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第二章 【神聖帝国】2.意思無き帰還 パート1

二章 2話 

崖を超えた三人は森の民達と別れ神聖帝国 王都をめざし歩き始めます。

何が起こるのか・・・

2. 意思無き帰還


無事【試練の崖】を登り切った一行だったが、まだ油断はできなかった。

崖を超えた辺りの森には、狼の群れが出るからだ。

しかし、今日に限っては狼どころか獣の気配を不思議と感じない・・・

フィンが呟く。


『なんか変だな・・・獣の気配を感じない。』


その呟きを聞き取ったエリシアが駆け寄ってきた。

そして、フィンの表情を見て不思議そうな顔で問う。


『違和感があるのか?私は何も感じんが・・・しかし、お前の表情からは緊張の色は読み取れんが?』


その問いにフィンは少し困った顔で答える。


『違和感はある。ただ・・・嫌な感じはしない。問題ないと思う。』


そう答えたフィンの脳裏に、あの大山羊の姿が何故かチラつく・・・

―崖の守護者、神の使い―

今思えば違和感は最初からあった。崖を登り始めてから、あの大山羊しか人間以外の生き物を見ていない。


『問題ないか・・・よし!お前の勘を信じよう。』


どうやらエリシアのフィンに対する信頼は、かなり上がっているようだ。


その後、一行は何事もなく森を抜け、開けた街道に出た。

その頃には、東の空がわずかに白み始めていた。

街道には朝もやが立ちこめ、遠くの景色はまだ見えない。


『ここでお別れだ。俺たちはここから北に向かう。色々世話になった。』


森の民の男がそう言うと家族とともに深々と礼をする。


『ありがとう。アンタたちには助けられた。アンタたちがいなければ崖は超えられなかった。』


独り身の男は、南に向かうようだ。


『いや、こちらこそ世話になったな。ありがとう。』

『お気をつけて、旅の安全を祈っております。』

『荷物持ちご苦労さん!また何処かで会ったらよろしくな。』


挨拶を交わし終えると、それぞれの旅路に歩みを進める。



最初の街に着いたのは昼過ぎだったか・・・。

慣れない崖登り。

崖での大山羊との戦闘。

狼を警戒しながら夜通しの行軍。

三人の体力は、とうに限界を超えていた。


運がいい事に、この街には宿屋があり、そこで3人は宿をとることにした。

宿代は、森の民の家族から渡された金を利用することにした。

【金銭のやり取りは無し】の条件だったはずだが、言い出しっぺから半ば無理やり【命の恩人】と渡されたのだから、ルール違反には当たらないだろう。

三人は宿の部屋に入るなり、各々違う形で横になり眠った。


フィンが目覚めたのは深夜だったろうか。

起きるなり何か違和感を感じる・・・肌がピリピリする感覚・・・嫌な感じだ。

それとなく気配を探るが、気配は感じなかった。

―気のせいか・・・―

そう思いながらも寝ている二人を起こす。


『おい!二人とも起きてくれ。何かおかしい、嫌な予感がする。』


その言葉に飛び起きる二人。

エリシアが立ち上がりフィンの元へ駆け寄ろうとした瞬間だった。

フィンの顔が驚きに変わるのが見えた・・・

―何だ?―

そう思うより早くフィンが叫ぶ。


『エリシアしゃがめ!』


言葉が耳に入り、エリシアがしゃがんだと同時に、今までエリシアの上半身があった場所に鋭い風切り音がする。


『そのまま窓に向かって走れ!』


その言葉に迷いなく窓に向かって走り出すエリシア。

走り出した直後、ノクスが魔術を使おうと、両手を床にかざすのが横目に見えた。


『足止めします!その隙に!』


黒い靄が床を這い、部屋の奥に潜む気配へと絡みつく。

木製の窓を破って外に飛び出すエリシア。

フィン、ノクスがそれに続く。

窓から飛び出す瞬間に横目に見えたのは、全身に黒い布をまとった影。

―何の気配もなかった。あの一瞬、視線を向けていなければ―

背中に冷たいものが走り、フィンは身震いをした。



三人は、フィンの誘導で近くの森に身を隠すことにした。

森はフィンの領分だった。

ここでは、どれほど腕の立つ者でも完全に気配を消すことはできない。

落ち葉、草、水音――森そのものが侵入者を暴くからだ。


『何だったんだ・・・アレ。』


森に入り落ち着いたのか、フィンが呟いた。


『刺客・・・だろうな。狙われたのは私だ。』


エリシアは息を乱しながらフィンの呟きに答える。

エリシアが答えた直後だった。

―ドサッ!―

突然の鈍い音に二人が振り返ると、ノクスが地面に膝をついている。


『どうした⁉大丈夫か?』


慌てて駆け寄る二人に対し、手のひらを見せる。


『大丈夫です。昨日から魔術を使い過ぎました・・・反動が来たようです。先ほど来なくてよかった。』


膝をつきながらもホッとした表情をする。

ノクスの表情を見て、二人はひとまず胸をなでおろした。

だが、追手が一人だけとは限らない。

森の静けさは、まだ安心を許してはくれなかった。


『しかし、どこから足が付いたのか?そんなに目立った事をした覚えはないが・・・。』


顎に手を置き考え込む・・・


『多分、あの【指輪】じゃないか?足が付くとしたらアレ以外思い浮かばないかもな。』


フィンの言葉に反応したのはエリシア・・・では無く、意外にも口を開いたのはノクスだった。


『助けていただいた時に手放された指輪ですか?私が倒れたばかりに皆さんを危険にさらしてしまうとは・・・。』


頭を抱え、悔しそうに視線を落とすノクス。


『ノクスのせいではない。いずれこうなると薄々とは感じていた。【姉上】は見逃してはくれなかった・・・ただそれだけの話しだ。遅かれ早かれ、こうなっていた。』


そう言って自嘲気味に笑うエリシア。

―【姉上】―

この言葉が、妙に胸に引っ掛かるが、理由は説明できない・・・。


『俺には違和感だらけだけどな・・・【指輪】から足が付いたにしても、早すぎないか?指輪を宿屋に渡したのは昨日、で襲われたのは今日だぜ?』


確かに・・・宿屋が指輪を売ったとしても、それは昨日の出来事だ。

連絡を受け、一日で刺客を送り込む・・・そんな事が可能なのか?

―視られている?―

ふと、そんな言葉が脳裏をよぎる。


二章 2話 パート1 でした。

【刺客】 【姉上】 

新しくキーワードが出てきました。

帝国の闇が見え隠れするパート2に続く。

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