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107.4「妄想の中で(アユム欲望3)」

~アユム封印のとある場所~

「がう(走るのやめる!)」

「ぼう(……はぁ)」

「ボッ(また大将の悪い癖が来たっす……)」

 権兵衛さんは「やれやれ」とばかりに足を止め振り返り、土魔法を駆使し大地と反発する力を利用し超低空を飛んでいたワームもため息と共に止まる。


「がう(少し頭使いなよ!)」

「ぼう(う、うん?)」

「ボッ(……あれ?大将からは絶対に聞こえてこないはずの言葉が聞こえてきたっす。幻聴?)」

「ぼう(奇遇だな俺もだ)」

 権兵衛さんとワームさんは互いに顔を見合わせ首を捻る。

 何とも言えない信頼感である。


「ぼう(貴様いつから入れ替わった!)」

「ボッ(本物の大将はどこっすか!)」

「がう(俺は俺だもん! 偽物じゃないもん! てか、お前らの俺評価がよ~~~~くわかったよ! こん畜生! だからあえていってやる! ば~~~~~~~か!!!!)」

 拗ねたように丸まり暴言を吐き散らすアームさんに権兵衛さんとワームさんは顔を寄せ合い小さな声で「本物か?」「認めたくないっすが本物っす。この器の小ささとか」などと失礼なことを言っている。アームさん気付け。


「ぼう(ふむ、貴様が偽物でもいい。『頭を使う』とはどういうことだ?馬鹿な我らでは思考が追い付かぬ。故に頭の良いアームよ、教えてくれぬか?)」

「ボッ(俺は大将がカッコよくて頭がいい良って信じてたっす。だから頭の良い大将に教えてほしっす!!)」

「がう(……ほんと?)」

 チラリと権兵衛さんとワームさんを見る。

 権兵衛さんとワームさんは今浮かべている『笑み』が『苦笑い』に変わらないように言葉を連ねる。

 

「ぼう(うむ。アームよ。天災として非才な我らに答えを示してくれぬか?)」

「ボッ(よ! 天災! かっこいいっす)」

 天才ね。うん。


「がう(……しょうがねーな♪)」

 先程までの不機嫌はどこへやら、満足げに立ち上がるアームさん。


「がう(まず考えるんだ。……ここはどこだ?)」

「ボッ(アユムの精神体内部っす!)」

「ぼう(正確に言うと神体と精神体を絡ませている封印術式が生み出した空間だな)」

 アームさんはその回答を聞いて鷹揚にうなずく。『60点』と謎の上から目線の表情を浮かべながら。


「がう(説明された通りの回答だな。もう少し自分の考えを出さないと……やっていけないぞ)」

 キラッっと流し目のアームさん。

 ワームさんは「うざっ」と言いかけてしまった。

 権兵衛さんは「何をやっていく前提?」と突っ込みかける。


「がう(『封印術式の生み出した世界』の上に居る。そう勘違いしたのだな)」

 人間であれば腕組をしているイメージである。

 だが巨大なお猫様が決めてみても……。


「ボッ(違うんすか?)」

「ぼう(ほう……)」

「がう(如何に神々が施した封印とはいえ、アユムにかけているんだ。封印が上位でアユムが下位という事がありえるかな?)」

 権兵衛さんとワームさんは衝撃を受ける。確かに自分たちは勘違いをしていた。小さいとはいえ世界を作り出すことが、地上に置いて神々が行使できる『力』、その範囲内だろうか?


 答えは『否』である。

 小さな世界を作り出せるのであれば封印術など使わずその世界にアユムを絡み取る。そしてアユムをその世界の住人としてしまえば……。


 思い返してほしい。3章で色々な裏技を行使してまでダンジョンに『別世界』を作り出した神は、2級神であった。

 2級神、つまり主神クラス。今回暗躍している神々の派閥はトップが3級神である。

 高々『複数の派閥を巻き込んで対立派閥の神を引きずり下ろせるチャンス』にその様なリスクを冒すだろうか?

