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ニワトリとわたし

皆さまこんにちは。

大変遅くなりましたが、一瞬転生第一話投稿です。





春も懐かしくなってくる頃。


私は高校の玄関で一度目の日常との別れを経験した。




ここまではもう説明したよね?


で、本題は、、というか目下一番の要相談要項というか審議案件は、



いや、今現在絶賛落下中なんだけどどうするよ?



......ってことなんですけど。はい。



_______________________







耳元でごうごうと風が唸り声をあげる。

風ががなり立てる声は時間がたつにつれどんどんと大きくなり、耳が痛いくらいだ。

いつも視界の端にいた自分の髪はその強すぎる風に全て攫われていったようで、額にあたることすらない。


(っ、)


目を開けようと顔面に叩きつけられる風に構うことなく、無理やりに瞼を上げる。

ここ(・・)に落とされた当初は風なんて感じなかった。

謎の不思議(ワンダーランドな)穴から突然抜けたときなんて見渡す限り黒で塗りつぶしたような光の全くない暗闇だったけど、そのあとしばらくしてから眩しい光に目を眩ませて目を開いたときには、広大な草原から漂ってくる草木の香りと、緑に幾重にも線を引いて広がる白い雲ぐらいしかこの世界の風を感じさせるものはなかった。

しかし、その景色が見れたのも一瞬だった。

すぐに今よりずっと弱かったが突風に体を飲み込まれ、私は急速に落下し始めた。

それで、すぐ自分がさっきまでいた暗闇は私の世界で言うところの宇宙に当たるのだと思い至った。

重量があるのか、と思ったところまでは良かったものの、そんな悠長な思考をしている余裕は即座に塵と消えた。

強烈な風が全身に隈なく降り注ぎ、息をつくのも難しく、そのうえ風は時が経つほど、つまりは落下していくほどにその鋭さを増していった。

息ができているのが、切り裂かれたような痛みを感じないことが、不思議で仕方ないほどだった。



耳元で喚く風は未だその強さを徐々に増していた。



_______________________







......いや真面目にどうしよう。


 解決策がまっっっっっっっっっったく浮かばない件について


まあ、とにかく落ち着け私。

まず現状把握をしようじゃないか、私?


はい質問。

『今どこにいるん?』


ほい回答。

『落ちてるゆうとるやないか。空中だろJK。』


あう混乱。


もう一回!


はい質問。

『周りに何見えるゆうとんねん!』


ほい回答。

『そういうことなら早よ言わんかいこのタコ!

、、、、雲に紛れて雄大な自然が見えるぜぇブラザー!!』


Oh, 困惑。


も、もう一回!!


はい質問。

『どないな景色かkwsk!!』


ほい回答。

『オーケー、ブラザー。ギリギリ今なら目視できるぜ!

、、、、真下にヤバげな巻き角頭に刺したクレイジーな鶏が見えるぜブラザー。』


んんんん?!


ほい回答。

『徐々に集まりだしてるなう。』


ひぃい!!


ほい回答。

『もちろん恐らく落下するであろう足元真下だぜJK』


う、嘘ぉお!!?


ほい回答。

『そして当然の如く全部こっち見てるなう。てらシュール。くそワロ。』


つ、詰んだ、、、


このままいけば至るであろう自分の末路を思わず想像して顔を青くする。


ど、どうしよう、、


幾ら混乱する頭を働かせても良い案は浮かばない。

混乱する頭だからということも考えられなくはないが、この現状から察するに、マトモな頭で考えを巡らせてもきっと結論は変わらないのだろうと思った。


絶望的。そう、何をどう考えても自分の未来は血に塗れ、あの奇怪でおぞましい動物の顎で噛み砕かれ啜られ、最期にはただの物言わぬ餌と成り果てるのだ。


逃げ場がない状況に混乱する頭が余計に混乱するのが分かる。


いくらヤツラとの距離が未だ途方もないものとは言え、どう考えてもただの人間でしかない自分にとって、この空中という領域はどうこうしようのない場所だと言える。


ライトな小説で最近よくある転生とかなんちゃら召還とかならまだ、異世界の神様とご対面、からのご褒美だの謝罪だのでチートを授けられちゃったりするかもしれないが、生憎と私はごく普通に異空間に飲まれ、ごく普通に気づいて目を開けたら異世界だった。

