プロローグ
はじめまして、
私、秋之条 久米と申します。
現在高校一年生。ピッカピカの若人です。
趣味は読書。そしてギリギリ脱ぼっちを成しとげた、コミュ障である。
そんな私ですが、最近、というか昔からなのですが、、
最近は特に、やたらめったら物を落とす傾向にあります。
授業中にカッシャーンッだのカラーンッだのどっさぁあっっ!!だの音がしたら基本的に私である。
まぁ、そんな感じに授業中に落し物をしたり、歩きながら携帯出したらテッシュにイヤホンにレシートに筆箱にと、次から次へとヘンゼルとグレーテルよろしく落としていったり、生徒会便りを抱えて全校集会に参加していれば紙が何回も何処ぞへと床を滑って消えていったり、、、、
と、まぁ、こんな感じのことが起こるわけだ。
何 回 も
まあ、生まれてこの方十数年。何事も続いていれば慣れていくものです、、、、
が、流石に最近はその頻度が高すぎるんですねー、はい。
一つの授業が終わるまでに必ず三回以上はシャーペンとか消しゴムとか落とすし。
その他、机に積み上げたノートとか参考書やらを一度は必ず落とす。
そして何故か消しカスを寄せようとした手は高確率で傍の筆入れにクリーンヒット。
そして雪崩落ちる筆記用具。
振り返る先生。
もはや振り向きもしない隣人。
そして視線を逸らす私。
ここまで一連の流れはここ数瞬間となってはすでに定型と化している。
そろそろ先生すら確認に振り返ることを止めるのではないかと、近頃は危機感を覚えている今日この頃である。
さて、、、
というわけで友人だけでなくかかわりの薄い教師陣にすらダメな子扱いで見捨てられそうになってしまっている昨今、わたくし秋之条 久米、早急な事態の対処が必要急務だと考えております。
一応言っておきますが、この久米、けっして出来ない子ではないのです。
ただちょっとうっかりなだけで。
そう。私はうっかりしているだけです。
別に集中力がないとか飽き性とかぼーっとしているとかではありませんよ。はい。
、、、、ホントですもん。
兎に角!そろそろ限界です。
これ以上の面目丸つぶれはご勘弁願いたい所存です。
そう、これ以上は海より広いこの私の矜持が許さないのですよ、ええ。
あっ、そこ。
この間の購買戦争で幻の『おろし味噌しょうが苺レアチーズサンド』を争って敗れたから、隣のクラスの勝者にここ一週間さりげない嫌がらせしてるとか言わないで!!
いいじゃん!靴箱の上靴の左右を毎回入れかえてるくらいだから!菊の柄のポストカード朝机に乗せてるくらいだから!それも上靴に関しては三日目くらいから、最初から左右入れ替えていれらてむしろ私が正しく並べ替えてたりしちゃったから!ポストカードも一昨日からタンポポのポストカードにコメント付きで返信されたりしてるから!何でタンポポ?って菊のポストカードで更に返信したら、タンポポポストカードで『だって似てない?同じキク科だし』って返されたし!!
そのやり取りを見て、私の嫌がらせを汚物を見る目で見てきて『止めて!汚物を見るような目で見ないで!』って言ったら『違うよ、せっせと餌を巣に運ぶアリを見ている目で見てるの』って返した友達には、『仲良しか』『その隣のクラスの勝者 っ ょ ぃ 』『あれ?アンタ特定されてんじゃね?』って言われました。はい。
友達の最後の言葉でちょっとぞっとしました。はい。
正直もう止めようかなって思ったけど、初志貫徹って大事だなって思ったんでそのまま継続中です!
けど友達には『バカだ、バカがいる。』『その勝者に相手がかなりのバカだって教えてあげた方がいいんじゃ、、、』『やっぱ止めとこ、その方が面白いし』とかなんとか言われました。
なんでだろ。
わかんね、昔っからちょっと良く分かんない難しいこと言う子だったからなぁー。
うん。気にしないでいいよね!
