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67話「超級モンスター」

シリアスさん「よく来たな! って帰ろうとするな!! ちょっとだけ見ていってくれたら……うれしいかもだぜ………」

鱈「めんどくせぇ……シリアスめんどくせー!」

 朝日と共にコムエンド上空から打ち下ろされた光を、悪魔ちゃんことアルフノールは満足げに眺めていた。


 勝利の光だ。

 先行して潜入させていた後輩とエルフが功を奏した。

 超級モンスターが郊外に発生したらどうしようかと悩んだ時期もあった。

 郊外に出たらアユム達をどう誘導しようかと企てていたが、その計画は使わずに済んだ。

 超級モンスターはダンジョンに生れたのだ。

 ダンジョンマスターである、悪魔ちゃんにとってライバルの女は神から補助もあり別ダンジョンに転移して逃げられたらしい。


 悪魔ちゃんにとってはいい話である。


 ダンジョン作物に関するレポートでコムエンドのダンジョンマスターは神界関係者から注目を浴びていた。同時期に神に仕え始めた者として、悪魔ちゃんは彼女をライバルだと思っていた。種族的には成りあがり者のダンジョンマスターより由緒正しい悪魔族である自分の方が上である。しかし悪魔ちゃんはそんな小さなプライドには頼らない。実力で、彼女とは競い合いたかったのだ。

 だから、降って湧いたようなダンジョン作物の功は悪魔ちゃんにとって許しがたい話である。

 だが今回の超級モンスター。

 特にダンジョンマスターのおひざ元で発生した超級モンスターに彼女はダンジョンを乗っ取られてしまったのだ。功績は消えることは無いが、色褪せるだろう。そして悪魔ちゃんが勇者と聖女を使って超級モンスターを打ち倒せば、また悪魔ちゃんはダンジョンマスターと肩を並べて争える日が戻ってくる。胸を張ってライバルとして勝負がそこから始まるのだ。


 だから、悪魔ちゃんは聖剣とその勇者がその身を削り放った光。ダンジョンを貫くように撃ち込まれた光を、まぶしく、頼もしく見守る。


 予定通り、神剣使いアユムはダンジョンの異変に気付き超級モンスターと接触したのだろう。悪魔ちゃんは地中から聖なる波動を感じるとイットに魔法を掛け上空へ待機させた。

 そして超級モンスターが地中から現れた。

 悪魔ちゃんは彼の事を『ダンジョン型の超級モンスター』と呼んだ。史上最も多芸な、そして厄介な超級モンスターだろう。


 ダンジョン型の超級モンスターは最大の難敵を処理して悠然と現れた。

 そしてそこで悪魔ちゃんの勝利を確信した。


 見守るのは昨日異変を伝えられた冒険者たちと領軍。

 その彼らに神殿の権力を使い勇者の一撃を見せつけている。


 「さぁ! 勝利の歌を歌いましょう!」


 勝利を確信したアルフノールの笑顔で戦準備を整えた強者たちは一瞬安堵した。


 だが、


 次の瞬間皆の表情が引き締まる。



 「やってくれたな!!!!!!!!!!!!!!!!!! 屑ども!!!!!!!!!!!」


 黒いタヌキチは巨大化していた。

 表面が焦げている。

 その眼には明確な怒りが宿っている。


 黒いタヌキチは怒りの眼差しを中空で力無く漂っていたイットに向け、そして尻尾を振る。尻尾は途中から触手を伸ばし、勇者と聖剣を飲み込んだ。


 「おのれ! おのれ! おのれ! アユムを封印しているせいで力を制御できん! くそ! 僕のこの手で人類たちを殺し、あいつに絶望を味わってやりたかったのに! 無駄なあがきをしやがってこの屑勇者が!!!」


 悪魔ちゃんにとって絶望の叫びが周囲に響く。

 この超級モンスターは想定以上の力を持っている。


 「もういい! 人間ども僕の真価に恐れ慄け!」


 巨大な黒い狸はそう宣言すると大きな水滴の様に変化して大地に染み込んだ。

 そして数秒後、大地から肉が湧き上がり、そして肉からドラゴンが生まれる。次いで見たことのない獣人の様なモンスターが生まれる。

 気付けばそこには100を超えるモンスターが生まれた。


 「失敗ですな……」


 領主オルナリスが簡易椅子から立ち上がり、溜息とともに吐き出す。

 悪魔ちゃんは反論はできない。

 貴重な初手、不意打ちの一撃をコムエンド冒険者、兵士たちに反感を買う中、神のご意志としてイット達にごり押した結果がこれなのだ。


 「相手は超級モンスター、しようがありませんな。神とは言え万能ではない」


 ここはコムエンド北西に位置するダンジョン前に広がる進入禁止エリア。通常時はダンジョンと住居エリアを隔離するために設けられているエリアだ。

 通常、冒険者は一本の道を通って街から離れた位置にあるダンジョンへ向かう。その際冒険者たちはダンジョン周辺2kmが危険地域として隔離されている光景を目にする。万が一が無い様に隔離されているのだ。

 現在そこに冒険者107名と領軍400名が布陣している。


 「……アルフノール、イットは……」


 神官服を握り締めリムがアルフノールを見る。

 アルフノールは首を横に振る。


 「死んではいない。それだけはわかる」


 アルフノールは下級悪魔として勇者に加護を与えていた。神の様に一生続くものではなく数日しか効果が無いが力の向上、簡易防御結界の効果を施した加護を。だからまだ結界が破られていないという事は……。


 「貴方の方は?」

 「まだ融合してないみたいよ……」


 奥の手もまだ使えない。

 悪魔ちゃん一行が呆然としているうちにも、ダンジョン上部より地獄の蓋が空いた様に湧き出すモンスターと冒険者&領軍の戦争が始まる。


 戦士の雄たけびと武器を打ち鳴らす音、戦士の足音がダンジョン一帯に響き渡るのだった。



すみません。書いてて気持ち悪くなってきたので、途中で切って休みます。

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アームさん
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