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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Assassin

作者: 坂田リン



「ほんじゃ、お願いしま〜す」

「は、はい。手続きをしますので、少々お待ちください……」


なんとも言えない複雑な表情を浮かべながら、ギルド受付嬢である女性は奥へと歩を進める。


「たった1ヶ月でBランクに昇格! いや〜中々順調だね〜。よくやったよセリナ」

「ありがとうございます」


黒髪黒目の、あどけなさが残る顔立ちの少年、レン。その身長、姿が今いる冒険者ギルドの場所の雰囲気にお世辞でも合っているとは誰も言えなかった。


その隣に立つ、レンと比べると明らかに身長が高い女性、セリナ。こちらもこちらで目立っており、レンの隣にいると不思議な違和感を持つ。


レンはセリナの肩をバンバンと叩く。セリナは特に反応を示さない。


レンは気分が舞い上がっているのか、軽快に楽しく笑う。周りにいる冒険者の視線が自分に向けられていると気づいている上でだ。


それは興味を持つ視線や好きな人を見る好意の視線ではない。


嫌いな人間や汚物を見る視線がそこら中にあった。



「おいまたレンの奴だぞ」「何であんな奴が」「Bランクなんてありえねえだろ」「馬鹿野郎。セリナさんのおかげに決まってんだろ」「いっつも自分の手柄みたいに」「あーやだやだ」「クエストの最中に死んじゃえば良いのに」



息をするように陰口を言う冒険者たち。冒険者ギルドには多くの人がいるが、その中にわざとレンに聞こえるように発言してる者もいる。


レンにはもちろん聞こえているが、笑顔のままでいる。


「今日はもう疲れたから、クエストは良いだろ。後でアシェルのパン屋行こうぜ。運動した後はあの店のパン食べると最高なんだよな〜」

「はい。絶対行きましょう」

「テメェは何もしてねえだろクソ野郎」


1人の男が背後に5人の仲間を連れてレンの元へ寄って来た。おそらくパーティメンバーに違いない。


レンは笑みを絶やさずその男に手を振る。


「お〜ラントか。陰口はやめて直接俺に言いに来た? それとも、俺のBランク昇格を祝いに来た?」

「なわけねえだろガキが! テメェは目障りなんだよ。自分の力じゃ何もできねえクズが! 今日のBランク試験もセリナさんに全部丸投げしたんだろ!」

「イエース! いやーセリナすごかったよ。地中から出てくるフォレストワームをさ、生身で倒しちゃうのよ。強化魔法の魔法武装(マジックアーツ)だけで大したもんだった。いやーすごいすごい」


豪快にセリナに向けて拍手をする。セリナは頭を下げるだけ。


ラントと呼ばれた男はさらに怒りが増した様子だ。


「テメェのその態度が気に喰わねえんだよ! いつもいつもヘラヘラしやがって! 冒険者の恥晒しが!」

「恥晒し? 俺が何で恥を晒してるように見える?クエストはちゃんと達成してるし、正規のルートでちゃーんとやってるぞ? EランクからDランク、DランクからCランクてね。そして今日が記念すべきBランク」

「他人の力だろ! ランク昇格くらい自分の力でやったらどうだ!」

「無理無理無理。俺弱いし、めんどくさいからセリナに任せてんだから。冒険者にそんな熱くなんなよww。ギルドから引き受けたクエスト受注して達成すりゃ良いだけなんだから。真面目ぶんなって」