まあ、そういうわけで、目下原因究明中です。
現在数学の時間も、さっき落としたばかりのシャーペンを観察しながら、落とす直前のことを思い返しながら、エア一人実況見分中。
ココ数日観察考察してるけど、特にこれと言った私の癖とか誰かの細工とかは見当たらない。
ここまで露骨に私の持ち物が落ちていれば、流石に何かしらの原因とかきっかけとかはあると思ったんだけどなぁ。
変なの。
原因究明にはまだしばらくかかりそうですが、今後も観察考察検証などは続けていく所存ですよ。
だってちょっと気持ち悪いしね。
ちょっと見分に頭が授業から離れたけど、そろそろ頭を授業に戻してノートに書き込んでいく。
流石のわたしも授業はちゃんと聞かないと演習問題が呪文だからね!
あー、にしても最近の数学は真面目に聞いてても教科書と先生が呪文しか言わない。
分かんなすぎて頭痛くなりそう。ただでさえこのところ例の現象で具合が良くないっていうのに。
「うぁ、」
ほら、眩暈と頭痛が。あいたたたた、、、
黒板が渦巻いて見えて、思わず下を向く。
ちょっといつもよりも長い眩暈とそれに伴う頭痛に、思わず目を瞑って耐える。
カランっ
「あ、」
閉じていた視界を慌てて開けると、軽い音と共に手元にあったペンが机の向こう側へと消えていくのが映った。
カンッッ!
椅子を音がたたないようにそっと引いて、さっと床を覘けば、机の脚にぶち当たって誰かの椅子の下を通っていくペンが見えた。
あっちゃぁーー、と内心頭を抱えつつも、あのペンどうしよう、という考えが頭を占拠する。
いや、だってあのペンあきらかに私のどうにかできる範囲外にいるでしょ?!
どうしろと。
脳内で悪態を吐きつつ、そういえば、と噂の現象がさっそくまた起こったなと思い至る。
おお、忘れてた。
さっそくやらねばな。実況見分!
さて、、今回もなにも見当たらないかなー。
ううん、、、、今回は落とす直前までそこそこの頭痛と眩暈があったけど、、前回まではそんなのなかったしなぁ。
やっぱ関係ないかな。
普段から眩暈とかはあるし、確かにいつもより強めだったけど関係性がどこにもないよね。うん。
結論!恐らく『久米落とし物猛頻発現象』には関係ないと見た!
あっ、でもそういえば、今日の眩暈は歪んで見えた黒板の渦の中心が紫色っぽかったなー。
他のグラデーションがかかってるっぽい感じの。
どこぞの青狸ロボの異空間?じゃなくて時空間っぽかった。
、、、、
あれ?
私ヤバめ?
、、、、眼科いこうかな、、
がたがたがたっ
そうこう私が黄昏ている間にも授業はとんとん進んでいたらしい。周りのクラスメイトが続々と立ち上がっていく音に、はっとして慌てて倣って立ち上がる。
適当に全員で一礼して、再び座っていく。
教師がいなくなり、教室は一気ににぎやかになる。
いつも思うけど、クラスメイト含め学生たちのこの手の様子には関心するよ。
切り替え半端ない。私?無理無理。
私は結構引きずる女なのだよ。ふん。
ああああ!まって!嫌がらせのことで大体分かってるとか言わないで!!つらい!久米子泣いちゃう!!
あう、そ、そう言わないで!これでも久米子はガラスのハートがチャームポイントと称しているんです!
なのにそんな、キャラ違うだろきめぇ、とか言われたら粉砕しちゃいますよう!
、、、あ、ごめんなさい調子に乗りました。反省してますだからもういじらないでください!
、、、、
ま、まあ、とにかく?
これまでのことも色々加味して今日まで調査してみているわけだけども。
やっぱりさっぱり現象の解明ができませんね!
進まないじゃない!できないんですよ!これが!あっはっはーー!
、、、まずい。
これはちょっと結構マズイ事態ですよ諸君!
