end.
闇が広がる。
光すらも飲み込む、漆黒の闇が。
世界を飲み込んでゆく。
目の前に立つかつての親友は、その闇よりも深い憎悪を瞳に宿しこちらを見つめていた。
「おそかったね―――ユーリ」
そう。何もかもが遅かった。
この世界を救うこともできず、友の中に渦巻く闇にすらも気づくことができなかった。
勇者の末裔などともてはやされ、自分ならばすべてを救えると思いあがっていた。
その結果が、この世界の終末だった。
「・・・見ない間に、随分と大所帯になったじゃないか」
なんてことのない日常の風景を思い出させるような彼の雰囲気がさらにその
不気味さを助長させる。
後ろに立つ仲間たちの中にも、彼を知る人物は少なくない。小柄な少女も、その一人だった。
「ミリヤ・・・どうして」
少女の言葉に、彼は答えない。
ただ一瞬、穏やかな笑みをうかべ、すぐに元の表情へと戻ってしまった。
「終わりにしよう、ユーリ。僕 と 君の、この長きにおける戦いを」
彼―――魔王は冷淡にそう告げた。
後悔も、迷いもなく。
彼―――勇者は答えない。
聖剣を握る手は震え、その表情は絶望に満ちていた。
静寂が包む。
どうしてこうなってしまったのだろう。
いつ道を違えたのだろう。
彼の言葉に武器を構えない勇者をかばうように、エルフの少女が、ドワーフの戦士が、魔導士が立ちふさがる。
そして、そのことごとくを、魔王は意に返さない。
まるで羽虫を払うようになでるような手つきで、英傑たちを葬っていく。
「やめろ・・・」
勇者の目の前で、獣人の男が腹を裂かれる。
「やめろ・・・!」
双子の鳥人の首が跳ねる。
「やめろおおおおお!!!!!!」
聖剣を握り、蹂躙を繰り返す魔王めがけて振り下ろす。
不意を突いたはずの一撃を魔王は難なく受け止め口の端を歪める。
そこに、かつての友の面影はなく、正しく魔王となった怪物の姿があった。
剣を交える度に、脳裏をよぎる。
まだ何も知らない無垢で無知であったあの頃を。
自身の運命なんて気にする必要もなかった、彼らとの日々を。
だが、もう元には戻らない。
過ぎ去った時間は巻き戻ることはなく、散っていった命は終末を見届けることなく朽ちていく。
ああ、しかし、願うなら。
愚かなこの身で、一度だけ願うなら。
どうか―――あの日々をもう一度・・・。
朽ちていく勇者の願いを、聞き届ける者はいなかった。
しかし、唯一そのつぶやきを聞いた魔王はかつての親友をかけた静かに手を見つめ、自嘲するように笑った。
「ああ、そうだね・・・あの日々に戻れたら、どれだけいいか」
死にゆく中で最後に目にしたのは、闇に飲まれる彼の背中と、それに手を伸ばす少女の姿だった。