「こ……こいつっ!」


ラントが拳を振りかぶる。誰も止めはしない。


セリナ以外は。


レンの顔面を狙ったストレートは、隣にいるセリナの手によって防がれただけでなく、脇腹をセリナに勢いよく蹴られラントが後ろにある机にぶつかった。


「ぐはっ。くぅ……」

「セリナ強いって。もう少しで骨折れたぜ?」

「すいません。今度は調節します」

「クソが……まともに拳も振れねえのか。ホントにテメェは──」


「騒がしいなぁ」


ギルド入り口付近からの声に二人以外の全員が震える。


ラントらが振り返って見てみると、背の高い男がパーティメンバーの先頭に立っていた。


全身に満遍(まんべん)なく着けられた頑丈な鎧。通常の冒険者の金銭では到底手に入らない代物だ。


その男だけでなく背後に連れているメンバーも、男ほどでなはいがかなりの装備を身につけている。


さっきまでレンの陰口を叩いていた人々が、途端に黙ってしまった。


「おい。寝っ転がってんじゃねえよ。邪魔だ」

「す、すいませんゼノラさん! 今日は早い帰還ですね」

「当たり前だ。俺はAランクだぞ? たかがキングゴブリン複数討伐で手間取るとでも思ってんのか?」

「そうですね! すいません変な事聞いて……」


あんなに堂々としていたラントが縮こまっている。


町を治める領主、グラント=ラスファームの息子、ゼノラ=ラスファーム。


逆らうと何をされるかわからないので、誰も強く出ようとはしない。


ゼノラはギルド受付に行こうとすると、別の受付口にいるレンとセリナに目が止まった。


「レンか。まだ死んでなかったんだな」

「あらあら。これこれは、ゼノラ様。随分と早いご帰還で。流石Aランク冒険者。実に素晴らしい勇姿ですよほんと」

「お前なんかに褒められても嬉しかねえ。良い女に助けられて羨ましいねチビガキ」

「チビはやめてくださいよ〜。結構コンプレックスなんですから身長。セリナより低いんですから」


そう言っているレンの身長は確かに低い。セリナは女性の割に背が高い方だが、それよりもレンは低かった。


「お前みたいなグズにはもったいねえな。へへへ。どうだ? 俺のパーティに入んねえか?」


歓迎するゼノラの視線はセリナの胸元ばかりにいっている。他のパーティメンバーも同様。


しかしそれも仕方のないことかもしれない。セリナは他の女性冒険者とは比べ物にならない美貌をしている。


すらりと伸びる長い脚、清潔でサラサラな髪、透き通った純白な肌、服の上からでもハッキリわかる豊満なボディ。


一目で美人と認識できる要素を併せ持った人物であった。


「いえ結構です」


セリナはゼノラからの誘いを無表情で断った。


「そんなこと言わずによお、試しに一回どうだ? なあ?」

「ちょっとちょっと~。あんまエロイ目で見んといてくださいよ~。そちらのパーティにも美人さんいるじゃないすか」

「うるせえ。俺に逆らうのか?」

「そんなそんな。ゼノラ様に逆らうなんてとてもじゃない」

「あ、あの……」


奥へ行ったギルド受付嬢が戻ってきて、長方形のカードのような物に手を乗せている。


「ビ、Bランク昇格の手続き……完了しました。こ、こちら……ギルドカードです」

「お、できたできた。ありがとね~」


机に置かれた二枚のギルドカードを取り、「ほい」と言って一枚をセリナに手渡す。


「それじゃ皆さん。今日は帰りますんで、これからクエストに行かれる方は、どうぞ気を付けていってらっしゃいませ~」


最後まで笑顔のままギルドを後にした。



         ────



「視線が痛かったね~。いつものことだけど」

「今から引き返して全員のしましょうか?」

「言い方怖いなぁ~。ギルド内の暴力は御法度だって」

「失礼しました。ところで……あの、その……」

「ん? どうした~?」


レンは見ていないが、セリナの視線がちらちらと自分の方に向けられているのをなんとなく感じていた。


「レン様が……あの男のパーティの美人って言ってた人……私とどっちが美人ですか?」

「んん? うーんそうね……どっちかなあぁ?」

「……」

「おーしえない」

「ええ! そ、そこをなんとか!」

「やーだね。あ、胸だけは勝ってたと思うぞ」

「胸!?」


赤らめた表情を浮かべるセリナ。すると、レンは目的地が見え始めセリナを置いて店の前に走った。


セリナは「胸……胸……」と連呼しながら自身の豊満な胸部を揉んでいる。


「ちわーす」

「いらっしゃいま──あ! レンさん!」


レンと同い年か少し下か、人形のような顔立ちの少女が明るい笑顔を向けた。パン屋のエプロンがよく似合い、少しレトロな店の雰囲気に馴染んでいる。


「どうもアシェル。今日も来たよ」

「いつも来てくださって本当にありがとうございます。セリナさんも一緒ですか?」

「ああ。ここのパン気に入っちゃってるかね~。おまけに金もいらないなんて。別に払うよ?」

「そんな! いただけません! "助けてくれた方"にお金を貰うなんて!」

「真面目だね~。払う払うって言ってる奴はさ、貰っちゃえば良いんだよ」

「いえ、できません! これだけは譲れません!」

「はははは! アシェルは良い子だね~」


その後セリナも店に入り、二人は店内に並んである色とりどりのパンを物色していった。その途中、店の奥から一人の巨漢が現れた。


「あ、お父さん!」

「アシェル。お二人が来てるなら呼んでくれても良いじゃないか」

「ごめんなさい。忙しそうにしてたから」

「そうですよ。別に俺らただの客だし、わざわざ顔見せなくても大丈夫ですよ」

「そういうわけにはいかんよ。お二人はこの店を救ってくれたんだ。出向いてくれる時に顔も合わせないなど罰が当たってしまう」


見た目からは想像できない優しい声色。アシェルの父、ネイサン=ローランレイ。このパン屋の店主であり、レンとセリナは常連客(大方レンにセリナが付き合ってる)。


「大袈裟だな~。俺別に何もしてないし、何なら助けたのセリナですから」

「何言ってるんですか! レンさんだって恩人です!」

「いやいやいや。俺はそこらへんにいる冒険者と何も変わらんて」

「レンさんがこの店に来なかったら、私たちはどうなっていたかわかりません。だから本当に感謝してるんです」


アシェルがレンの手を両手で握る。


「ま、おいしいパンたちが食えるなら良かったよ」


ドン!


「……」


セリナが無表情で会計レジに選んだパンを置いた。それも勢いよく。


「……アシェルさん。いつまでそうしてるんですか?」

「す、すいません!」

「お前何か怒ってる?」

「いいえ」


レンも好きなパンを選んでアシェルに袋に詰めてもらった(何故かネイサンが笑顔だった)


「じゃ、また買いに来るから」

「あ……レン……さん。ごめんなさい……。あと……何回来れるかわかんないです」


アシェルとネイサンの顔が曇る。店の玄関を出ようとしたレンは踏み止まり、アシェルの方に振り返る。


「……どうして?」

「また……納める税金が上がったんです。グラント領主の決定で……」

「私たちの経営費ではとても払えなくて……店を畳まざる得ない状況になっていて」

「なるほど……あの好き勝手領主ね〜。息子も複写だしロクでもねえよな」

「このままお父さんの故郷の国に帰るしかなくて。だから……ごめんなさい。レンさんたちのおかげでやってこれたのに……」

「そっか……」


レンはパンが入っている袋をセリナに渡し、今度はレンがアシェルの手を握りお金を手渡す。


「えっ! あの!」

「やっぱ払うわ。おまけ付きでな」

「いや! 私そんなつもりで言ったんじゃ!」

「返されても受け取らねえから。今日は俺が譲らない番だ」


にひっと屈託のない笑顔を見せるレン。そのまま店を出ようとするが、一言こう言った。


「次さ、"最後にここ寄る"から、それまではちゃんと開店しといてくれ」



         ────



次の日、レンとセリナは朝からギルドに向かいある人物、と言うより、あるパーティを訪れた。


「ゼ〜ノラ様〜! 少し話があるんですけど、よろしいですか?」

「レン? こんな朝っぱらからお前の顔なんて見たくねえんだけどな」


露骨に嫌そうな顔を見せる。他のパーティメンバーも同じ反応を示しているが、数人ちらちらとセリナの方へ視線を寄せている。


「そんなこと言わずにねぇ。なーに、大した用件じゃありませんよ」

「……一応聞いといてやるよ」

「今日皆さんが行くAランククエスト──ロードディリティリオサーペントの討伐に俺たちを連れて行ってください」

「「「なっ!!!」」」


ゼノラのパーティメンバー幾人が驚愕の表情を隠しきれていない。レンはその様子を楽しんでいるかのように笑う。


「何を言い出すんだ貴様!」

「そんな難しいことでもないでしょう。連れて行くだけでいいんです。足を引っ張るつもりは毛頭ありません」

「そんな問題は良い! お前みたいな奴を一時的だがパーティに入れる!? それだけで不愉快だ!」

「ロクに戦力にならないお前なんて居ても居なくても一緒──」

「お前ら少し黙れ」


ゼノラの一括で全員が押し黙った。


「何が目的だ?」

「んふふふ。単純ですよ。Aランクに上がるための"長所"が欲しいだけです。訳あって上のランクをずっと目指してましてね……ゼノラ様のパーティに入れば、Aランククエストをクリアしたという功績がつく。そうすれば、少しだけランクアップが楽になると思いましてね」

「ほぅ……」

「Aランククエストの受注できる条件は、"Bランク以上の冒険者"。俺たちは条件をクリアしている。どうでしょう? もちろん、俺たちはクエスト報酬はいりません。何なら、クエスト報酬の3倍の額を皆さんに渡しましょう。山分けでも好きに使ってください」

