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本当の世界?  作者: N
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第六話

水希の机の引き出しから、小さなノートが見つかったのは、

彼女の姿が見えなくなってから三日後のことだった。


書きかけのページには、こう書いてあった。


「これは、妄想です」

「私は変じゃありません」

「でも、誰かに聞いてほしかった」


筆跡は震えていた。

最後の数ページは、涙でにじんでいた。



あの日の放課後、水希は学校の非常階段を上って、屋上へと出た。

夕暮れの空が、血のように赤かった。


手すりにもたれながら、静かに眼鏡を外す。


世界がぼやける。


(ああ、綺麗。見えない方が、ずっと綺麗)


背後のドアが風で少し揺れていた。

それが、誰かの呼び声のように聞こえた。


「水希!」と叫ぶ声は――実際にはなかった。


水希の耳には、もう何も届かなかった。



教室に残された机。

図書室のノート。

家族のもとにも、友達にも、何も知らせずに。


彼女は、そっといなくなった。



陽向は泣きながら言った。


「本当に……何も知らなかった。気づいてあげられなかった」


担任の先生は、繰り返す。


「あの子は、特に問題はなかったんです。真面目で、本を読むのが好きで……」


でも、本当は皆、うすうす感じていた。

水希が、どこか遠い場所に立っていることを。


ただ、それを“気のせい”で片付けた。

“おとなしい子”だから、と。



誰も知らなかった。

彼女が、どれほど鏡を怖れていたか。


どれほど、メガネを通した世界に不安を抱いていたか。


どれほど、“本当の自分”がどこにもいないと感じていたか。



最後のページに、彼女はこう書いていた。


「鏡の中の私は、笑っていたけれど――

きっと、本当は泣いていたんだと思う」


「見てほしかった」

「気づいてほしかった」

「でも、もう遅いね」


「……ありがとう。ごめんなさい」


続きは明日の夜投稿します

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