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第二章 【神聖帝国】2.意思無き帰還 パート4

突然の王都からの迎えに警戒する三人、果たして罠か?それとも・・・


馬車は王都に向かっていた。

ゆっくりと、しかし確実に・・・。

馬車の周りを騎兵がずらりと取り囲み、外から見ても、それが高貴な者の馬車であることは疑いようもなかった。

―もう半日もすれば王都か―

馬車の小窓を少し開け、外の景色を眺めながら、エリシアは、あの街で起きた事を思い返していた・・・


―姉上からの迎え?―

震える手で剣を握り込み、エリシアが老人に問いかける。


『私を迎えに来たと?どうやって私の居場所を知ったのだ?』


老人は感情を見せぬまま、淡々と答える。


『貴方様が手放された、グレイス様からの贈り物の指輪からでございます。貴方様の足取りが途絶えたと知らせを受け、グレイス様は直ちに貴方様の探索をお命じになられました。』


―探索?殺害の間違いでは?―

エリシアの胸の奥に、ドス黒い感情が込み上げる。

そんなエリシアに、フィンが小声で囁く。


『エリシア!囲まれてるぞ・・・物陰に三人・・・いや、四人か?』


その言葉を聞くや、エリシアは鋭い目つきで老人を睨みつける。


『その、物陰に隠れている者たちはなんだ?私を迎えに来たにしては、えらく物騒だな。』


その言葉に、老人の眉がピクリと動く。


『いやはや、参りましたな・・・これらは【護衛】の者たちです。武装を解いて出てきなさい。』


老人がそう告げると、物陰から音もなく影が現れる。

全員が黒い布に全身を包んだ者たち・・・数は七人。

―七人もいたのか⁉気配を読み切れなかった―

フィンは、自らの読み違いと、影たちの動きの無駄の無さに、動揺を隠しきれずにいた。


『この者たちの気配を感じ取るとは・・・なかなか良い手駒をお持ちだ。しかし、まだ若い・・・読み違えに動揺し隙だらけですぞ?』


老人の言葉に、エリシアは何かを悟ったように剣から手を放し、両手を上げて前に出た。


『わかった。一緒に行こう。この者たちは金を払って雇った者たちだ。何も知らん。だから手を出さないと約束してくれ。』


老人は軽く頷くと、路地の奥に待たせていた馬車へとエリシアを促す。


『おい⁉』

『エリシアさん⁉』


驚く二人の方に振り向き、エリシアは静かに言った。


『今までありがとう。厳しい旅だったが楽しかったぞ。フィン、報酬は払えなくなってしまったな。だからこれを受け取ってくれ。』


そう言うと、左手から腕輪を外し、フィンにそっと手渡す。


『ノクス、短い間だったが、色々助けられた。話を聞いてくれてありがとう。王都へはいつか来てくれ、良いところだぞ。』


そう言ってニコリと微笑む。


『では行こうか!』


振り向きざまに見せたエリシアの横顔は、二人が幾度となく目にしてきた、覚悟を決めた時の顔だった。



取り残された二人は、どうする事も出来ず、ただ立ち尽くしていた・・・。

ノクスの手には、去り際に老人が手渡してきた、銀貨の入った袋。

―何もできなかった―

動く事も、声を出す事も・・・自分たちの無力さに打ちひしがれる。


『何だってんだ、ちくしょう・・・。』


誰に言うでもなく、フィンが呟く。

その表情からは、悔しさと、苛立ちがにじんでいた。


『行ってしまわれた・・・。』


ノクスは呆然と、エリシアが乗り込んだ馬車のあった場所を見つめている。


『渡されても、困るんだよ!どこで、どうやって換金するんだよ・・・こんな物!』


エリシアから渡された、帝国王家の紋章が大きく刻まれた腕輪を、地面に叩き付けようと腕を振り上げた・・・が、できずに力なく腕を降ろした。


『エリシアさんは、この後どうなるのでしょうか?それに、あの人たちは・・・王都からの迎えと言っていましたが。』


―グレイス様が王都でお待ちです―

老人は確かにそう言った。

殺そうと思えば、いつでもできたはずだ・・・なのに殺さなかった。

街中だったから?いや・・・そもそも、あの影たちからは、肌がピリピリするような嫌な感じはしなかった。


『本当に、迎えに来ただけなのかもな・・・。』


フィンがボソリと呟くと、ノクスが顎に手を当て、少し考え込んだ後、口を開いた。


『では、確かめに王都へ行きませんか?』


突拍子もないノクスの提案に、フィンは目を丸くする。


『私はエリシアさんに【いつか王都へ来てくれ】と言われました。今が、その時だと思うんです。ですから、一緒に行きましょう!フィンさん!』


ノクスの言葉に、フィンは少し頭を掻きながら答える。


『確かに、俺もまだアイツから、報酬をもらってないからな。こんな腕輪もらっても換金できなきゃ、ただのガラクタだ。王都に行ってエリシアに、このガラクタを叩き返してやるとするか。』


二人は前を向き、進む道を選んだ。

その目には、もう迷いはなく、見据えるのは帝国王都のみ。

しかし・・・この直後、二人は重要なことに気づくことになる。

―ところで・・・王都ってどうやって行けばいいんだ?―


覚悟の帰還を選んだエリシア・・・それを追う二人。

果たして王都では何が待ち受けているのか?

二人は王都にたどり着けるのか?

第二章 【神聖帝国】2.意思無き帰還 完



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