色々な世界のプロトタイプは地球で排除された可能性世界の一つが元になっているのです」


 ……フリーズする世界。まぁ、理解できませんよね。でもそのまま進む!


 「地球の【可能性世界】ですが多数の可能性と言う名の世界線が存在し、そして二十年に一度のサイクルで世界融合が起こり最優の可能性が二十年サイクルの始まりの地球となるのです。その過程で複数分の可能性世界が消費され、次の世界へのエネルギーに変換されます。そしてエネルギ還元しなくてもいい世界については希望の世界に譲渡され新世界創造の元になります。ここ数千年は次の地球の為にエネルギー貯蓄に回されていますが……。そんなことで、地球から出るのは複数世界から同時に自分と言う存在を落とし融合して転送すれば世界を渡れるのですが……」


 ブラック様はそこではたと周りを見回す。誰一人付いてきていない。と言うか同じ1級神の2柱も付いてきていない。なぜだ。とブラック様驚いていらっしゃいます。まさに理系脳。


 「まぁ、とにかくあなたが勝ち上がってしまった為。貴方を帰宅させるためのエネルギーがなくなってしまい……」

 『……次で帰れるよね……。次は半分でしょ? トーナメントだし』


 メイちゃん()は当然の疑問を投げかける。


 「すみません。それは不可能です。時間がたつにつれ地球世界には戻しづらくなるのです、何せどんな衝撃で世界線が増えるかわかりませんので」

 『なん。。。だと。。。』


 絶望するメイちゃん(リア充♂)。


 「ご安心ください。大会終了まで待て頂ければ、会場を解体して発生したエネルギーで確実にお帰り頂けます。つきましては、お選びいただきたいのです」


 ブラック様が複数条件を提示した中でメイちゃん(雌猫♪)は一つの条件を選び取った。


 「良いんですか? 天界で豪華な生活もできたのに……」


 心配するアユムにメイちゃん(男前)はこう返した。


 『俺の仕事も農業関連なんだ。現場を見るのもいい経験さ』


 メイちゃん(イケメン)はそう言うとアユムに背中を向ける。


 「あ、背中に銀色の……」

 「背中に銀色などついていない。いいな。チャックなどない。復唱しろ」


 子供が聞いたら泣きだしそうなどすの聞いた声で詰められて苦笑いするしかないアユムだった。

 おい、ホワイトボードはどうした! 意外と設定がばがばだよお前!!



ここまで読んでいただきありがとうございます。

ああ、この提携挨拶も久しぶりですね。

心に余裕ができたという事でしょうか。

余裕と言えば新作書きました。気分転換の為です。

数字? ニーズ? 俺にはニーズがある。そんな作品です。

1話黒いですが、2話目からぐう鱈節です。。。。どうしてこうなった……そんな感じで。


ん?ぐう鱈節=誤字って……ウワァァ-----。゜(゜´Д`゜)゜。-----ン!!!!

正解!

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現在、こちらを更新中! 書籍1・2巻発売中。
アームさん
― 新着の感想 ―
[一言] 駄神、迷惑しか発生させないのかぁ そのせいで地球が訳分からんもんになってるんじゃ…………
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