「さ、3倍!」

「正気か……?」


Aランククエストの報酬は、1ヶ月は何もせず悠々自適に暮らせるほどの金額。


その3倍とレンが言ったことに正気を疑うのも無理はない。


「そんな金お前が持ってんのか?」

「今までのクエスト分の報酬を合わせれば何とかなります。俺たち防具という防具をつけてないでしょ? セリナが倒しちゃうのでいらないんですよね」

「任せてるだけだろ」

「ともかく、どうですかねゼノラ様?」


ゼノラは考える素振りをする中、さっきのように周りは口を出さなかった。


レンは肘を机についたまま、セリナは表情を見せないで待ち続けた。


「……条件がある」


ゼノラが睨むように見て喋る。


「何でしょう?」

「セリナは絶対連れて来い。そして、お前が死ぬような事態に遭遇しても俺たちは助けない。それが条件だ」


レンは笑顔で答えを出す。


「OKです。じゃあ俺たちでギルドの受付には話しておきますんで。行くぞ」

「はい」


レンとセリナは席を立ち受付へと向かう。


「良いんですかゼノラさん?」

「セリナさんはともかく、あんなヘラヘラ笑ってる値の知れない奴を連れてくなんて」

「まあそう言うなよ。俺に考えがある……」


悪い顔を浮かべながら、ゼノラはパーティメンバーに向けて話し始めた。



         ────



「いや〜以外と速く着きましたね〜」


交渉から少し後、レンとセリナはゼノラのパーティメンバーに一時的だが加入することに成功した。


クエスト出発前、保険にとゼノラが腕が立つ3人の冒険者を連れて来て、合計10人のパーティが結成された。


レンの言う通りそれほど場所が遠くはなく、疲労を感じずダンジョンの入り口へと辿り着いた。


「このままダンジョンも楽勝ですかね〜?」

「けっ。呑気な野郎だ。ダンジョン内部には低級モンスターはいねぇ。Cランクモンスター以上だ。このクエストは前に失敗して全滅してるパーティもいると聞いてる。舐めてかかると一瞬であの世行きだ」

「もっと自分の心配をすれば?」

「おやお優しい。でもご心配なく」


レンは両手をセリナの左肩に置いた。


「俺にはとってもとっても優秀なセリナがいるので」




ダンジョン入り口付近、複数のモンスター出現。


その出来事にいち早く反応したのはセリナだった。


「ふっ」


相手に反応させる間すら与えず、音速を超えた拳を振り抜く。


その威力は魔物の顔面を破壊しただけでなく、骸となった魔物の死体を吹き飛ばし背後にいた魔物2体を道連れにした。


身体強化術式に魔力を流し込み、その間だけ全パフォーマンスを底上げする魔法武装(マジックアーツ)


特に珍しい魔法ではなく、冒険者の大半は会得しているであろう魔法。


その力だけで、セリナはBランクにまで昇り詰めた。


「すごいすごーい! やれやれセリナ!」


セリナが鮮やかな拳舞を放っているそっぽで、レンは声援を送るだけで見守っているに徹している。


「あいつ……本当に全部任せてんだな」

「いっそ清々しく思えるな」

「噂は真実だったのか……」

「ちょうど良い。ならどんだけ無様なのか直に見てみるか!」


ゼノラが相手していた魔物をわざとレンの方へ追いやった。


奇怪な金切り声を上げながら近づく魔物。セリナは前方で魔物と格闘しており、こちらに気づいている様子はない。


レンも同じく楽観した笑顔を振りまいている。


ゼノラもそのパーティも迫ってくる魔物を蹴散らしながら、どうなるか行く末を見届けようとしている。


期待しているのは、レンが魔物に八つ裂きにされる様か、そうならなくとも醜く悶える様か。


一人一人異なる想像を浮かべていたが、誰一人的中することはなかった。


「愚弄が」


離れていたはずのセリナが、いつの間にかレンの元へと駆けつけ魔物を蹴り上げ、見惚れる美脚で魔物の体を両断した。


流石の光景にゼノラのパーティは目を疑った。


「あれ? セリナなんでいんの?」

「後ろに魔物がおりまして。もう退治したのでご安心を」

「あほんとだ。皆さんが取り逃した魔物? 意外と抜けてますね〜」


へらへらと笑うレンを他所(よそ)に、さっきまで嘲笑っていた全員の顔が青ざめていた。


「……」


無言の圧力。下衆を見るような淀んだ瞳。セリナの目から発せられる殺意が、Aランク冒険者の精神をも突き刺す。


だがその姿も見惚れるほど美しかった。


「おっ、粗方片付きましたね! じゃあ進みましょうか!」


何故かレンが先陣を切って歩き出す。セリナが隣に寄り添い「レン様。怪我はありませんか?」「だいじょぶだって〜。心配性かよ」と会話する。


「なんかめっちゃ怖かったんですけど……」

「この後、無事に済みますかね……?」

「馬鹿が、ビビってんじゃねえよ。あの女の強さは予想以上だ。だが、それもBランク程度。俺たちAランクには敵わねえ。気持ち切り替えろ。"もうすぐ"なんだからな」

「わ、わかりました」


聞こえない声量で怪しげな話をした後、ゼノラたちはレンたちの後を追って進んでいった。


それからゼノラは何も仕掛けることなく、しばらく順調にダンジョン内部を移動していった。


「ふんふふーんふんふふーん」


未だ先頭はレンが先走っており、鼻歌を鳴らしながら優雅にスキップをしている。そのスピードに合わせてセリナは隣を維持している。


「……」

「……」


ゼノラと一人の仲間はアイコンタクトを取った。


意味は、


「やれ!」「はい!」


仲間は右足前にあるピンポイントの地面を踏んだ。踏み込んだ地面はガコンと音を鳴らし、2cmほど凹んだ。


直後、レンとセリナの地面が元から無かったかのように()き消えた。


「んあ?」

「ん」


声を発した時には既に二人は垂直落下をしていた。


「しゃあああああああああああ!!」

「あっさり引っかかりやがった! ダンジョントラップ様々だぜ!」

「よしお前ら! 出発前言った通りだ! このダンジョン攻略したら目一杯楽しむぞ!」

「「おおー!!」


荒声を轟かせながら、ゼノラ率いるパーティは現れた穴の中へと飛び入った。



         ────



「おっと」


壁を足で削りながら速度を殺して落下していたレンは、地面が見えてくると華麗に着地を決めた。


「ふぅ……結構深いな。うーん。思ったより速かったな」

「くたばれえええええええ!!」


見上げると、ゼノラのパーティの一人が大型のハンマーを振り上げたまま自分と同じように落下してくる姿を捉えた。


「ワオ」


レンは視線を戻し、広いとは言い難い空間の壁の側まで移動した。


ハンマーが地を殴りつける音が聞こえると、その男以外の男が一人、先日レンが美人と言った女性が次々に降りてきた。


「……一応聞くか。これ冗談です?」

「そう思うか?」

「いや全く」

「残念。今日まで生き延びた命もここでおさらばだな」

「なんか恨むようなことしました? 何が目的で?」

「あの女だ。俺たちのパーティが頂いてやるよ」


セリナのことだとすぐわかった。3人とも欲望に満ちた(けだもの)の眼をしている。


「はーん。そゆこと。そっちの二人はともかく……女性のあなたにそんな趣味があったとは」

「んなわけないでしょ。私はゼノラ様から報酬金を頂くわ。たんまりとね」

「前から良い女だと思ってた。ゼノラ様含め全員な。それが……何でか知らんがお前にばっか貼り付いてる。前から気に食わなかった。お前みたいな愚図があんな良い女を好き放題してると思うとな!」