はっきり言って、この間に神様なんぞが介入する隙など一切ない。


よって、何度も言うようだが、

私はどうやってもこの絶望的現状を打破する手立てを持ち合わせてはいないのであーる。


、、、、ふざけてみたのは良いけど、これ、一人でやると虚しさヤバイな。おい。


ま、まあ、とにかく。


あとはもう重力に身を任せてただお口あーんしてるヤツラにぱっくりされるのを待つのみである。

、、、、文字にすると余計切ねぇよぅ、、、


あう、、、


ひとり怪物の遥か真上でしょぼんとしていると、あまりの絶望感と異世界という現実味のなさに現実逃避を図ったのか、同じく現実味ゼロな解決策とも言えないような妄想とも言うべき想像をしだす。


ああ、そうか、さっきの異空間的な穴開けて学校に戻れば良いんじゃね?


そう考えれば、ますます現実味が薄れていき、仕舞にはもっと悲しくなった。

今スグおうち帰りたい、、、とか思っちゃったせいか、体がぐんと重くなったような感じがした。

その上、一瞬だけ息ができないような苦しさを覚え、そのせいで頭まで痛くなった。

踏んだり蹴ったりだよ!ちくしょう!


そうこうしているうちに、また脳みそが霞みがかったようにぼんやりしてきて、思考回路はまたしても現実逃避に走る。


そうだ。良い方法がある。魔女宅みたくほうき乗れば良いんじゃね?というかやってみたい。


異世界なんだし、それくらいとんでも仕様があったって良いじゃない!という謎思考のもと、ほうき来ーい!ほうき来ーい!とかぶつぶつ言っていたけど、

なんか伸ばした手がすかっと空を掴んだような肩透かしをくらった感じがして、なにやら良く分からんが釈然としない気持ちだけが残った。

むうん。解せぬ。


、、、あ、異世界といったら勇者召還ー、勇者召還といったら召還ー、召還といったらー、、

あ、コレ名案。

しょうかーーん!炎属性なるナニカ!!

焼き払えー!とか考えていると、文字通り目の前に火花が散った。その上、またしても急に息が苦しくなって、さっきとは比べ物にならない位の鈍痛が脳に走った。


思わず頭を抱えて小さく唸る。


くっっそぉおお!!なんでや!!!!


取りあえず痛みを振り払うべく叫ぶことにする。脳内で。

だってホントに叫んだら下のあれやらそれやらに聞こえちゃうかもしれないでしょ!??!??

それで何かアレなパワーでこっちに突っ込んで来られたら今すぐジ・エンドでしょ!?

そしたらどう責任とってくれんの????うん????


、、、、


、、、せっかく例の巨人とか呼んで某映画の女傑様のマネしようと思ったのに、、、、


ぐすっ、


尚更べっこんべっこんに凹んだわけだが、そのあとも現実逃避に、まるで生まれる前からのライフワークとでも言うようにせっせと勤しみ、やれレリゴーだの、やれビビデー・バビデブーだの、いろいろと厨二、、んっんん!!えーー、ファンシーごっこに身を投じていた。


が、もうそろそろお察しの通り、妄想するたびに頭に鈍い痛みが走り、しかもその度にどんどん痛みが強くなっていく親切仕様!なんてこった!くそったれ!!


