...flat.
講義という形を使って、ちょっと小説内の世界設定の説明です。
最初の数字とかの羅列はあまり気になくても大丈夫です。
17/Aug/2059/10:80/from www crock
1st low
In world BI school
At BMI history class
少し埃が舞い光の筋が浮かび上がる誰も座っているようには見えないがらんとした白い大理石調の講堂。その壁にかかる前時代的な黒板を背景に、一人話をする男性。その風貌は、あまり手入れされていないであろうゆるくウェーブした髪に、少し白いものが交じり始めたゆたかなひげをたたえ、そして少し目が悪いのだろう最近はあまり見なくなったハーフカットタイプの老眼鏡をかけ、何かこだわりがあるのか煙管を片手に紫煙をくゆらせている。
そしてその口髭に覆われた口からこぼれる少しかすれたかすれた声は、確かな質感を持って空気の中を振動として伝わっていく。
『……世界は、石油の枯渇が人にとって現実味を帯びて2017年に起きた第三次世界大戦をへ。戦争自体が最も石油を消費する愚かな行為だとして、世界中の世論が一致し22年続いた世界大戦が終結してからちょうど20年。今回の戦争は、三十年前に軍事導入されたBMI(Brain Machene Interface)システムによって戦争の後半は人的な被害は小さかったとされている。今まで以上のペースで広がった戦火を鑑みれば、の話であるけども。
そもそもBMIシステムとは、21世紀に入って飛躍的に上昇した情報通信速度と情報処理能力にものを言わせて、脳と機械の間で直接情報のやり取りを行おうとした夢物語が始まりである。最初は、脳のアルゴリズムも思考の生じ方も予測は立てられるものの非効率な方法をとっていたために人体に多大な負荷をかけてしまっていたが、戦争が終結したことによる情報公開によって多数の民間企業果てはインディ(一般の人)がアルゴリズムの解明に参入し、今からおよそ15年前一人のインディが革命的な方法によってBMIシステムによる脳への負荷を軽減とシンクロ率の飛躍的な上昇をもたらしたとされている。
ここで引っかかる言い方をしたのには、もちろんわけがある。そのインディは、そのシステムを独自のシステム言語で、かつ一方的に既存のシステム言語にリンクできる形でそのアルゴリズム解読システムを作り上げた。しかも、システム自体は97.2%がブラックボックスのままなのである、それも公開されてから15年たったいまでさえ。
これには、複数の理由がある。一つには、先ほどあげたように既存の言語体系とは大幅に異なるシステム言語をしていたため文字化けが激しく、文字の把握をすることすら難しいことにある。また、アプリで体系的にリーディングしようとするとリンクの強制終了とともに逆ハッキングそしてさらにはパソコンのシステム自体を乗っ取りシステムを書き換えさらには取り込みまでされてしまうという、トラップが仕掛けられていたこと、そして何より最も大きな壁であるのが、言葉のマルチミーニング(一つの文・単語において並列して意味を複数持たされていること)がひとつ、ふたつのレベルではなく数十数百のレベルで行われているらしいからである。そうまるで、生物の遺伝情報をマルチミーニングしているDNAのように、ね。しかも、有機的に変化しているのだから理解・解読以前に全体像の把握すらできていないのである。それでも、97.2%という数字がわかるのは他ならない開発者が公開した情報とそれの占める割合を発表したからに他ならない。
つまり、私たちは私たちの力だけでは、いまだにこのアルゴリズムの解読の道を一歩も進めていないのです。
いま、こうして実際に授業をこのクラスの中でして、ほぼすべての生活を実際にBMIシステムの中でしているにもかかわらず、ね。
余談だが、いま、私がこの授業ではなしている言語はフランス語なんだが君たちには、英語か、イタリア語か、日本語か、どの言語かはわからないが君たちがgrand lowで普段使っている言語に何の違和感もなく聞こえているはずだ。これはBMIシステムを応用したもので、BVL(blain vector langage)システムと呼ばれていて、言葉に脳内にあるニュアンスを付け足すことによって、正確に翻訳ができるようになっている。これは、かのインディが自分専用に既存のシステム言語で作った翻訳システムを転用し可逆的にできるようにしたもので、任意でオンとオフができるが、これだけのことをするのに世界のトップの連合チーム21人態勢で6年もかかってしまったことからも、この翻訳システムをゼロから一人で作り上げたこのインディのすごさがわかるだろう。
さて、ここまであえてこのインディの名前を伏せてきたが、彼の、いや彼女かもしれないがハンドルネームを知っている人はいるかね?
ふむ、このシステムにはまだ慣れないんだが、そこの…灰色のパーカーを着た、国籍が…日本人の男の子、大山 実くん、いってみたまえ。』
講師が少し焦点の合わない目をした後に誰もいないはずの席を指し示し名前を呼んだかと思うと、次の瞬間には灰色のパーカーを着て少しけだるそうに左手を上げている青年が、そこにはいた。
そして、それが何でもないことであるかのように、青年、大山実は回答を述べた。
――――――――― reBorn.I.Machina
と。