「はは! それはただの勘違いだ。俺とセリナはそんなんじゃないっすよ」

「じゃあ処女か? へへへ……なら尚更欲しくなってきたぜ」

「ガメツイ男は嫌われますよ?」

「うるせえ! こんな状況になっても口の減らねえ野郎だ!」


レンは相変わらずニコニコと笑っているが、"普通のBランク冒険者"ならば、これは非常にまずい状態と馬鹿でも理解できる。


ゼノラのパーティメンバーは全員Aランク冒険者。装備はゼノラの出費もあり、全てが一級品。使う魔法も付け焼刃のなまくらなどではなく、しっかりと洗練され、磨き上げた至高技術。


レンは知らないが、眼前にいる三人の内の一人の男は、ゼノラが後から連れてきた腕利き冒険者の三人。念にはと、セリナを警戒して高い金を払って頼んだ。


町の中で1、2を争う実力の持ち主だった。


「俺たちが事前に知っていたダンジョントラップに引っかかった時点で、お前の運は尽きた! 頼りになる女がいるからって前に出過ぎた自分を恨め!」

「…………」


三人は臨戦体勢に入る。その(まなこ)には確固たる自信が(みなぎ)っていた。負けるなどとんでもない。


勝利を確実のものにし、己の欲望を叶えたくて仕方がない。


そんな三人を見てレンはこう言った。



「まいっか」



         ────



「しあっ!」

「があっ!」


非力そうな見た目からは考えられない威力、そして重さ。


セリナの拳は傷一つ付かず、鉄壁の鎧が乱撃によって砕かれるのみ。


「ひぃ……!」

「ひるむな! 全員で行け!」


ゼノラの指示で4人はセリナを取り囲む。怯えた素振りを見せるも、勇ましい雄叫(おたけ)びを上げながら突撃を仕掛ける。


各々の武器、魔法をフルパワーで行使する。それらはセリナが華麗な跳躍を羽ばたかせたことにより、技と技の同士討ちに終わった。


「ふんっ!」


爆散した空中で豪気な回し蹴りをお見舞いする。風圧を超えた衝撃波が4人を襲い、壁へと叩きつける。


「あくっ……なんで、こんな──」

「こんなことに?」


仲間の一人にボディーブローをかますセリナ。打撃は背後の壁を突き抜け肝臓を破壊した。


「ぐ……ぁ」

「察しが悪すぎる」

「ミリーナ!」

「なんだよこいつ!」

「ゼノラ様! 話が違うじゃないですか!?」


セリナは右腕を引っこ抜き、赤に染まった腕の血を振り払う。


今のセリナに誰も魅惑を感じはしなかった。あったのは、自分もこうなるかもしれない恐怖のみ。


「予定が狂いましたか?」

「は……?」

「その濁りきった薄汚い目。目的は私でしょう。クエストのついで……ダンジョンでならごまかしが効くと思ったのでしょう。それか自分の地位を使って。全く……あなたみたいな者にレン様の手を煩わせる価値はない」

「んだと……この女、誰に向かってそんな口を利いてんだ!」

「腐れ領主の自己中息子、かしら?」

「てめぇえええええええええええええええええええ!!」


魔力を瞬間開放させる。限界を超える速度でセリナを捉えるゼノラ。


しかし、セリナには視えていた。セリナの実力はゼノラの想像の、そのまた想像を超えている。


最早セリナの眼中には敵にすら映っていない。


強力な魔法が込められた拳も安易に避けることができる。


(右腕……わかりやすい)


呆れもない無感情で躱そうとする。直後に首の骨をへし折る、そう頭の中に思い描いた。


しかし、予想しなかった出来事が起きた。



ゼノラの手首が一部セリナの肌に触れた。



(……)


たったそれだけ。相手を低く見たセリナが油断していた距離感の誤認。


しかし、気に止めるほどのアクシデントではない。


この後の動きに支障を来たす物でも、そもそもアクシデントと名付ける物でもない──が、



「私に触れるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



認識した途端、セリナは豹変した。思い描いた像など吐き捨て、ゼノラの首元をあり得ない握力で掴み放り投げた。


「ぐげっ!」

「ゼ、ゼノラ様!」

「なんて馬鹿力だよ……」

「わ……私の……私の私の私の私の肌に……」


先の展開がなければ、ゼノラの命はとうに失われていたが、ゼノラは幸運か死に至るダメージは無かった。


「貴様……殺してやる! まずその(あか)(まみ)れた腕をもぎ取る!」

「な、なんだこの女っ……」

「急に激情しやがって!」

五月蝿(うるさ)い無象が……今のは断じて許すことはできない! 私の肌に触れたな! 私の肌に触れて良いのは、今までもこれからもレン様のみ!! そして私の裸体を見て良いのもレン様だけだ!!!」



ドゴオオオン!!!



突如セリナの背後の岩壁が砕け散った。


「ん、なんか空いてる空間に出た?」


そこから現れた人物は、レンただ一人だった。


「レン様!」

「おお〜セリナじゃん。いたいた。深く落とされただけで意外と近かったな」

「な、え……はっ!? 何でお前がここに!?」

「あの3人はどうし──」


パーティメンバーの一人が疑問を投げかけると同時、違う仲間の一人は妙な違和感に気づいた。


レンが手にしている一本の"曲刀"。湾刀とも呼ばれる刀剣。


その刀身に付着しているのは、濃くドロドロした人間の血液。量が多すぎて元の刀身の色が一切わからない。


そしてこう思った。


(あれ? ……あいつあんなの持ってたか?)


その思考も投げかける言葉も、その後に続くことは無かった。



「おーしまい」



ゼノラ以外の3人のメンバーの首が飛んだ。


どちゃどちゃどちゃと、宙に舞った生首が連続で地に転がり盛大な血飛沫を舞い上げる。


「……………は?」

「楽勝楽勝〜。さてと、シメないとね〜」

「レン様。こんなゴミ私が始末しますよ」

「いいよ〜。問題ない」


曲刀を下げたレンが、ゆっくりと床に撒き散らかされた血溜まりを踏みつけながらゼノラに歩み寄る。


「ま、まままままままままま、待って! 待って待って待って待って待って待って待って! 待ってください! お願いします!」

「めっちゃ喋りますねゼノラ様〜」

「すみませんでした! こ、こんなことするつもりはなかったんです! あいつらが、あいつらがやりましょうって言うから……」

「敬語気持ち悪〜い」

「……もしかして……あの3人は」

「殺したけど?」


ゼノラの顔から血の気が引けていく。


「おおおおおお願いします! どうか、どうか命だけはお助けください! 金が欲しいのであればいくらでも渡します! 装備も武器も全部──」



「やだ」



2文字で断るレン。涙を垂れ流すゼノラを見て"嗤い"ながら、続けた。


「違うんすよゼノラ様。自分を責めちゃ駄目ですよ? "こうなることは決まってたんですよ"」

「……はい?」

「あーもういいか。どうせ誰も知らないし。ゼノラ様、実は────」


漆黒がレンとセリナを覆い隠す。そしてテレビの画面が急に暗転するように、およそ1秒の時間でまた姿を見せた。



ゼノラの目の前にいたのは──黒装束に身を包んだ二人だった。



「俺ら、"暗殺者(アサシン)"でした」



…………沈黙が(ほとばし)る。


レン一世一代の謎解きは、驚愕しすぎて声も出せないゼノラのあられもない顔で幕を閉じた。


そんなレンだが、相手が聞いてる聞いてない構わず、愉快に喋り始める。


「ひひひひひひっ。わかる? ア・サ・シ・ン。暗殺者(あんさつしゃ)、まあ殺し屋でもいいや。今日ここに来た口実もぜーんぶ嘘。あんたを殺せればそれで良かった。いやね、うちの組織にさぁ、依頼した人がいるんだよね。ある町の領主が好きほーだいやってくれちゃっててさ、自分の都合の悪いこととか(しゃく)に触ったこととか無理矢理改竄(かいざん)するとかさ。あーあれだあれ。悪徳領主(あくとくりょうしゅ)って奴か。おまけにその息子も同レベルの奴らしくて、困ってるから助けてーと言われたんだって」

