雨宿り中につき、嘘は三つまで
「……止みませんね」
「ですね。さっきより強くなってません?」
「私のせいかもしれません」
「え?」
「雨の日、だいたいそうなんです」
「体質ですか」
「信用しないんですね」
「初対面で信じる情報じゃないです」
「じゃあ嘘です」
「早い」
「雨宿り中につき、嘘は三つまでって決めてるので」
「ルールが独特すぎません?」
「今のが一つ目」
「え、もう?」
「二つ目は――」
「待ってください。聞くかどうか選ばせてください」
「いいですよ」
「……聞きます」
「じゃあ、私。今日、会社を辞めました」
「重っ」
「今の、嘘です」
「どっちが!?」
「本当は」
「本当は?」
「今日、会社を休みました」
「急に現実的!」
「理由は?」
「それは三つ目なので」
「まだ残ってるんですね……」
(雨音、少し強まる)
「あなたは?」
「え?」
「嘘、つかないんですか」
「得意じゃないので」
「じゃあ本当を一つだけ」
「……傘、忘れました」
「それは見ればわかります」
「そうですね」
「三つ目、いきますよ」
「どうぞ」
「この雨が止んだら、私は多分、少しだけ前向きになります」
「それは……」
「嘘か本当か、どっちでしょう」
(少し間)
「嘘だと、困りますね」
「じゃあ、本当です」
(雨、弱まる)
「あ、止みそう」
「ですね」
「嘘、使い切っちゃいました」
「じゃあ、ここからは?」
「本当だけ、です」
「それ、いいルールですね」
「次に雨が降ったら、また使います」
「そのとき、また会えたら」
「それは――」
(バスの音、遠く)
「嘘にします?」
「……本当で」