というかホントにそろそろ痛みがヤバイ。しかも痛みのせいか呼吸がしにくいせいか、目が霞んできた。

それに合わせて気分は最悪で、頭がぐらぐらしてくる。


私史上ベスト5に入るレベルで最悪のコンディションに、元からアレだったテンションはより悪化の一途をたどっている。


普通に考えてこんな事態で気が滅入るのは当然なのだが、私は今まで言っていたように、メンタル状態が最悪だった。そんな状態で、メンタル管理など正常にできるはずもなく。

結果、自分の状態をはっきりと自覚することなく、ただネガティブに可哀そうな自分に酔って現実逃避する自分自身に落胆する。

で、結局さらに気分は悪くなり、よりネガティブに思考が寄っていく。


悪循環である。



本当に自分がこの領域の支配者であれば良かったのに、



そう、気づけばぽつりと胸の内に零していた。

諦めた諦めたと言ってはいるが、やはり死ぬことは怖かった。

これまで十数年。若い自分を十分に自覚していた私は、目前に迫る死など、感じた事もなければ、想像することもなかった。

まだ時間はあるものだと考えていた。

これまでも、これからも、死など遠い世界のことのように考えて生きてきた。


だが実際、皮肉なことに、

現実に遠いこの異世界という世界に落とし込まれ、眼前に突き付けられた死に心身ともに怯えきっている私がいる。


この足が地につけるものなら、今すぐに裸足だろうが革靴だろうが関係なく全力で駆けて逃げてやる!

と、意気込んでみるも、しかしそれは当然叶わない。

ココは空。

有翼種たちの領域だ。

翼もなく、なんの力もない私では体の向きを変えることさえ難しい。


なんて無力なんだろう。


自分の無力さを痛感したところで、やはり結末は変わらない。どうせ私はあの怪物鶏の餌食だ。

益のない妄想ばかりが膨らんでいくけど、所詮逃避は逃避。虚しいだけの愚行どまりだ。


それでも、、と思う。



ああ、、



もし、もし私が鳥なら、この手がこの空に見合うだけの大きな翼だったなら、、、

もしそうなら、そうだったなら、一体、私は今頃どうしていただろうか。


唐突にそう、疑問が胸に浮かび上がった。

そんな非現実的なことを未だ思い浮かべる自分に、ほとほと呆れながら、しかし、それとは反対に、そんなことは決まっているとばかりに、私は確固として考えていた答えを思い浮かびていた。



鳥のように空を駆け(・・・・・・・・・)】、【鳥のように風を操り(・・・・・・・・・)】、


そして、【鳥のように(・・・・・)自由に逃げる(・・・・・・)



と、そう思うと同時に、自分が鳥になってそれら全てを成し遂げる姿を想像した、


瞬間、


私の制服を、髪を吹き荒し、

顔を、靴を、手足を叩きつけ吹き抜けていた風が、

前よりも急激に鋭く、その強さを増し、私の周囲を駆け始めた。


急な空気の流れの変化であるにも関わらず、不思議と先程の時とは違い息が苦しくなることもなく、むしろさっきまでよりも呼吸が楽になったような感さえある。

その上、風の鋭さや強さは増したものの、その流れは、まるで意思をもっているかのように私の体を撫でるように湾曲し、包み込むように迂回していく。


そこに力強ささえあれど、けして不安を抱くような不穏さはない。


それどころか、頼もしさや安心感を一番に抱かせる。


その風に、訳もなく確信した。



”もう大丈夫だ”



自然と笑みが零れそうになるのを、あと一歩というところで慌てて自重する。

折角の好機となる場面で、自分のうっかりでみすみす死ぬ確率を上げる訳にはいかない。

慎重であることに、過ぎるということはないのだ。

ここは、私史上一番というくらいの慎重さでいかせてもらうところなのである。


うむ!


気合いが入りまするん!


あう、噛んだ。


と、兎に角!

もう命の危機に怖気づいていた私ではないのだよ!怪物鶏めッッ!!


