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『したい事』の探し方

作者: 佐藤 亮太

 珍しく、並木の立つ通りを歩いていた。

 

 何時からだろう、外に出なくなったのは。

 そうだ、確か高校に入ってすぐに容姿の事でクラス内ではぶられた。

 多分あれが『イジメ』というやつだったんだろう。

 いじめたこともられたことも無く、ある意味平和な人生を送っていたのに……。

 もし人生が自分で作り上げていく物なのだとしたら確実にあの頃から狂っていた。

 いじめたやつが悪いのか、容姿を気にしなかった自分の方が悪いのか、正直今も当時もどうでもいいと思っていたし。

 平和が必ずしも幸せとは限らないだろう。

 現に、いじめを受けた当時の自分は「学校にいかなくて良い口実にはなるな……」なんてことを考えていた。

 だが実際、家に居るなら居るで結局やることも無かったし、したいことも無かった。

 つまり人生を楽しむのに必要なのは金でも自由でも友達でもなく『したい事』なんだろう。

 それで、自分がしたいことは無いと思ったときに自分の存在意義を考えた。

 無論、なにも思い浮かばなかったことは言うまでもないだろう。

 

 そんな事を考えていたら、したい事でも探すために外に出たくなった次第だ。

 結局、家を出てからすでに数時間もブラブラしているがしたい事どころかそろそろ家に帰りたくなってきた。

 家に帰ろう、思ってきびすを返す。

 でも、流石に来た道を引き返すのでは本当につまらないと思い、行きとは別の道で帰る事のする。

 途中、中古ゲーム屋があったのでなんとなく入店した。

 昔、イジメで学校に行っていなかった頃はもっぱらテレビゲームで暇つぶしをしていた。

 今でもそれと同じ感覚が湧く事を期待して一つのアクションゲームを買った。

 買おうと思った意欲が起きたことがすでに少し嬉しかった。

 最近は本当に機械的な生活しかしていなかった。

 昼間で寝て、昼食を食べて、パソコンでいつも見ているサイトをいくつか回って、夕食を食べて、ボーっとして、そして深夜に寝る。

 そんな昼夜逆転生活がもう1年以上続いていた。

 そんな中で、たとえテレビゲームだったとしても、何かをしようという意欲であることは確かだ。

 買ったゲーム、確か中学生のときに流行ったアクションゲームだ。

 多くの友人がやっていて自分も欲しかったが、やるためのハードがそもそも無かった。

 そんなゲームを中古店で見つけて思わず買ってしまった。

 とりあえず家に帰って早速プレイしてみよう。

 

 中古店と家のちょうど中腹ほどにある商店街。

 そこで自分は立ち止まっていた。

 自分だけではない、そこに居るほとんどの人が立ち止まっていた。

 理由は簡単だ、一人の男が道の真ん中で、そばのスポーツ用品店の店主を怒鳴りつけていた。

 よく見ると怒鳴っているほうの男は隣に住んでいる一人暮らしの学生の男だ。

 なにやらこの店の商品のせいで怪我をしたことを怒っているらしい。

 店主は必死に謝っているが男の方は手を怪我して受検が危ういとか喚いている。

 面倒だから脇を抜けて行こうととりあえず人垣を掻き分けて前へ進む。

 謝る店主の後ろを通る。つまり隣人の目の前を通る形でその場を横切ろうとする。

 しかし、運悪くそこで隣人が店主に殴りかかった。

 店主は避けたが有り余った力は止まることができず、すぐ後ろに居た自分が殴られた。

 かなり盛大に殴られた、コケもした。

 それでも、自分は『したい事』があるんだと怒りを抑え、立ち上がり家に向かう。

 何人かに大丈夫かと声を掛けられたが大丈夫だといってすぐに立ち去る。 


 家についてドアの前でやっと気付いた。

 買ったゲームの箱がくの字にひしゃげていた。

 中身はディスクシステムのゲームソフト、恐らく箱の道連れだろう。

 せっかくやりたいことを見つけたって言うのにあの馬鹿学生は……。


 殺したいと思った。

 

 だが気分がいい。


 だって……、“したい事”を見つけたのだから。 

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