「……」

「その人、中々金払いが良くて引き受けたらしいんだよ。で、その依頼に俺らが選ばれた。めんどくさかったけど命令されたんでね、ちゃーんと"ここまで来た"。ホントに大変でしたよ〜。とりあえず目指したのはBランク以上になること。あんたらパーティは高いランクのクエストしか受けないからさ、同等のレベルまで上がるしかなかった。組織の力でランクを即上げもできたけど、怪しまれるんでね。まあ、セリナのおかげで楽はできたけどww」


ぐるぐるぐるぐると、突然の出来事で頭がついていけず地に座ったままのゼノラの周囲を回っている。


「そして今日チャンスが来た! あんたらのパーティ全員がセリナを欲情した目付きで見てたのは知ってた。他のパーティも同じもんか? だから、事前にギルドが保有してるダンジョンの仮地図を拝借したりとか、何かしてくるかな〜と思ってわざと前を歩いたりとか、一応準備して向かった。アシェルのパンが食べられなくなるって言うから、少し早めにしたんだけど、いや〜うまくいって良かった良かった!」


他人が聞いたら間違いなく激怒する煽り口調。


ようやく状況が理解し始めたゼノラも例外ではない。


「ここでゼノラ様を殺せば、ダンジョン内だし問題なし! あ、でも宝とか見つけに来る奴いるのか? まー後処理班に任せれば大丈夫っしょ! でその後に悪玉領主をずばーんと成敗! 1日に二人も死んで怪しむかもしれないけど、二人ともクズだし別に良いよね──」


レンのにやけた顔を盛り上がった地面がレンを左右から潰そうとした──が、セリナがレンを抱えて飛び出したため不発に終わった。


レンが曲刀を壁に突き刺し、セリナに抱かれながら足をつける。


「おほっ♡。地面を操る魔法? 派手だね〜」

「ぁああああああああああああああああああ!! 耳障りだ! ごちゃごちゃうるせえんだよ!」

「態度の切り替えすご〜。ごちゃごちゃ喋ってたのは否定しないけど」

「ようはあれだろ? 俺はお前の掌で踊らされてたってわけか? テメェみたいな愚図に……ああああ! 考えるだけでムカつく! ムカついてムカついて仕方ねえ!!」

「血圧上がりますよ〜」

「殺されるくらいなら、ぶち殺してやる!」


ゼノラは正気ではない。これは狂乱の状態だ。


ゼノラはそこまでパーティメンバーと仲が良いわけではなかった。


元々町にいた冒険者、他町や他国から来た冒険者を高い金で雇ってパーティにいれた。仲間もゼノラを良い金払いの雇い主と思っていたのが大半。


しかしそれでも長いこと同じ仲間でいれば、情という物は少しばかりか湧いてくる。


恐ろしく強い魔物を連携して倒した時には、互いに抱き合って喜んだこともあった。


それが一人、たった一人の気に食わない不気味な子供に全員殺された。


まともな判断ができないのも無理はない。この時のゼノラは頭から抜けていた。


勝てる賞賛があるか否か──を。


「潰れろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ゼノラは自身が保有する魔法の中で一番得意な魔法を行使する。


術式に魔力を通し、空間の地平を器用に組み換えレンを殺そうとする。


「おーおーすげーすげー! パーティの中じゃ一番弱いと思ってたんですけど、意外とやりますね〜」


消えることのない笑みを作りながら、レンは襲いかかる大地の群れを躱し続け、そして曲刀で斬り裂き道を開く。


「でも荒さが目立つ。魔力を無駄に使ってないすか?」

「黙れクソガキ! その口もさっさと利けなくしてやる! 俺は負けねえぞ……俺はゼノラだ! この町の領主の息子! ゼノラ=ラスファームだああああああ──」


「だから?」


ピッ。


「──あ?」

「叫ぶ言葉くらい、選べなかったんですか?」


聞こえてきた声はゼノラの背後からだった。


レンは曲刀はくるくると振り回している。ゼノラは魔法を発動しようとしたが、できなかった。


何度術式に魔力を通しても同じだった。何かおかしいと感じると、自分が地面から少し浮いていることに気づいた。


キョロキョロ四方八方を見渡す。そこでまたわかったことは、視界全てが薄い白色に染まっていることだった。


「な……んだ?」

「"分断しました"」

「は……? ぶ、分……断?」

「ええ。この曲刀はもちろんただの剣ではありません。俺の、"唯一の魔法"。今ゼノラ様は、俺とセリナのいる空間とは別の空間にいます。さっきぱぱっと、この曲刀でゼノラ様の周囲空間──正確に言えば、横50cm、縦40cm、高さ185cmの直方体に合わせて斬り取りました」

