27話
王太后は、アレクサンダーの母親にして元国王の妻だ。
あの国王はとても有能な国王だったが、家族には恵まれなかった。
ほんとついてない。
王太后とは幼い頃、彼らの父親が勝手に決めた婚約者という間柄だった。
王太后は元々小国の王族だったらしく、その国がリデルリン王国に従うことを約束するための結婚でいわば人質だった。
あの国王は元々第三王子だったので、有り体に言えば押し付けられたということだろう。
そして、王太后は実際押し付けたくなるような、本当にヤバい奴だ。
自分の事しか考えず、マナーなどのレッスンは常にサボる。
誰かがたしなめれば癇癪を起こして部屋にひきこもり、一日中ずっと泣きわめいている。
結果的に王太后の素行は、尋常じゃないくらい問題視されるようになった。
おまけに王太后が半ば脅しのようにしてベッドに引きずり込んで子供を産んだ。
その子供がアレクサンダーで、私の子供だから私が教育する!と言って譲らず、アレクサンダーをさらうようにして国王のもとから奪った経歴まである。
そして実際、そんな人間が教育していればそうなるよなー。と言われ、お母様に似ておりますねと言われるような性格になっていった。
国王の内政が一区切りつき、アレクサンダーを教育し直そうとしたときにはもう手遅れになったとどの先生にも言われるくらいには。
さて、昔話はこれくらいにして早速問題の解決に動こうと思う。
王太后が魔法を使えることは知っていたものの、まさか理を曲げるという愚かな真似をするとは思わなかった。
理というのは、人間が変えることのできない世の中の仕組みのようなものだ。
理は、全世界に共通するものと国によって違うものの二種類に分かれる。
玉座の間の拒絶と呼ばれるこの反応は、このリデルリン王国特有の理として知られている。
玉座の間が王として認めた相手を王位継承者として来たこの国では、その玉座の間に拒絶されるかどうかですべてが決まると言っても過言ではない。
王太后は、アレクサンダーとともに玉座の間へと入ろうとし、拒まれてしまったのだろう。
基本的に玉座の間は、国王になろうとしている者の中でも王として認めないものを拒絶すると定められている。
王太后は玉座でも狙ってたのか?と疑わしくなる。
奴ならやりかねんと思えてしまうのが怖いところだろう。
しかし、王太后にとって玉座の間に入れないことは屈辱だったのだろう。
そこから怒って理を歪めた?のかもしれない。
理って、怒って歪められるほどやさしいものじゃないはずなんだけどね。
そして、今度はアレクサンダーに大量の魔力を流し込んでいる。
魔力というのは本来、自分の体に魔力を適応させながら少しずつ蓄積させる。
そのため、いきなり他人の魔力を流せば、たいていの人間は全身から血が出て死んじまう。
仕方ないから元婚約者のよしみで助けてやろうと思った時、ちょうどアレクサンダーが限界のようだった。
魔力の暴走を止めるのはかなり難しいのに、あいつはなかなかやるなと思っていたら、さすがに難しいようで、アレクサンダーの体の中から魔力があふれて暴走し始めている。
慌てて玉座の間に入り、魔力を吸い出してやった。
前にあかりにやったときと同じようなものだ。
前を見据えると、焦ったような表情の王太后と目が合った。
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