にぃぃっっっ、


と、そんな言葉が似合いの笑みが浮かんでいるであろう自分の顔が想像に難くない。


そんな余裕すら浮かべる自分に一瞬虚を突かれた。ついで、つい数秒前の自分の狼狽ぶりとのあまりの差に思わずカラカラと喉を鳴らす。

想定していた篭った音ではなく、吐息のような空気の擦れるような音だけが鳴ったことにおや、と思ったが、すぐにこの音がヤツラに聞かれてはいないかということの方に気がとられる。


余裕かましたと思ったらすぐこれか!と相も変わらず抜けている自分に内心頭をひっぱたいてやりたい気になったが、そんなことよりも、と慌てて足元遥か下を覗く。


ふぅ、


どうやら下の怪鳥共は耳がウサギ並にヤバイわけではないらしい。

思考がそこに落ちついて、さっそく溜息が零れる。


ある意味色々と荒ぶっていた精神を、よしよし、、と落ち着かせると、初めの頃よりも一段と私に優しくなった風が僅かに緩んだ。

これ幸いと、息を大きく吸う。

酸素が肺から体に行き渡っていくような不思議な爽快感が、脳を駆け巡る。


吸った息を止め、肺に閉じ込める。

それだけで、それまで冷え切っていた心臓が一気に脈打ち、血管に血流がごうごうと流れ込んだ。

まるで自分だけが映画のワンシーンにいるかのように、今までにない程に気分が高揚していく。


ふふ、


私の笑う声が耳元で風のささめきとなって聞こえる。


ああ、なんて可笑しいんだろう。

箸が転んでも笑う頃とはよく言ったものだな、とふと思う。

別にこれまではそんなことはなかったけど、今なら箸を持っただけで笑えそうな気分だ。

なにせ、風の音でさえ面白可笑しく聞こえるんだから。


こんなに気分が良いのはここに来て以来なかったんで、今、干腹筋と表情筋が暴走しそう。


それに、今ならなんだってできそうな気がする。


うん、と心の中で一度一人頷いた。


”やれる”


今なら、、、と思った途端に、さっき私にいやに優しくなった風がその鋭さを再び増していく。

まるで暴走列車のように、ブレーキが焼き切れ、脱線するかしないかのギリギリを無理やり走っているようだ。

私を傷つけるか、傷付けないか。

切り刻まないか、そうでないか。

圧死させるか、させないか。

窒息するまで酸素を奪うか、奪わないか。

その全ての采配が、張り詰めた糸のように均衡をすれすれで保っていた。


すでに幾筋かの赤い線は私を走っていっただろうが、未だ、本当に刻まれた線はないと思う。

だって痛くない。

そりゃあ、強風にある程度まで容赦なく叩きつけられているんだからそういう意味ではかなり顔は痛い。

でも、風そのものが私を傷付けようとしたことはないのだ。

本当に、ギリギリでもってその牙をむいているらしい。


ピリリとした緊張が肌を走っていき、肌の感覚が急に何倍にもなったような気がする。


自分の身が危険の眼前に晒され、否が応でも神経を張り詰めさせられているんだろう。

私の中身が、徐々にむき出しになっていくような感覚。


ヒトの闘争本能が、忘れ去られ檻に鍵をかけられた荒野の獣が、私という理性の皮を破ってむくりと起き上がっていく、背筋がぞくりと蠢くようなこの、感覚。


ぞわり、


自分の背を這い上る高揚感と緊張感が混ぜ合わさった、その時。


キ―――ンッッ、


という耳鳴りが聞こえたと思った時には、

既に私の体は急激な収縮(・・・・・)と共に、怪鳥(バケモノ)を貫いていた。





、、、、、え?



茫然と零したはずの声はやはり聞こえず、風の囁きだけが聞こえていた。


今作は真面目にやろうと思いまして、ある程度のシナリオを作ってからしか書いていかないことにしました。

(ここで、あれ、じゃあ今までは本当に行き当たりばったりだったんかーーい、とかは言わないでくださいね、、、)

ま、まあ、兎に角です。

よって今迄の最高レベルの亀が行進していきます。ご了承ください。

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