「…………」

「ははっ。わかんないっすよね。その方が良い……」


レンは自分の開けた手の指を少し曲げる。すると、薄らと見えるゼノラを取り囲んだ直方体が少し縮んだ。


また少し曲げると、また少し縮みゼノラは頭をぶつけた。


「なんだ……どんどん狭くなってねえか?」

「俺の剣は空間を分断する。言えば、俺が分断した空間自体は俺が操れる。さあ、さよならです」


レンがゆっくり……ゆっくりと右手を握り拳へと変えていく。その途中、不幸にもゼノラは気づいてしまった。


「っ! おい待て! やめろ! やめてくれ!」

「ああ……土壇場で察しが良い人だ。同情しますよ」


その時レンは──"笑っていた"。


とても同情しているような顔に見えることはなかった。


「待て、助け」


ぐしゃ。


ゼノラは四方から押しつぶされ、圧死した。


「ミッションコンプリート」


ゼノラの肉体は直方体の肉塊となり原型を止めていない。レンが分断した空間に隙間などなく、血や臓物が地面を汚すことはなかった。


「よし終わり〜。この過程自体はそこまで酷なことじゃなかったな」

「お疲れ様です。レン様」

「セリナ〜大変だったな。美人過ぎるのも困ったもんだね〜」

「これからどうしますか?」

「ん? そりゃ決まってるでしょ。俺らは暗殺者(アサシン)だけど、今この時はまだ冒険者。報酬も貰えるし、もうちょい体を動かしたいから──」


「ダンジョンボスを討伐しよう♪」



         ────



ロードディリティリオサーペント。


ディリティリオサーペントという魔物の上位種。端的に言えば、全ての潜在能力が強化されたディリティリオサーペント。


尻尾の先から頭の先端まで、見るからに毒々しい紫色をしているのが一番の特徴。そのサイズは巨人(ギガント)を超える。


その皮膚は恐ろしく硬く、熟練の冒険者ですら傷一つ付けられないのが殆どで、Aランク冒険者数人が一斉攻撃を成しダメージを与えられるほど。


獰猛な牙から溢れ出る毒の体液は致死性。仮に掠った程度の傷だったとしても、皮膚から浸透し血液に至り即死させる──まさにディリティリオサーペントの(ロード)である。


町にこの魔物を倒せる"パーティ"はいなかった。ゼノラのパーティはこのクエストを受けたが、本人でさえ100%勝てるとは言い切ることができなかった。


まして、


「おかしな話だよな」


"個人"でこの怪物を倒すなど、異例である。


だが成し遂げた。レンという、"暗殺者(アサシン)"は。


曲刀で胴体を一閃すれば、防御を無視して斬り裂けた。


曲刀で空間ごと分断すれば、全が(おのの)く獰猛な毒牙は無為と化した。


鼓膜を破る逆鱗の断末魔は、轟く間もなく無音に絶った。


(人間業ではない)


側近のセリナでさえそう抱く所業。


レンはこう語っている。


「俺は"凡才"だ」


「通常、魔法を使う人は二つ以上の魔法を習得できるはずなんだ。なぜなら基礎魔法も魔法として含まれるから」


「セリナの身体強化魔法、軽く照らすだけの灯の魔法、飲み水には困らない小水の魔法、火種程度の火魔法。これらぜーんぶ地味だけど、歴とした"魔法"だ」


「役には立つだろう。しかも術式構造は単純も単純。5歳くらいだったら誰でも作れる術式。でも、"俺はできなかった"。成し遂げられたのはこの曲刀(魔法)だけ。それ以外の魔法はからっきし」


「あーあ笑っちゃうおどけ話だね~。でもおかしなことにさ──」



「"俺より強い奴いないんだよね"」



「これ聞いた奴確実に怒りそww。でも仕方がない。誰もだーれも俺に勝てたことがない。俺は間違いなく凡才なのに。まあ、世界を知らないだけの可能性もある。いつか会えるかもな」


「俺より強い奴いないかな~」


かつてセリナにだけ語った小話。レンは既に忘れている。


(あなたは……私の全てです)



         ────



セリナが初めてレンと会ったのは、故郷の村が壊滅したすぐの時だった。


大型魔物の襲撃。村を守護する門番や大人たちは歯が立たず、一方的に村を蹂躙していった。


家は焼け、人は死に、聞こえてきたのは村の住人の悲鳴のみ。


セリナの両親もすぐに殺され、次は自分の番だと悟った時、白馬の王子が現れた。


「荒らしたな〜。予想外だこりゃ。近くにいたなんて情報聞いてねえぞ?」


熊よりも太い首を一刀振るだけで魔物の首は弾き飛んだ。死体には見向きもせず、頭をぽりぽりと掻いていた。


白馬の王子、というのは比喩ではない。本当にセリナはそう感じていた。


感じた時は、レンが一人生き残ったであろうセリナを見かけた時だ。


「お? 生き残りいんじゃん。運が良かったね〜。他全員殺されてるけど。あれ? 俺より背高くね?」


沈黙しているセリナに一方的に話しかけるレン。セリナはそこで気づいた。


(私を見る目が……違う)


内心、セリナは村の人々や両親が殺されたことに、悲しみを感じなかった。むしろ死んで清々していた。


いつも自分を見ている瞳が気持ち悪くて仕方がなかった。


村を歩けば全身を至近距離で見られている感覚に襲われ、外出を嫌いになった。


父親は自分が寝ている時、体を触ってくる時があった。不愉快で殴りたくなる衝動を抑えるのに必死だった。


村を逃げ出すことも考えたが、行く宛も一人で生きていく力もないセリナは、ここでおとなしく生きるしかなかった。


だから魔物の襲撃は青天の霹靂だった。


死ぬのは怖いが、こんな生きるのが苦でしかない(世界)なら、死ぬ方がマシだと思っていた。


そして現れた王子──救い人。この時初めて、セリナは運命の出会いはあるのだと確信した。


欲望に塗れた薄汚い瞳とは全く違う。人を人として見ている瞳。


レンがセリナに話しかけているのは単なる気まぐれ。意味も目的もなく、彼女を助ける気なんてこれっぽっちもなかった。


しかしセリナにはそんなこと関係ない。認識した事実のみが、セリナにとっての(よろこ)びだった。


「あ、あの!」

「んぁ?」


興奮して胸の高鳴りが収まらず、レンの手に触れ言い放った。



「私を犯してください」



数秒の沈黙。


「………………は?」


おどけていたレンは拍子抜けし、ぽかんと体をフリーズさせた。流石に今の発言を予想してはなかったようだ。


セリナも何故こんなことを言ってるのか自身でもわからなかった。でも言いたくなってしまった。


(あぁ……♡ もっと……もっと私に触れて欲しい)


自分から触って欲しいなどと思ったのは生まれて初めてだった。体温が上がり続ける。


その顔に触れたい。抱きついて欲しい。体を好き放題にめちゃくちゃにして欲しい。


セリナの思考は混乱してしまっていた。


「ぷっ」


そんな時、止まっていたレンが笑い始めた。


「ハハっ。ハハハハハハハハハッ! アハハ! アーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


高笑いが長く続いた。そんなレンの姿もセリナは愛おしそうに見つめる。


「ヒヒヒヒッ! マジかよお前ww。初対面の言葉がそれかよ。俺もイカれてるけど、お前も相当イかれてんな」


レンはしゃがみ込み、地面に尻を付いているセリナに目線を合わせる。


「なあ? 名前なんて言うの?」


両親にも村の住人にも発したことない声量で告げた。


「"ユマン"です」



         ────



レンはダンジョン攻略後、すぐに冒険者ギルドへは帰らなかった。"寄り道"をして、帰ったのは2日後の昼時だった。


凱旋1日前の朝方、領主のグラント=ラスファームが邸宅で四肢がばらばらの死体で発見された。


殺した人物は不明。痕跡は何一つ見つからなかった。町の人々は突然の凶報に驚愕した。


ある二人を除いて……。




「はいこれ」

「これは……っ!」


レンとセリナが冒険者ギルドに顔を出した時は、室内がざわめきで溢れ返った。


レンを侮蔑する者は存在しなかった。ただ、「何故?」という疑問が全員の頭を支配していた。


「ロードディリティリオサーペントの牙。嘘だと思うなら鑑定屋に見せれば? 大きさも付着してる毒液も普通のディリティリオサーペントの物じゃないとわかるはずだ」

「い、いえ……私でもわかります。これは……本物です。て……ことは……」

「それは良かった! 話が早くて助かる! じゃあクエスト完了というとこで! 報酬をよろしくお願いしま〜す!」

「ちょっと待てレン!」


レンにはもう聞き慣れた怒号。ラントがずけずけとレンの元へと立ち寄り胸倉を掴む。


「ラント〜。お前はいつも怒ってばっかだな〜。俺の前でだけ?」

「話を(そら)すな! 今日いきなり帰って来たのは何故だ!? もう2日も経ってんだぞ!?」

「おいおいおい。苦戦に苦戦を強いられてやっとの想いでクエストクリアした俺たちに、最初の言葉がそれ〜? もっとあるでしょぉ? 胴上げしてくれても良いよ?」

「ふざけんな! ゼノラさんたちはどうした!」

「あーそれ聞いちゃうか〜。無念だったよ。ロードディリティリオサーペントに対して善戦はしていた。正直油断してたかな。背後からの尻尾の攻撃に気づけなかった。吹っ飛ばされてそこから酷かった。ああ、悲しくて話すのが辛いよ」


