第二章 【神聖帝国】3.潜入 パート2
ルシアスの言葉に動揺し、悩むエリシア・・・
そんなエリシアの現状を知らない二人は、エリシアにあう手立てを探っていた。
エリシアの居場所はすぐに分かった。
それは、聞き込みをするまでもなかった。
―エリシア姫は女神の神殿におられるそうだ―
―やはり女神様の生まれ変わりに違いない―
―一目でも、お会いしたいものだ―
行きかう人々の口から聞こえてくるのは、ほとんどがエリシアに関する話題だった。
『こんな簡単に見つかるなんてな。』
フィンは口笛を吹きながら頭の後ろで腕を組み、エリシアが居ると噂の神殿を見上げた。
『街はその噂で溢れかえっていますし、貴族を乗せていると思われる馬車が往来を繰り返しているところを見ると、エリシアさんがこちらに居るのは間違いないでしょう。』
ノクスもフードを外し、神殿を見上げる。
『しかし、ここは壁だらけで中が全く見えないんだよな・・・エリシアにどうやって会えばいいんだ?』
二人は神殿の周囲を一周してみたが、簡単に入れそうな場所は見つけられなかった。
『予想はしていましたが、ここまでとは・・・神殿というより要塞といった方がしっくりくる感じですね。ダラの神殿とは大きな違いです。さすがは戦いの神を祀る神殿といったところでしょうか。』
ノクスは顎に手を当て、感心したように呟く。
『関心してる場合かよ・・・。入れそうなところは幾つかあったけど、だいたい人が居るんだよな。人さえ何とかなれば、入れそうだったんだけどなぁ。』
フィンが頭を捻って考えている・・・と、その時だった。。
『君たちも、エリシア姫に会いに来たのかい?』
後ろから声を掛けられ二人は振り返った。
そこには、街の住民らしき男が立っていた。
なんの特徴もない、中肉中背のどこにでもいそうな男だった
『はい、私共もエリシア姫を一目でも見たく、こうして神殿の周りを歩いていた次第なのです。』
ノクスが答えると、街の住民らしき男はニコリと微笑む。
『エリシア姫は、とてもお美しい方なので、その気持ちはよくわかります。間近で一目でも見たら、あのお美しいお姿が瞼の裏に焼き付き離れなくなることでしょう。』
そう言って瞼を閉じ、頬を紅潮させ天を仰ぐ男。
―なんか気持ち悪い―
と感じると同時に、ある思いが二人の頭に浮かんだ。
―エリシアを間近で見たことがある⁉―
『どこで会えるんだ?教えてくれよ!金なら払うからさ。』
そう言うと、銀貨の入った袋をジャラジャラと鳴らす。
『フィンさん!いやらしいですよ!連れの者がすいません。でも・・・エリシア姫にはどうやったら、お会いできるのでしょう?教えていただけないでしょうか?』
ノクスは袋を持ったフィンの腕を、自分の両手で抑えながら男に遠慮気味に問う。
『私は神殿内の掃除の仕事を担当しているので、神殿には出入りできるのですが、昨日、神殿に伺ったところ掃除をしている私に、なんとエリシア姫が声をかけてくださったのです。
―掃除御苦労―
一言だけだったのですが、心に沁み込んでくるような優しいお言葉でした。』
―エリシアらしい言葉遣いだ―
半信半疑だった事が、確信に変わった瞬間だった。
『次はいつ神殿に入られるのですか?私共も御一緒させてもらう事はできないでしょうか?』
男は少し考え、口を開いた。
『次は、今日の夕方に入る予定だから、こっそり入れてあげる事もできなくはないんだけど・・・タダでって訳にはなぁ・・・。』
チラチラこちらを見てくる男にノクスが言う。
『報酬は何ですか?先ほどの反応からお金ではなさそうですし・・・なんでも言ってください。できる事ならいたします。』
その言葉に待ってましたと、一通の手紙を差し出す男。
『これを街外れの屋敷の女性に、昼までに渡してきてほしい・・・ラブレターだ。中身は見ないように!で、渡したら返事を書いて貰って私に渡してほしい。それが報酬代わりということで。』
恥ずかしそうに手紙を渡してくる男に、フィンが首を傾げながら口を開く。
『ダメだったらどうするんだ?・・・ダメな気がするけど・・・。』
後半はゴニョゴニョと聞き取れない。
『ダメでもいいのさ。あの娘が書いた手紙ってだけで。』
そんな事を言いながら、目を閉じ頬を紅潮させる男に、二人は顔を見合わせ同時に同じ感想を抱いた。
―やっぱり気持ち悪い―
二人はラブレターを渡すことができるのか?男の恋は実るのか?
第二章 三話 潜入 パート3に続く。




