31話
ランディーネ侯爵家の話をもう少ししよう。
ランディーネ侯爵家の役割は世界の調節だというのは、さっき言った通りだ。
神は自分が作った世界がどのくらいの負荷にどの程度耐えられるかを決め、その通りに世界を作ったらしい。
負荷は少しずつ増えることを想定されているため、世界が壊れるとかはないはずだった。
しかし人間が、というよりランディーネ侯爵家が新しい魔法を開発するにつれ、本来なら余裕があったはずの負荷が一気にかかってしまったのだ。
そこで、私の祖先は魔法の開発や研究などをリセットし、少しずつ研究させるようになった。
研究はやめない。
今も昔も、私たちは我慢ができない一族だったからだ。
リセットの影響は大きかったが、皆少しずつ研究を進め、結果を子や孫に伝えていった。
少しずつ以前の記憶や記録が蘇り、古代魔法レベルの研究開発ができるようになったのが先代当主、お祖父様の時代だ。
以来お祖父様とその家族で研究を始め、少しずつ新しいものを開発(一年に一つくらい)していくというシステムに落ち着いた。
その速度は、一般的な人間に比べたら十分にはやくて追いつけないだろうが、かつてはこんなものではなかった。
古代というのはやはりすごい。
さて、ここまでがアメリアの中の記憶とランディーネ侯爵家当主の記録だ。
ここからは、アメリアの記憶とアデリーナの記憶を見ていこう。
アデリーナ・リデルリン。旧姓アデリーナ・ランドリーのいた国のヤマハシ王国は、かつて防御結界の開発にいそしんできたある一人の変人が起こした国だ。
変人と言ったらランディーネである。
本人はそんなつもりはなかったものの、島を実験で丸ごと囲う結界をはって隔離し、さらに管理できるのが血のつながった人間だけという設定にしてしまえば、自然と治める人間ができるだろう。
ランディーネの名を持つ人間は変なところでバカだ。
結界師として崇められるようになったその人物は、名前を聞かれるたびに毎回違う姓を名乗るため、名乗った回数が一番多いランドリーを名乗る事になった。
国の名前を聞かれた時にはとっさに、
「山がいっぱいあって大陸の端っこだからヤマハシ!」と答えたらしい。
こういうバカっぽいエピソード、実は口伝で伝えられていく。
王女や王子は生まれた時から子守唄の代わりに聞かされるエピソードというかギャグである。
ちなみに、ヤマハシ王国の人間はランディーネを名乗っていないため、神の加護はない。
だが、天才肌で変人というのはもともとの資質のため全く変わっていない。
アデリーナも自覚なしの天才で普通に変人だ。
アデリーナは魔力も高くて魔法も生まれつきできるが、内政が大好きだ。
執務室にこもって出てこないのは当たり前、休憩させようとすれば休憩がてら別部門の書類見てるから大丈夫だと言い張り引きこもる。
本人が自分の限界を知った上で限界突破をしないため、体調管理もバッチリである。
まあ、だからこそ文句が言えないのだが。
アデリーナは結界の管理をしていた際に暴走したが、それは単純に結界の綻びを補う代償だった。
結界師の変人様が、
「私ができるなら先祖も魔力で管理くらいできるでしょ。大丈夫大丈夫」
とか言っていたらしい。
先祖様はさぞかし楽観的だったのだろうな。
だが、結界の維持に必要な血がだんだんと薄まり結界の維持に別の力が必要になったらしい。
厄介な事に、その結界が求める力が『理性』だったのだ。
随分と性格の悪い結界だ。
という事で、結界と先祖の性格の悪さに屈したアデリーナは、最後の悪あがきで記憶を託した。
ランディーネ侯爵家の記録は、ヤマハシ王国の王族の口伝なので、アデリーナの記憶全てが託されたという事なのかもしれないが、いずれにしてもこれはアメリアの頭に流れた記憶であり、記録でもある。
【こぼれ話】
アデリーナの先祖様は王族が嫌だったので、嫌がらせのつもりで気楽なことしか言わなかったらしいですが、おそらくもとの性格でしょう。
ランディーネ侯爵家の人間たちは基本的に実力主義なので、自分の実力不足による失敗に対して冷静です。
アデリーナも怒らず、そういうものだと思っています。
ですが、被害を軽く見積りすぎた先祖も十分悪いです。
ちなみに、先祖様が結界を作ったのは古代の中でもまだ世界に負担がかかる前でした。
聖ヨガ公教で言われた天地創造は、時系列だと古代文明の記録が始まる数年前とかなので(記録上は)、情報通な王族やランディーネ侯爵家の家の人間は聖ヨガ公教を信じていません。
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