真実③
「クラックソルジャー」は、自分の中ではファン〇シース〇ーシリーズやスター〇ーシャンシリーズをイメージしてます。
「クラックソルジャー」とは、レオンが前世ではまったゲームのことで、宇宙に進出した人類が降り立ったある惑星での冒険を描いた作品らしい。その惑星には人類タイプの知的生命体がおり、魔法が存在していた。それを使う現地の人間との交流、争いなどを描いたストーリー展開に大変はまったとのこと。
自分は現地の人間ではなく、SF装備を使える人類サイドに生まれ変わりたいといった。
「魔法と科学っていう、ファンタジーとSFの組み合わせが好きだから、ずっとあこがれていたんだ。
あと前世の日本人として生きた身としては、衛生環境やら便利な家電がある生活の方が圧倒的にありがたい」
「もう一度言っておくけど、バカげたチート能力とかはないわよ。あくまでその世界の望みの陣営に生まれ変わらせるだけで、天才とかの設定はない凡人だから。
あんた視点からすれば技術チートだとは思うけど」
サリーが「男ってそういうの好きよね~」とあきれた風に言うと、側近の一人が同意するように頷いた。
それはメガネをかけた男子で、名前はフェイル。この世界では宰相の嫡男であった。
「彼は前世ではまだ大学生でしたから、子どもっぽいところがあるんでしょうね。
流れ弾で無意味に死んだりする可能性だってあるだろうに。まあ衛生環境や家電についてはまったく同意しますが」
はてそんなに気になるのか、と疑問に思いながら見つめると、フェイルはメガネをクイッと直して、自分は前世では官僚であったと告げて、もう一度自分の人生をやり直すことを望んだと語る。
「私は周囲に言われるがままの人生を歩き、結婚も上司や両親に言われるがままでした。
ですが結婚して初めて気づいてしまったんです。「自分の意志で生きていなかった」と。
妻が生きた人間だとそうなるまで気づけていなかったんです。バカみたいでしょ?
結婚生活もうまくいかなくて早々に離婚、仕事も身に入らなくなって気づけば窓際族。
自分の人生は何だったのか、どこで間違えたのか後悔だらけの日々を送っていたら、御偉方の陰謀に巻き込まれて事故死に見せかけて殺されました」
殺された、と聞かされて顔が青くなる。でもチラッとお父様たちや陛下を見ると特に変化がなく、自分が知らないだけでこっちの世界でもそういうことはあったのだろうか怖くなった。
「そこにこんな状況ですよ。文字通り人生をやり直すことができるチャンスが来るなんて奇跡だ!
私は次の人生では、人としてあるべき生を送りたいんだ!」
「言い返すようだが、そっちだって事故死したり転んで頭を打って終わり、ってパターンがあるだろ」
「そこまで気にしていたら何もできませんよ」
レオンが文句を言いたかったのかそう返すと、フェイルは肩をすくめた。
なお正確には、前世と極めて近い、パラレルワールドの自分に記憶を持ったまま生まれ変わると言った方が正しいようだ。
「まあほかのメンツも似た感じだ。来世では希望通りの環境に生まれ変わらせてくれることを条件にいろいろ動いていたんだ」
「私が出会ってきた、”上位存在”とでも言おうかしら。まさに神としか言えない高位の連中には、魂を加工して生まれ変わらせることのできる存在もいたの。彼らからそういった技を教えてもらったり盗んだりしてね、今じゃそんじょそこらの自称神様よりもできること多いって自負してるわ」
サリーがドヤ顔で胸を張って説明してきた。
頭がもうパンク寸前で、だいぶ理解を諦めているところもあるが、つまり女神を捕まえるために婚約破棄をした、ということだ。
……うん、文字にしてみると意味が分からない。
「ああ俺は違うぜ。俺はまだ生きているのに無理やり連れてこられたんだ。
これが終わったら、”ご主人様”のところに帰してもらうんだ」
騎士団長の息子が爽やかな笑顔で凄い発言してきた。
細マッチョなイケメンが”ご主人様”って何よ!? 会場がざわめき、騎士団長は口を大きく開けてしまった。
「そいつ、こっちに来る前は犬だから。ご主人様ってのは飼い主のことだ」
「え? 犬?」
「人間の魂だけ、だなんて一言も言ってませんよ。魂なら人間だろうが動物だろうが片っ端から集めていたみたいです」
レオンとフェイルが補足してくれてホッと一息ついてしまった。
ああ、犬なら納得。
「……さっきから貴様らは何の話をしておるか!」
と、ずっと事態の推移を見ていた陛下が怒声を浴びせてきた。
「ゼンセだの女神だの犬だの、訳がわからん!? 貴様らは狂っておる! レオンよ、お前はもはや我が息子でもなんでもない。頭のイカれたバカだ。
さっさとこやつらを捕らえよ。いや牢に入れる必要もない。この場で首をはねよ!
イリールよ。お前には聞かねばならぬ話が山ほどある。そやつも捕らえよ!」
「ええ!?」
陛下は完全にブチギレてしまって、レオンたちを斬るよう命じた。さらに私まで捕まえるよう言ってきた。
するとお父様たちが必死になってそれを止めようと陛下に懇願する。
「お待ちください陛下。イリールは違います。あの子は……」
「その前に確認したいが、貴様の言うイリールはどっちの娘だ?
今まさに捕らえようとしている娘と、そこで幽霊のように浮いている娘。どっちがイリール・ウィストだ」
「え……それは」
「答えぬか」
一瞬戸惑ったが、両親はすぐに私のもとへ駆け寄り、陛下に向けて宣言した。
「それはむろん、この子にございます。私どもが愛する娘、イリール・ウィストはこの子以外におりません」
「あんな幽霊もどきが、私がお腹を痛めて産んだ娘であるはずがありません。私にはわかります。この子こそ、正真正銘のイリールであると!」
「お父様、お母様……!」
ああ、涙があふれてくる。
二人の愛情が伝わってくる。これまで過ごしてきた日々が脳裏に浮かぶ。
それを失望を通り越した虚無の表情で見ている『イリール・ウィスト』のことは、この瞬間完全に忘却していた。




