第二章 【神聖帝国】2.意思無き帰還 パート3
エリシアの立ち位置を知ったノクス・・・なぜエリシアは王都に帰るのか?三人は王都にたどり着けるのか?
どうやら、エリシアは政争に巻き込まれ、命を狙われているようだ。
しかも、実の姉に・・・
『エリシアさんは、王都に帰り、どうなさるおつもりですか?王都に帰れば、さらに命を狙われる機会も増えるでしょうに・・・。』
ノクスの心配そうな顔をみて、少し微笑むエリシア。
『心配してくれるのだな。ありがとう。まぁ・・・帰っても帰らなくても、どちらにせよ命は狙われるさ。私が生存している事はバレているようだしな。ならば、王都に帰り高らかに宣言してやるのだ。【私は生きているぞ!】とな。』
力のこもったエリシアの言葉に、ノクスは改めて思う。
―やはり、この方は強い―
民衆が、リン神の再来と噂するほどの【何か】を持っている。
『でも、お一人では・・・頼れるような方は誰かいるのですか?』
いまだに心配そうなノクスに、エリシアはニコリと微笑む。
『心配無用だ。王都に帰ったら、まずはルシアス兄さまを頼る。兄さまなら力になってくれるはずだ。』
―ルシアスー
次期、神聖帝国国王の呼び声高いエリシアの兄。
『エリシアさんは、兄上の事を信頼なさってるのですね。どのようなお方なのですか?』
ノクスの質問に、得意げな表情になり、語りだすエリシア。
『兄さまは、とにかく凄いのだ!頭はキレるし、剣の腕前は一流!戦に出れば、まるで戦場の全てが視えているかのような采配で、連戦連勝の負け知らず。
しかも、優しくて、民の信頼も厚い!まさに、【国王になるべくして生まれてきた】と言っても過言ではないだろう。
そして、兄さまは私の目標でもある。兄さまに倣って私も軍に入隊したのだからな。入隊した時に頂いた、この腕輪は何があっても手放さんと決めているくらいだ。』
左手に着けた腕輪を見せながら、熱弁するエリシアに圧倒されるノクス。
―すごい熱量だ―
それは、信頼を通り越して【崇拝】に近いものを感じる。
ふいに、暗闇から声がする。
『アンタら、命狙われてるのわかってる?声がデカい。呑気かよ・・・まったく。』
いつの間にか、横になっていたフィンが、座って二人を見ていた。
慌てて口を覆うエリシア。
『おせーよ。』
『スマン・・・。』
『スイマセン・・・。』
呆れ声のフィンに、しょげながら謝る二人。
そんな二人を見て、笑いながらフィンが言う。
『こんだけ騒いでて、襲われないって事は、逆に言えば、近くに敵はいないって事だな。』
フィンの言葉にホッとする二人。
『いつから起きていたんだ?私の話はどこから聞いていた?』
『ほとんど、最初からかな・・・アンタも大変だなぁ。で、そのルシアスって人が報酬をくれるって事だよな?時期国王なんだろ?報酬は期待できそうだな。』
―感想はそれだけか⁉―
良くも悪くも、フィンらしい答えに、心の中でツッコむエリシア。
フィンにとって政争など興味はないのだろう・・・。
エリシアは、そんなフィンに羨ましいと感じる事がある。
―もし、王家に生まれていなければ―
姉に疎まれ、命を狙われる事もなく、好きなところに行き、自由に暮らせていたのかも・・・と。
でも、それは叶わぬ事だ。
少し視線を落として、まだ短い自分の半生を振り返る。
そんな叶わぬ想いを、夜の暗闇が隠すように寄り添っていた。
◇
襲撃から二日・・・不気味なほどに何もなく、大きな街にたどり着いた。
『俺の案内できるのはここまでだ。ここからはエリシア、アンタの案内で王都を目指す事になるけど大丈夫か?』
フィンの問いに答えるエリシア。
『この街は来たことがある。ここからなら、王都へ案内できるだろう。フィン、ここまで道案内ご苦労!後は私に任せろ!』
エヘン!と胸を張るエリシアに、少し不安を覚える二人・・・
『これからどうしますか?まだ刺客に襲われる心配もありますし・・・王都へはどれくらいかかりそうなのですか?』
『ここからなら二日もあれば王都へはたどり着けるだろう、馬があれば一日といったところか。』
―馬? 路銀も無いような状態で馬?突拍子もない事を―
二人が、不安が的中したという顔になる・・・やはり、エリシアは浮世離れした発想の持ち主なのか?不安が募る。
『馬って・・・どうやって手に入れるんだ?いくらかかるか解ってるよな?』
フィンの問いに、一瞬【ニヤリ】として答えるエリシア。
『ここの街の領主は、ルシアス兄さまの古い友人でな。尋ねればきっと力になってくれるだろう。そこで、ルシアス兄さまへ文を書き、王都へ帰還することを知らせる。馬は領主に頼み貸してもらうつもりだ。』
よかった・・・話を聞いて安心する二人。
その安心した表情に、少し怒りながらエリシアが口を開いた。
『まさか、
―突拍子もない事を言い出した―
とか思ってないだろうな?私とて馬を買う金がない事ぐらいわかっている!』
【プンスカ】怒りながら、街の外れに見える、大きな屋敷に向かって歩き出すエリシア・・・その時だった。
辺りに人影がない事に気が付く。
大きな街、人ごみ、油断・・・気づくのが遅れた。
気配で、周りをグルリと囲まれている事がわかる。
―こんな大きな街で襲撃?―
とっさに武器を構え警戒する三人の前に、初老の老人が歩み寄ってくる。
キチンとした身なりの老人はこう告げる。
『エリシア様、グレイス様からの命を受け、お迎えに上がりました。王都で姉上様がお待ちです。』
突然の迎えに、戸惑うエリシア・・・果たして【グレイス】の真意とは?
パート4に続く




