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本当の世界?  作者: N
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第五話

朝、目が覚めた時、何かが変わっていた。


自分の手の色が、少しだけ違って見えた。

肌の色が薄い。血の気がない。

冷たくて、触れても“自分の感触”がしなかった。


鏡を見た。

そこにいた“私”は、私じゃなかった。


目の奥が笑っていた。

ほんの少しだけ、満足そうに。



学校に行くと、皆が笑っていた。


友達の陽向が「おはよう」と言ってきた。


でも、どこかぎこちなかった。

笑ってはいたけれど、その目は水希を見ていなかった。


(私がここにいても、誰も本当には見ていない)


授業中、教科書の文字が黒い点のように見えた。

全部、意味がなかった。


先生が指名しても、水希は何も言えなかった。

でも、それに誰も気づかない。


まるで、最初から存在していなかったみたいに。



放課後、教室に一人残って、机に突っ伏す。


耳鳴りがする。

誰かに呼ばれている気がするけど、聞き取れない。


ガラス窓に、自分の顔が映っていた。


また、あの“笑い”だ。

ほんの少しだけ、口元が、吊り上がっている。


「ねぇ……どうして、そんな顔してるの……?」


水希の問いに、反射の中の“自分”は、黙ったまま微笑んでいた。


笑っているのに、悲しい顔だった。

まるで、すべてを知っている顔だった。



家に帰って、ノートを開いた。


私がいない世界の方が、きっと正しい。

私がいない方が、誰も怖くない。

私の世界は、どこにもなかった。


書いた文字が震えて、にじんで見える。


メガネを外す。

ぼやけた視界の中で、すべてが曖昧になる。


書きかけのページの向こうに、もう一人の“私”が立っている気がした。


でも、見えないから、怖くない。

むしろ、何も見えない方が安心する。


そうだ。見なければ、なにも起こらない。


でも、もう――遅かった。


続きは明日の夜投稿します

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