表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

夫の愛情は不要な妻2

 何もない結婚だった。

 誓う儀式もない。婚礼衣装もない。花婿もいなければ、祝う人もいない。リーンリアナの結婚は何もなかった。


 花婿であるアルバートは貴族の子弟が在籍する学校に通う準備で忙しく、その日は過ぎて行った。

 誰も招待する必要もなく、何事もなかったようにその日は終わった。

 それでもリーンリアナは気にしていない。


 本来なら側妃として離宮に入った日が結婚した日となる筈だった。しかし、アルバートが歳下であったために、結婚は一年延びた。

 姉たちやハルスタッド一族の女たちに形ばかりの結婚式を行ってはどうかと聞かれたが、リーンリアナは何も用意せず、アルバートを招くこともなかった。

 離宮の女たちの結婚に立ち会えるのはそこの住人とその侍女、そして住人の夫たちだけ。それも花嫁が希望すればの話で、リーンリアナは希望しなかった。

 いつもと変わらないささやかなお茶会すらその日はなかった。

 リーンリアナはその日に何もしたくないと言い、姉たちや叔母たちはその望みを叶えようとし、あえてお茶会を開かなかったからだ。


 自分の結婚の日が近付いても無関心だったアルバート。それに気付いたリーンリアナは結婚などどうでもよくなった。

 姉との三人だけのお茶会が終わる日すら心待ちにしていた。


 そして、結婚する日になってもアルバートは訪ねてくることはなかった。リーンリアナが離宮に招かなかったとしても、アルバートには結婚する日が伝えられていた筈なのに。

 結婚後にアルバートが離宮に入ったのは、学校に通い始めてからだった。


 離宮にある小さなサロンの一室でリーンリアナと二人きりにされたアルバートの目は、いる筈のもう一人を探して部屋を彷徨う。


「どうかなさいましたか?」


 そう尋ねる黒髪の少女にアルバートは小さく頭を振る。

 妻であるリーンリアナと一緒なのだ。その姉を探していると言えるほどアルバートは厚顔無恥ではない。


「いや、大丈夫だ」

「左様でございますか」


 淡々と答えたリーンリアナにアルバートが話題を振らなければ、その日の会話はそれで終わってしまったことだろう。

 会話が弾まない相手とも話すことを余儀なくされている立場のアルバートは、リーンセーラに会えないからと即座に帰ることもできずにお茶が冷めるまでは話を振り続けた。



 それ以降、何度リーンリアナを訪ねて離宮に赴いても、リーンセーラが同席することはなく、小さなサロンの一室で冷めたリーンリアナと気まずい空気の中、会話するのが続いた時、ある事件が起きた。


 食事に盛られた毒でリーンセーラが倒れたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