56話
アメリアに拒絶されなくてよかった。
それがあの時に抱いた一番の思いだ。
アメリアにはかつて求婚して、拒絶された。
もちろん俺が悪いことは分かっているし反省もしている。
でも、また拒絶されると思うと怖かった。
だからあの時、勇気を出してアメリアに自分の思いを伝えた時、あの時の自分が今でも信じられない。
自分が自分が自分じゃないみたいに、でも意識ははっきりしていて、アメリアに向かって思いを伝えた。
その時とっさに、
「絶対ムリだ。また断られる」という思いと
「だとしても私はアメリアが好きなんだ」という思いが交差した結果、私はとんでもないことを口走ってしまった。
「まずは、俺が役に立つと証明してみせます。アメリアの前で」
とっさに放ったその言葉は、よく考えてみればあまりにもおかしなことだ。
きっと私は混乱していたのだろう。
だが、アメリアは笑って
「それなら一仕事してもらおう。聖ヨガ王国を相手に侵略を行え」
とっさに「分かりました」と言ってしまったが、これは遠回しの拒絶なのだと理解した。理解してしまった。
だって、聖ヨガ王国を理由もなく侵略すれば他国が黙っていない。
ただでさえ最近宰相を告発し罰したばかりだ。
宰相派の者たちは数が多い。
罰することはなかなかに難しいだろう。
私は諦めていた。
私の力だけではできないなと思っていた時、その思考回路を読んだように、
「お前はあいっかわらず真面目すぎて頭が硬いな。もう少し他人を頼りな」
「言っただろうラノールド。私は国益に反しなければ迷惑ではないと」
「帝国とつながりができるのは願ったりかなったりだ」
そういっきに言ってくれたアメリアは、私が始めて彼女を正面からはっきりと見た時の表情と同じものだった。
アメリアに頼ってもいいんだと気づかせてくれたことで、私は一つ嬉しかったことがある。
「私はまだ振られていない」
たったそれだけだ。
でもたったそれだけだと言われていても、私にとっては最も大切なことだ。
アメリアside
びっくりした。
ラノールドならできるだろうと思って提案した仕事を聞いた瞬間、ラノールドの顔が絶望に満ち溢れている。
私はあんまりラノールドを困らせるつもりはなかったので、私なりにラノールドの頭を柔らかくしてやった。
ラノールドは真面目すぎて、頭を上手く使えていないところがあるからね。
ただ、なぜかアドバイスのあと、ラノールドが今にも泣きます!みたいな顔をしていたことに驚いた。
あいつ確か、表情筋が死んでることで有名だったはずだけど⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まあいっか。
3章突入!!
ここからは基本的にラノールド前半アメリア後半みたいな感じで行こっかなと。




