10話
そのご老人、一見すると50才くらいの齢に見えるのだが、内に秘めている魔力量がかなりのものだ。
それに加えて魔力操作技術がびっくりするくらい繊細だ。
こいつはマジで只者じゃない。
その雰囲気を感じ取ったのか、うちの妹が構えの姿勢を見せている。
そしてその様子を見た老人は、ゆっくりと鷹揚にうなずくと、私たちを案内していた青年に向かって、
「よくやった」
とだけ言った。
その老人は、声に自然と魔力をのせているせいか威圧感があり正直驚いたが、別に怖がるほどのものではない。
しかしその様子を見ていた老人の様子が変化した。
なんというか私への評価を上方修正してくれたと思う。
舐められなくなったとでも言うべきだろう。
そして、
「ふむ、貴様はかなりの魔法の使い手のようじゃ。自然と中が良いのじゃろう」
と言われた。
まあ実際、自然としたしむ時間は持っているし、私の魔法は実際強力だからね。
いやいや、自画自賛は要らないよね。
気を取り直して用件を聞こう。
どうやら彼らはかなり人数が多いらしい。
ボロボロの集落と言っても、粗末な家が20軒くらい建っている。
まあそれはいいとして、とりま用件を端的に聞いてみると、長い話になるという前置きを残して話を始められた。
私たちは見ての通り緑の民じゃ。
我らは歴史にあるように、古くからこの森と調和しながら暮らしていた。
自然というのはいつもわしらに優しかった。
だからこそ、徐々にこの森がおかしくなっていることに気が付かないでいた。
わしらを心配させないがために、森が森全体で自然エネルギーを溜め込んでいたのだ。
だが、痩せ我慢というのはいつか、限界が来てしまうものだ。
ある日突然、森が暴走を始めてしまったのだ。
本当に突然じゃった。
森の暴走は、森の中心部から放射状に広がっていった。
それまでわしらは森の中心に住んでいたのだが、中心にいた仲間たちは皆自然エネルギーにやられていき、緑の民は滅亡したことになった。
しかし、これは厳密には違う。
実は、生き残りが存在していたのである。
その生き残りが我らじゃな。
え?なぜゆえ世間に知られていなかったかって?
そんなのは簡単であろう。
我らが異端児だったからじゃよ。
異端児、というよりも、思想の違いじゃな。
緑の民の今後についての方針で、意見が割れてしまった。
我らは他の地域と交流するべきだと主張し、他の者たちは森の中での現状維持を望んでいたのだ。
我らは仲間の中でもかなり森の内側に住んでいた、若い者が多かった。
だが我らの意見は聞き入れられず、妥協案として我らが交流の道をひらけと言って我らを事実上追放した。
ちょうど、旅をして十日くらい経ったころかな。
そう、そこから森の暴走は始まった。
すぐに、森の中心部から離れた。
なんとなく、得体の知れない感じがしたからだ。
そして、その予感はハッキリと当たった。
我らは逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。
そしてたどり着いたのがここだ。
当時はこの地域こそ、森とそうじゃない地域の明確な境目だった。
そこで我らは、持てる力を全て使ってこの森の自然エネルギーを制御した。
元々自然エネルギーを取り込みやすいからだなのだろう。
だからこそ、ここ最近までは持ち堪えることができていた。
誰かが少しでも失敗すれば全てが水の泡になってしまう、という緊張感がある中でも、なんとかギリギリでも耐えることができていた。
それが崩れたのは、突然のことだった。
きっかけとしてはすごく単純。
魔物が現れてしまったのだ。
その魔物はかなり強く、なんとかみんなで倒たが、その時に多くの仲間が死んだ。
そこからはあっという間だった。
元々我らは、みんなで少しずつ、分担して自然エネルギーを体内に溜め込んで制御し、それをまた森に帰していた。
しかし、その負担が増えてしまった。
そのため、多くの仲間が体の不調と戦いながら制御を続けているのだ。
だが、そんな時に唐突に現れたのがお前たちだった。
特にお前からは、とてつもない得体の知れない力を感じた。
だからこそ、価値があると思って連れて来させた。
っと言って私を見る。
そして、私の家族を見ると、
「勝手なことだというのは分かっている。だが、力を貸してほしい。」
と言って一斉に土下座してきた。
困る。こういうふうに頭下げられるのはちょっと困る。
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