予定ではさくっと現象解明済ませてさっさとみんなのダメな子イメージを払拭する手筈だったのに!
これではいつになったら名誉挽回にイメージ商戦快勝が成し遂げられるか分からんではないかぁあーー!!
いかん。
これは誠に解せぬ事態でありまするん!
あっ、噛んだ。
ま、それは置いておくとして、
これからどうしようかな。こっから先は『久米落とし物猛頻発現象』の原因の端っこなりなんなりでも掴んでからじゃないと進められないんだよねー。
まさか本当に何一つも見当たるものがないとは想定外だわ。うん。
どないしょ?
うーーん。
手掛かりになりそうな所としてはやっぱり今のところ、数学の時の眩暈と頭痛だとは思うんだけど。
あのあと偶然か知らないけどぱったり物を落とさなくなったから、現状では確かめようがないんだよねー。
ま、ここは気長にまた物落とすまで待ってその前後の自分の体調に気を配るくらいしっかできないかな。
それまでは空いた時間に適当に思いつくこと考えてみるかな。
あーー、想像するだけで暇そー。なにそれ眠たい。寝そー。
、、、、
なにを言っているかわからないと思うが、私も同じく何を言っているのか分からない。
それどころか、もっと底知れない恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ、、、
、、、いやね?
今何時だと思う?
ん?さっきまではなんじだったかって?
ああ、そっか。ではではそこから説明しようではないですか!
もうやけくそでい!一から十まできっちりきりきり説明してやんよ!
あ、そうそう、まずは私が覚えてる事が起こる前、つまり直前のことについて説明するよ。
そう、知っての通り、数学で落とし物をした後、次に物を落とすまでは適当に原因について思いついた端から考えていたんだよね。
そこでさ、なにそれ眠たい。寝そー。くそワロー。とかなんとか言ってたでしょ?
あの後、結局放課後まで珍しいことに何も落とさなくてね?結果その授業全部終わって荷物持つまで暇さえあればひたすら例の現象について考えてたわけ。
そんで、あー、何も起こらんし何この手詰まり感ー、とか思ってた。
はっきり言おう。
そ ん な こ と
思 っ て た 時 期 が
私 に も あ り ま し た 。
文字通り口尖らせながら生徒玄関までいったよね。うん。
それで靴履いて玄関の扉開けたよね。グラウンドから『アイーーン?!』『『つばぁーーい!』』『ワサビドラーーイ?!』『『生ぁああーー!!』』って野球部の掛け声聞こえてきて『おおう野球部相変わらず不思議ちゃんなやつらだなぁはっはっはー』とか思いながら遊び心で『あなたも私もーー?!』って叫んで『『ファイヤー―!!!』』って耳元で聞こえて『なんでやねん』とか思って扉くぐったよね。
で、落ちたよね。異世界に。うん。
うん?
とか思っちゃいけない。
だって聞かれたって私にも分からんもん。でへへ。
えっ?気持ち悪いって?そんなこと言わないでよう!ほら、私のハートはガラスのは・ぁ・と!
あっ、ごめんなさいもうしませんって。だからそんなに淡々と、だからこのバカは、口を開けばおバカなことしか言わない、付ける薬?そんなものあったらここまでバカが成長しないから、とか言わないでください。うう、、
ぐすっ、
と、とにかくですね、、
そんなこんなで気づいたら紫が眩しい例の狸ロボ馴染み深い時空間っぽい異空間を落ちていまして。
最初は思わず足元の染みみたいなのが瞬く内に大穴にまで成長していることに気がとられて、下しか見てなかったから落ちているなんて気が付かなかった。
でも、
え、これ何かキモイ。取りあえず中に戻ろうかなって後ろ見たら、
背後も足元同じく異空間になってました。
もうパニックだよね。
慌てて四方を見まわして、やっと頭上を確認したら遥か頭上に唯一の光が見えて、それがぐんぐん遠ざかって言ったのを見て、その光が私のいた場所だって思い至ったのと、そうか、私はこれに落ちていってるのかって思ったのは、同時だった。