嘘である。レンは捏造を淡々と悲劇のヒロインのように熱く語る。


「全員丸呑みさ。死体も残らない。ゼノラ様は勇敢に最後まで戦ったよ。後一歩! 後一歩の所まで追い詰めていた! 俺はゼノラ様が繋いでくれた希望を果たすため、刃を振るった! そして見事──倒すことができた…………はい終わり。満足?」


これで満足できる者など鼻から居やしなかった。


むしろ火に油を注いでしまった。


「んな話信じられるか! テメェがダンジョンボスを倒した? はあ!? 頭イカれちまったのか!!」

「え〜。事実を言っただけだけどな〜」

「それなら何でこんな遅く帰ってきた!? どう考えてもお前とセリナさんだけが生き残ったなんて無理がある! それに……昨日は領主が何者かに殺された! お前がダンジョンに行ってる時、その息子のゼノラ様も死んだ! おかしくないと考える方が異常──」

「なあラント」


「お前結局何が言いたいの?」


初めて聞いた冷徹な声。レンが普段発する声のトーンとは、あまりにも低すぎた。


「な、何を……?」

「ああそうだ。何をだ。お前の目的がわからんなぁ〜。なぁに? 探偵ごっこでもしたいの? え?」

「そんなわけ」

「意識的にないとしても心の奥底にはあるかもね〜。その感情は珍しくない。あるよねあるよね〜。でもさ、"それ得すんの"?」


レンはラントの両腕を掴む。力はもうそれほど入っておらず簡単に胸倉から引き剥がせた。


「領主が死んでどう思った? 悲しんだか? そうは見えない。ゼノラ様が死んで悲しんだか? またそうも見えない。俺には逆の感情が垣間見えるぞ〜? 喜怒哀楽の"()"だ。ラント=ガーレイ──お前も苦しみの例外者じゃないはずだが?」


レンが両腕を掴む力が強くなった。


「領主の横暴を甘んじて受け入れてたか? 払う税金が増えて苛立ちを一瞬たりとも感じなかったか? 短い期間だが、お前がやたらと冒険者クエストを必要以上に受けてたと思うんだがな〜。俺の勘違いか?」

「いや……」

「お前だけじゃない。他も一緒さ。町を歩いてて悪口を吐いてる奴なんて珍しくもない。良かったじゃないか! "死後の朗報を聞いただろ"? 信用できる人だ。町は生まれ変わる! みんなハッピーハッピーじゃないか!」


あはははと、レンの軽快な微笑みがギルド中に響き渡る。皆は心底を不気味さを味わった。


中には、人が死んだのに何故そんな笑っていられるんだ、と思う者もいた。


「でもそうだなぁ……お前の心にある良心が俺を犯人だと決めつけているのか。人殺しは許さない正義感。実に素晴らしいねぇ〜。じゃあ仮に俺がグラント領主とゼノラ様を殺したとしよう。それをお前は突き止めようとする。でもなラント、その労働力は無意味だ。誰か望んでいるのか? "もう得ている利益はあるのに何故そんな無駄なことをする"?」

「あ……」


ラントは何も言えなかった。レンが握っている腕の力を強くしたのも気づかない。


「まあ、仮の仮にお前がグラント領主の隠し子で、昔愛情深く育てられゼノラ()からも可愛がられてたから、怒りに燃えてるってんなら気持ちはわからなくないがなぁ〜。違うだろ? どんでん返しのフィクション小説じゃあるまいし。変な妄想を浮かべる必要はない。病原菌が消滅しただけさ。生活が豊かになる、神の幸福が与えられたとでも思えば良い」


レンはラントの腕から手を離す。その後別れを告げる親友のように抱きつき、耳元で囁いた。


「俺は町を出る。詮索は無用だ。幸せは……捨てたくないだろ?」



         ────



「うぃ〜す」

「あ、レンさん! セリナさん! 来てくれたんですね!」

「もっちろ〜ん。言ったじゃん来るって」


レンとセリナはアシェルのパン屋に来ていた。無論、約束を果たすためである。


「お! 新作のパンだした? いいね〜これも買おっと。そいや噂で聞いたよ。店畳むのやめたんだって?」

「はい! お二人ともご存知ですよね。グラント領主が昨日亡くなったこと。その知らせのすぐ後に、弟のルーカス様が次の領主になると声をあげたんです! て……ごめんなさい。なんか……人の死を喜んでるみたいで……悪い子ですね私」

「そんなそんなとんでもない。アシェルより心の綺麗な奴なんて滅多にいるもんじゃないよ〜? そう思うのも当然さ。悪いのは全部領主様だ。周囲から嫌われることを進んで実行してたんだ。天罰だよ天罰。重く考えるな」


色とりどりのパンを観察し選びながらアシェルに助言する。レンの言葉にアシェルの心は軽くなった。


「ありがとうございます。ルーカス様は人望も高く、私も含め慕う人も多かったです。だから本当に嬉しかった。税金も下げられ、困っている者には支援までしてくださると。お父さんも喜んでいました」

「そりゃ良かった。万々歳万々歳!」


レンとセリナはそれぞれのパンを選び、アシェルに袋に入れてもらった(代金を払おうとしたがまたもや止められた)。


「お二人とも。またいらしてくださいね。おいしいパンはいつでもありますから」

「……なあアシェル」

「はい?」

「俺ら、もう来ないんだ」


空気が静まり返る。笑顔を向けていたアシェルの表情が曇る。


いつも通り陽気な笑顔を見せてまた来てくれると思って送り出すつもりだった。声が僅かに震えていた。


「ど、どうしてですか……?」

「覚えてない? 来るとは言ったよ。でも、"最後"って付け加えてたんだけど、忘れた? 町を出ることにしたんだよ俺ら」

「り、理由は?」

「用事が終わって、そのまた用事ができたんだ。だから出ていく。冒険者ギルドは安堵するかな。嫌われ者がいなくなるんだし」

「そんな……せ、せっかくまたできるのに! また……レンさんたちに食べてもらいたかったのに……」

「ごめんな。俺も心苦しいよ。親父さんにも言っておいて」


他所から来た人が町を出ていくのは珍しいことではない。冒険者ならよくあることだ。


それでも、アシェルは少し間を開け、鼻を啜った後目を赤くしてレンの方を向いた。


「また来てください。最後なんて言わないで。レンさんたちがいなきゃ、私はお父さんともうここにはいませんでした。恩人である二人を私は忘れません。もっとおいしいパンを作って待ってます。いつでも歓迎してますから」

