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8.

「先輩! これってやっぱり野々先輩ですよね? 最近イゼリアの投稿に映ってる!」

「え」


 それはイゼリアさんと初めて遊びに行った日の写真でした。SNSにあげていいかと聞かれましたが、自分の顔が写っていないのならとその時は返事をしました。そしてその後どんな写真をあげたのか、スマホを持たない私が知るはずもありません。

 興奮気味の後輩に見せられて初めて見ました。約束通り顔は写っておらず、せいぜい洋服と、髪や指先がチラッと見える程度。個人を特定できる要素はありません。


「まさか」

「だって髪型同じだし、先輩が用事あるって言ってた日だし!」

「珍しい髪型じゃないでしょう。用事はありましたがこの場所に行くとは言ってませんよ」

「でも! なんかこれ先輩っぽい!」


 たったこれだけで私だと言い張る彼女の勘が鋭さには感心ですが、決定的な証拠とは言えないでしょう。なにより、


「この写真、こんな高そうな服私が持ってるわけないじゃないですか」

「うー、それはそうですけどぉ〜」


 実際借りただけですし、自分が買うことはありません。あれから数回イゼリアさんと会っています。その度にメイクから始まり、いろんな服を着るのは正直疲れますが、イゼリアさんに出会わなければ絶対に着ることの無かった服に触れることのない化粧品の数々。最近は良い経験をさせてもらっているのだと思っています。


「先輩じゃないにしても、とにかくこの人羨ましい〜」


 写真こそ見る機会は無かったものの、SNSの反応については本人に聞かされていました。私に対して誰なのか、羨ましい、顔を見たい等のコメントが寄せられているようです。イゼリアさんのことはよく知りません。だけど不特定多数に見られているイゼリアさんを私だけが独占しているような気分です。実際、イゼリアさんには今まで一緒に遊ぶ友だちなんかいなかったと言われたことがあるので、その通りなのかもしれません。本人も言っていましたが、私が特別のような感じがして、少し嬉しいです。まあ、反応が良くなったことに対してイゼリアさんは複雑そうでしたが。


「ねえ先輩、やっぱり今度一緒にメイドカフェ行きましょ? 先輩にもっとイゼリアの魅力を知って欲しいです!」

「十分あなたから聞きましたよ。それに」


 それに沢山お金を使うのは……と言いかけて、踏みとどまりました。最初は一方的な誘い方だったけど、その後も遊んでご飯を食べさせてもらったのは事実です。それにイゼリアさんのメイド姿……遊ぶ仲になった今となっては、少しだけ見てみたい気もします。


「お金がーって言うんでしょ分かってます!」

「いえ、行ってみましょうか」

「ぅえっ!? 先輩がメイドカフェに??」

「なんですか誘ってきたくせに。別に気が変わったのなら私は」

「いえ!! 行きます! 全力でみんな誘います!!」


 どうしたんでしょうね、私。今まで奢ってもらって、そのお返しをしようなんて考えたことなかったのに。お金がたくさん消える場所だと分かっていて、行こうだなんて。なんだか、変です。

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