70話
アメリアが駆け出して行った戦場は、もはや戦場とは呼べないほどに一方的な蹂躙が行われた。
戦場の敵を斬るうちに、アメリアの体に変化が起き始めた。
疲れた。もう嫌だ。めんどくさい。もう、やめていいかな?
人みたいなやつもずっといて、もう嫌だなー。
そんな想いがどんどん頭を埋め尽くしていった。
いっそのことこのまま闘うのを辞めたいと思っていたその時、戦場の異形の物に変化が起き始めた。
異物に取り憑かれ、泥に覆われたような姿から少しずつ、少しずつ泥が取れて行ったのだ。
「ありえない」
セルビアが言った。
もう、体が消え掛かって、崩れて行っていた。
反射的に、トドメを刺そうとしたその時突然声がした。
「まだ……だめだよ。きみがその剣を使う代償は、もう一個あるんだから。みんながきてか…」
それを最後に、その声は消えてしまう。
消えてしまいそうなくらい儚いのに、どこか芯があってしなやかで、まるで一本の剣のような。
そうやって剣を見つめると、唐突に
「あなたを、真の保有者と認めましょう。もう一つの代償と引き換えに、個体名セルビアをこの世界の理から消し去りますか?」
と言う無機質な声が響いた。
さっき聞こえた声とは同じみたいでちょっと違う、感情のない冷たい声。
何度聞いても、同じことを喋って、代償のことも、何も聞くことができない。
どうすればいいんだろう……。
そう思ったその時、
「保有者の沈黙を確認。沈黙を肯定と考え、個体名セルビアをこの世界の理から消し去ります」
鋭い閃光が目に入ると、私の意識は途切れていった。
目が覚めると、そこには剣がいた。
棺に入れられて、大事にされているその剣はどうやら、さっきまで使っていたあの剣。
剣はこう言った。
「あなたには、選択肢がなかった。セルビアをこの世界から消すか、この世界をセルビアごと消すかしか残されていなかった。ここは、あなたに、あなたのこれからを伝えるところ」
剣を捕まえようとしても、何もできない。体が動かないのだ。
でも、剣は気にしていないらしい。
まるで事実が確認できればいいみたいに、
「あなたはこの後、記憶を失ってもらいます。あなたの人生の全てを、無に返します」
「ラノールドたちに、何も言えないんですか?家族にも…」
わがままを言ってるとは思う。分かってもいる。
無理なんだって。
でも、最後にラノールドに言いたかったなー。
「これから、よろしくね」って。
きっと、喜んでくれたと思うのになー。
そう思いながら私の意識はゆっくりと、白く塗りつぶされていった。
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