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9.

 野々ちゃんと遊ぶ約束は果たしたものの、芹菜との関係も切れることは無かった。ちょっと意外なことに、最近はこちらから話をしなくても、この日にまた来てもいいかと野々ちゃんから聞かれるようになった。引き続きメイクについて教えてるんだけど、積極的に質問してくるようになってる。いい傾向だ。こちらとしてもいつもより反応が貰えるのでありがたいし、人にメイクするのは楽しい。あれこれ聞いてくる野々ちゃんが妹のような感覚で、同級生よりも距離が縮まっている気がする。イゼリアの友達が彼女しかいないせいだろうけど。


 舞い上がっちゃってるのか出費が激しいのは考えもので、バイトに入る日が増えてるのは仕方ないことだ。今日も放課後のバイトで元気にイゼリアをやっていた、のだが。


「いらっしゃいませ! お嬢さ、ま?」


 思わず疑問形になってしまい、慌てていつもの営業スマイルに戻す。

 な、なんでここに野々ちゃんが? ボク、バイト先教えたこと無かったよね? それに兎にも角にも節約! な野々ちゃんがメイド喫茶に来るなんて思いもしなかった。もしかしてからかいに来たとか?


「さあ先輩! ここがメイド喫茶ですよ! そして生イゼリアちゃんです!!」


 そう言ったのは、初めて野々ちゃんに会った時に来てた後輩の子。他にももう1人星花生が一緒にいて、こちらも見覚えがある。


「こんにちは、よく来てくれたね。さ、席に案内するよ」


 何これ、なんか恥ずかしいんだけど。面白がってからかいに来たのかな? 

 表情の読めない野々ちゃんの様子を不自然にならない程度にチラチラと見ながら、カフェの説明をする。

 後輩ちゃん経由でボクがここにいることを知ったとして、ボクと時々会う関係であることを隠しているのは野々ちゃん。こういう場で会う事は絶対避けると思ってた。

 ……無理やり後輩ちゃんに連れてこられた、って考えるのが1番しっくりくるけど。ただでさえお金を使うメイドカフェに、無理やりとはいえ連れてこられる。ちょっと腑に落ちないかも。

 少しして、野々ちゃんたちのテーブルへ注文をとりにいく。野々ちゃんは予想通り、メニューの中では1番安いドリンクを、後の2人はパフェを1つずつ。


「あ、あとこの子、イゼリアさんとチェキ撮りたいそうです〜」


 えっ、野々ちゃんが? 写真くらい仕事じゃなきゃいくらでも……


「うぇっ? わ、私はそんなこと一言もっ」

「まあまあ、後輩ちゃんはともかくわたしは先輩だしお金持ちなので〜。いつも通り気にしないで奢られるといいわぁ。ふふ」


 あー、よく見たらもう1人の方は高等部の1年生みたい。それにしても2人ともすっごいニヤニヤしながら野々ちゃんを見てる。遊ばれてるんだなぁ。やっぱり、2人に無理やり連れてこられたのかも。


「奢り、ですか。それならまあ、お願いします」


 ああ言えば野々ちゃんが断らないって分かってるみたい。

 会った時は隣を歩いてるんだから、写真を撮るくらいでそんなに顔を赤くしなくても良いのに。


「さ、こっちに来て! うさ耳とネコ耳カチューシャ、どっちがいい?」

「ど、どちらでも……」


 ふむ。野々ちゃんが付けるなら……


「ネコ耳の方が似合いそう。ボクもお揃いね!」


 自分の頭に被せた後、何故か固まったままの野々ちゃんにもネコ耳カチューシャを付ける。うん、可愛い。


「じゃあ撮ろっか。ここに並ぼう」


 あれ、そういえば。SNSにあげなければ良いんだろうけど、2人で写真撮ったこと無いんだっけ。なんとなく撮っちゃいけないのかなって……ううん、それもあるんだけど、今までイゼリアでいる時は1人で撮るのが当然だったから、撮ろうと思ってすらいなかったかも?

 パシャリ、というシャッター音とフラッシュの光で、一気に思考を現実に戻される。


「チェキは後でお渡しするから、それまで席で待っててね」


 カチューシャを受け取りながら、こっそり耳打ちする。


「次遊ぶ時は、プリ撮りにいこうね」

「ひゃ、はい!」


 小走りで席へと戻っていく野々ちゃん。

 やっぱり、なんか今日は変?

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