 そして、格上の2級神が作成した世界も、上位神である1級神が『地上に行使できる範囲の』力で難なく破壊されている。


「がう(我々は『アユムの精神世界』の上に居る! ……間違いないね)」

「ボッ(おお! なるほど!)」

「ぼう(ふむふむ……)」

 ダンジョンマスター達が当初想定していたのは『コストはかかるが外部からの干渉可能な』アユムの神体への封印術だった。

 だが、想定外の介入があり警備体制がほころびを見せると、そこから一歩進んだ術が行使されてしまった。『アユムの精神』を基盤とした複雑に絡まれた『外部からの干渉を一切受け付けない』封印術を。


「がう(『アユムの精神世界』で、封印ポイントに居るのに何にもであわない……それが何を意味しているか……)」

「ボッ(……本格的に大将が偽物に見えてきたっす……)」

「ぼう(人とは成長する者だ……、時として急激に……)」

 自分の世界に入っているアームさんには2人の言葉は届かない。


「がう(ごはん準備が『まだ』だから、呼びに来ないのだ!!!!)」

「ボッ(……おかえり! 大将!!)」

「ぼう(3つ子の魂百まで……。根幹は早々に変わらんという事か……)」

 権兵衛さんとワームさん。ほっとするのは酷くない?


「がう(なので俺は……寝る!!!!)」

 アームさんは再び丸まって寝てしまった。


「ボッ(……大将の言う通りかもしれないっすね)」

「ぼう(確かに走り続けても無駄かもしれんな)」

「ボッ(予測っすけど、俺達は『最も深い』ポイントに向かっているのかもしれねーっす)」

「ぼう(ああ、他が解放されたらたどり着ける……つまり『準備がまだだから呼びに来ない』という事だな……)」

 権兵衛さんとワームさんもその場で座り込み、状況が変わるのを待つことにした。

 彼らの予測通り、4つの封印点の内2つまで解放済みであり、今まさに3つ目の封印が解放されつつあった。


~元パーティーメンバーの場合~

「きゃあああああ」

 薄暗い空間にリムの悲鳴が響く。

 リムの視線の先には……、筋肉隆々の……、アユム達が居た。

 アユム達。

 1.ボディービルダーも真っ青な筋肉アユム。白い歯が光る男くさい。

 2.細マッチョアユム。長髪で各所にアクセサリーがチャラい。

 3.さわやかアユム。一見人のよさそう。いいにおいがする。

 全員そろってブーメランパンツである。

 重低音強めの音楽が鳴り響き隣との会話すらしずらい空間でリムたちの悲鳴が響く。


「「きゃあああああ」」

 ……。

 何なの?


「2番のアユム~~~~~」

 リムの好みは2番の様だ。


「3番様~~~~~~~~」

 普段は大人しく、叫ぶことなど年に一度もない女タナスが叫ぶ。


「やめなよ2人とも、みっともないよ」

 赤い顔をしたイットことイトリアがソファーから立ち上がっている2人を諫めながら、チラチラとアユムたちを見ている。そしてため息をついていた。イットの好みは0番。元のアユムであった


「……なぁ、何で俺達ここでスタッフしてんの?」

 セルが呟く。


「タナス~~~~~! 俺だって負けないくらいイケメンだぞ~~~~!!!!」

「……あ、サム。カクテルお代わり!」

「……少々お待ちください。お嬢様」

 何かの強制力によってサムは飲み物を作り始める。

 ……君達何してるの?


(つづく)

備考:アユムの元パーティーメンバーたち。

--女性陣--

 イット(イトリア)。16歳。金髪短髪緑の瞳が映える美少年風美少女。現在王都の近衛部隊で騎士見習い中。幼いころからアユムが好きで、こじらした人。むっつりである。

 リム。16歳。赤髪長髪情熱的な赤目。回復魔法使い。『女性としての』イットが好きでたまらない。アユムが邪魔で、しでかした人。現在強制的に聖女教育中。人間の本質は変わっていない様子。

 タナス。16歳。攻撃魔法使い。大人しいく背が低いので幼く見える少女。珍しい黒髪黒目。感情の起伏が少ない。現在、魔法研究所所属。中々友達ができない。※友達が少ないのはサムのせい。


--男性陣--

 サム。16歳。魔法剣士。冷静沈着。茶髪に切れ長のブラウンな瞳。タナスと幼馴染。愛が行き過ぎてタナスのストーカー。黙っていれば才色兼備兼ね備えた御曹司。そう、身分を隠しているが貴族の坊ちゃんである。

 セル。16歳。茶髪。商人見習い。一見チャラいが根が真面目。本性は暑くてうざい系。外見は至って普通。王都に行くと人に簡単に溶け込める。『迷彩?』と隣にいるはずのイットに投げかけられた言葉が胸に刺さっている。現在とあるお姉さまに片思い中。職場が近いので何とかお近づきに……と思っているが、いつも目の前で商売している先輩に心を折られる日々。頑張れ。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

あ、やべ会社遅刻しそう…。

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現在、こちらを更新中! 書籍1・2巻発売中。
アームさん
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