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真実②

「……なんなのだ。今のは」


 国王が、絞り出すように声を出した。

でも本当は、あの方だってわかっているはずだ。

今の光、ただ見せられただけじゃない。何が起こったのか詳細な情報を頭に直接書き込んできた……。


「最初に見えた街、あれは”前の世界”の光景。お話が終わったから次のお話を始めるために、女神が一度全部リセット―――やり直すために消して違う世界を作ったの。それが今の世界」

「国も人も、実際の時間だと誕生して12年程度。そこの女がイリールになってから、この世界は動き出したんだ」


 サリーとレオンが言葉で改めて説明してくる。

世界のリセット? 女神? 話のスケールが滅茶苦茶すぎて理解が追い付かないはずなのに、頭の情報で嫌でも理解してしまう。

すべて真実なんだと。

 私がイリールになったのと、この世界の歴史は同じ。それ以前の過去はすべてまがい物なんだと。


「あの女は、女神なの?」

「そうよ。でも神話に出てくるような立派なものじゃない、似たような世界をループさせるためのコンピューターみたいな存在、と言ったほうが正しいわね」


 サリーに言うと、そう返事が返ってくる。でも、じゃあ。


「やっぱりこの世界はゲームの世界……」

「だから違うってば。()()()()を大量に集めて材料にして、知性体がいない異世界を使って構築したのよ。れっきとした現実よ」

「あるもの?」


 


「魂よ」


そしてサリーは語り始める。そもそも自分はどこから来たのか。何が目的なのか。


「もともと私はいろんな世界を旅してまわるのを趣味にしている、魔法使い、いや超能力者? まあそんな感じの人間なの。異世界を渡り歩く奴って、結構いるのよ。まあ移動の仕方や当人の属性によって渡れる場所は千差万別なんだけど」


 ファンタジーかSFなのか、判断に困る話を始められ、こっちとしては戸惑うしかない。果たして会場の中にサリーの話を理解できる人間がどれだけいるか。


「中にはさ、ヤバいやつもいるのよ。一言で言えば世界征服。

それも単純に支配しようってやつもいれば、異世界の命すべてを皆殺しとか、歴史に介入して戦争起こして楽しむのとか。そんな奴らと遭遇したら、私、ついぶっ飛ばしたくなっちゃうのよ。

別に正義感とかでもボランティア精神でもないんだけど、ああいう連中が生理的に無理というか。

あんな奴が好き勝手しているのを放置してるって思ったら、我慢できなくて、つい手をだしちゃう、そういう性格なの。

まあ最近だと、これも趣味の一つになりかけているけどね」

「……はあ。凄いわね」


 ただそうとしか言えなかった。自分の好きなゲームとはジャンルが違いすぎて共感できない。


「そんな日々を続けていたある日、この世界を見つけたのよ。今まで見てきた世界とは違って正直戸惑ったわ。

 簡潔に説明すると、この世界で好き勝手した奴は、悪役令嬢ものを小説だけじゃなくて実際に動いているところを見たくて実行していたみたい。

 いろんな世界から集めた魂を材料に、こいつを使って、ね!」


 サリーが突然虚空に手を伸ばすと、何もない場所から人影が飛び出してきた。

その人影はサリーの細い腕に首を掴まれ、必死に抵抗するが身動き一つとれない。


「ちょっと、その娘ってまさか」

「この世界の神様だ。どこからかずっとお前を観察していたんだよ。シナリオ通りに動いているかをな」


 人影の正体は、今映像で見た女神だった。

 ずっと観察していた? というかレオン、あなた何故さっきからそんなに詳しいのよ。


「実は婚約破棄したの、この子を捕まえるためだったの。

近くにいることは前から分かっていたんだけど、なかなか見つけられなくて。

うかつなことをすれば何が起こるかわからなかったから、情報を集めるのに時間かかっちゃった」

「こいつと俺たちで小説のとおりに動いていれば警戒を緩めるんじゃないかと推測していたんだが、想像以上に機械的な人形でな。まったく油断しなくて大変難儀したよ。

ああ、神様と言っているが、この世界を支配していた奴が作り出した玩具に過ぎないぞ。何回も世界を作り直しているから、神様って勝手に呼んでいるだけだ」


 ああ、そういえば。とレオンが手を叩く。


「そういえば俺たちについては説明忘れていたな。

ぶっちゃけていえば、そこのサリーによって前世を思い出した、転生者だ」

「なんですって!」

「さっき魂を集めて材料にしたって聞いたよな。

この世界を支配していた奴―――ちなみにとっくの昔にサリーに倒されているが、そいつは理想の世界を作るためにいろんな世界から魂を集めていたんだ。

死亡して漂っているだけじゃなく、生きているのを無理やり引っこ抜いたりしてな。

なんで魂を材料にしたかは不明だが、そういう研究でもしていたんじゃないか?


分かりやすく言えば、この世界のすべての人間は、そいつが集めた連中の生まれ変わりだ。前世の記憶があるか否かは別だが」


 思わず後ろに数歩下がってしまう。だってさっきから、想像を超えた話ばかりを聞かされて、正直泣きそうなのだ。

目の前のレオンが、自分が知っている人間と同一人物なのかわからなくなってしまう。


「俺たちが思い出したのはサリーと出会った時だ。あの時はパニックだったぞ。あいつの目的を聞かされても、しばらくは信用できなかったが、少し経てばわかった。「ああこいつ、くだらない小細工とか仕掛けるタイプじゃない」って。

それから表向きは小説通りのバカ王子として動きつつ、イリール、お前と少しでもマシになれないか模索していたんだが、無駄に終わったな。

まさか真相を明かすわけにもいかなかったからな。今この場以外の場所で明かしていたら、何が起きるかわからなかったんだ」

「目的……サリーは、何を」

「ループを終わらせる。そのためにこの世界を破壊する」


 予想できなかった爆弾発言に何度目かの驚愕が襲った。

 破壊!? この世界を破壊するって、なによそれ!


「は、はあぁ!? な、なんでそうなるの!」

「すまん、言葉も説明も足りてなかった。

何もこの世界を物理的に破壊するとか、そういう意味じゃない。

このループする世界を制御している女神を捕まえて、すべての魂を開放させる。それが目的だ。世界の破壊は比喩表現だと思ってくれ」


 レオンが謝罪するが、今度は別の疑問が生じてしまう。

 魂の解放? 今首根っこ捕まえられている女神をどうにかするってのは会話の流れからわかるけど、それやったらどうなっちゃうのよ。


「レオン、その魂の解放とやらをしたら、何が起こるというのです」

「生きた人間の魂は元に戻り、死者の魂は輪廻の環に入り新たな命として生まれ変わる。本来あるべき形に戻ります。

俺たちの場合は協力してくれたお礼として、特典がつくが」


 王妃が尋ねてくれると、魂がどうなるのか答えてくれた。でも特典って。


「気になるか? 俺の場合はゲーム「クラックソルジャー」の世界に転生させてくれることだ」

「……はい?」

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