「……わかった。じゃあ俺からも──」


いつかありし光景。レンはアシェルの方に向き直り、近づく。


レンが顔を近づけ始めると、アシェルの頬は言葉通りの真っ赤に染まった。


どうしてか不明だが、アシェルが目を(つぶ)った。しかしレンは耳元に口を囁く。


「"リベル"」

「……ふぇ! ん、あ、え……リベル?」

「そう。俺の名前。レンじゃないんだ。本当の名前は、リベル」

「リベル……さん」

「にししし。特別だぜ。誰にも言っちゃ駄目だ。それを守ってくれたら、いつかまたここに来る。約束しよう」


そう言うレン──リベルの顔は、いつもと変わらない笑顔だった。



         ────



「良いんですか? 本当の名前をおっしゃって」

「特別サービスさ。問題ないでしょ。アシェルは良い子だ。確かにさよならは言いたくないね。俺もまたパン食べたいし」

「わかりました。……万が一、万が一アシェルが漏らしてしまったら?」

「ん? そりゃね──」



「対処しないとね〜」



聞いているのはセリナのみ。一番身近にいるセリナでさえ、今の言葉の奥の意味はわからなかった。


「さてー。行かなきゃ。なあ"ユマン"?」

「……久しぶりにその名前を聞きました」

「町出たんだから偽名は終わりだ。そうだろ?」

「はい。"リベル"様」


冒険者としての仮の姿を捨て、暗殺者(アサシン)での素に戻る。


彼は笑い、側の彼女はただ隣をついて行く────













余談。


時は遡り、リベルの寄り道の出来事。時刻は真夜中。領主の邸宅へと赴き誰かと会話をしている。


「これで良い?」

「はい……ありがとうございました」


お礼を言う男の前にはリベルの姿が。そしてリベルの前にいる男──グラント=ラスファームは、見るも無惨な死体と成り果てていた。


気品があり落ち着いた雰囲気を感じられる礼を言った人物こそ、ルーカス=ラスファーム。領主の弟であり、その領主暗殺を依頼した張本人である。


「いやー助かったよ。あんたの手回しで楽に仕事ができた。どうもね」

「いえ。依頼してきたのはこちらの方です。手を尽くすには限度はありません」

「そっ。しっかしね〜。俺が言うのもなんだが、実の兄を殺して欲しいって、なかなかやべぇこと言ってると思うけど」

「……こうするしかなかったんです。兄の領主としての振る舞いは度を超えていた。私なりに努力はしてきました。でも、現領主である兄には逆らえなかった……町の人々の声を聞くのが苦痛なんてあってはならなかった! だから……こうするしかなかった。情けない限りです」

「ふ〜ん。それで、あんたの家の総資産額の半分も使って。金額見た時にはどひゃ〜! て驚愕したよ」

「確実に成し遂げるためです。あなたの組織から、そうすれば一番優秀な部下を送る、隠蔽工作も全て手伝うと。そう言われたんです。"『斬人(ざんにん)』"」


曲刀を肩に担いでいるリベル。またの名を『斬人』。5人にしか与えられていないセカンドネームの一人。


依頼するには巨額の金が。しかしどんな暗殺も完璧にこなす。


リベルは5人の中で最も秀でた暗殺者(アサシン)だった。


「そーですか。でも俺じゃなくても良かったと思うな〜。他にも『肆腕(しわん)』、『剛躯(ごうく)』、『絶拒ぜっきょ』、『凍世(とうせ)』のセカンド連中はいたし。何よりそんな大金を注ぎ込む必要なかったんじゃない? 絶対ボスうまく誘導させたな。下っ端の暗殺者(アサシン)で十分務まったよ」


軽々に喋るリベル。同業者の情報漏洩(ろうえい)は禁句だが、問題ないとリベルは判断した。


金を受け取った以上、もうこの男に用はない。喋ればすぐに殺せば良い。そう考えていた。


もっとも、ルーカスもなんとなく感じていた。下手をすれば殺される。


リベルが思っているようなことをするつもりは毛頭なかった。


「まあでも、俺としちゃ取り分が増えるからオールオッケーだけど。うまい飯でも食おっかな~」

「あの……ひとついいですか?」

「どうぞ~」

「先ほどまでいた女性の方。あの人とあなたで『斬人』なのですか?」

「いや違うけど。いっつも付いてくる"駒"だよ。それもとってもと~っても便利な駒ね。それがどうかした?」

「……あのダンジョンのボス。ロードディリティリオサーペントは二人で倒したのですか?」

「俺単独だけど」


さらっと言いのけるリベルに息を飲むルーカス。その言葉には妙な納得感が存在していた。


(化け物だ……これ以上関わってはいけない)


ロクに剣を握ったことがなくてもわかるリベルの異様。町中でのレンとはまるで異なるオーラ、存在感。


表社会の裏で生きる人間。暗殺者(アサシン)


今となっては遅いし後悔もないが、この時一瞬だけ、「自分はとんでもない人物に手を差し出してしまったのか」、と自問した。


虚無(きょむ)栄誉(えいよ)


気づいた時には部屋の窓が開いていた。リベルは窓際に立ち、涼しい夜風が入り込み髪を揺らす。


淡い月明かりが意図してリベルを照らしているようだった。


「基本理念らしい。勇者の如く寛大な栄誉は得られない。どうしようが、どれだけこなそうが、俺たちは虚無のまま。讃えられるなと思い上がるな、世界からすれば"悪"と変わらない。ただ実行する──」


この記憶は、ルーカスの頭に一生残り続ける。奥深く張った根は根絶されない。


「またなんかあったらどうぞ。仕事はちゃんとこなす。『虚栄(きょえい)』の名の下に。なんてね」


外から来る緩やかな風が突如吹き荒れた。ルーカスは反射で目を瞑ってしまう。


次に目を開けた時には、リベルの姿はなかった。まるで神隠しにあったように。


今まで話していた少年は、夜の霊が見せた幻ではないかと考えるルーカス。


決してそんなことはあるはずがない。顔前にある死体が物語っていた………………。



どうも坂田リンです。今回で短編2つ目です。前にLoster&Little Girlという短編を出したんですけど、今回のAssassinと同じ世界線です。この短編に出てくるキャラ、リベル、ユマンが2つの短編のクロスオーバー作品"King Road"に出ています。全話上げているのでまた、是非読んでみてください。

いやー短編2つ書いて思ったのは、話をまとめるのがむずい! 週間少年ジャンプの読み切りみたいにしたいなーとか思ってたんですけど、むずいったらむずい。尊敬しますまじで。面白いと思ったら、評価、感想、ブックマークをよろしくお願いします。

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