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7.

 今日はいよいよ野々ちゃんとショッピングに行く日。イゼリアとしてだけどね。でも今までこの格好で誰かと遊んだことって考えたら初めてだ。芹菜として会った時、スキンケアとメイク用品を結構な数渡したけど、どうだろう。自分が使わないからって渡したからか、スキンケアに関してはちゃんと使ってくれてるみたいだけど、メイク用品はあれからどうなったのか……。ポーチは持ってきてるし、嫌がる風じゃ無ければ合流してからメイクするのも良いかも。人にするのって楽しいし。それに、嵩張るからパニエは無いけど、実は野々ちゃんに似合いそうなワンピース、持ってきたんだよね。どんな格好をして来るか分かんないけど、ボクの隣を歩くからにはとにかく可愛くしてもらわないと!!


 集合場所は、初めて会った動物公園。時間は5分前だけど、もしかしていない?

 あの子、スマホ持ってないんだよね。こういう時ちゃんと来るか不安になるけど、すっぽかすことは、しない子だと思ってる。数回会っただけなんだけど。

 このボクを待たせるなんて贅沢モノめ!


「遅く、なりました……!」

「野々ちゃん! まだ2分前だし、気にしないで。それより……!」


 少し息を弾ませた野々の顔をついまじまじと見つめる。


「変、でしょうか……? 一応、なんとか母に合格をもらってきたんですけど」

「ううん! 可愛いよ!」


 今のボクは芹菜じゃないので、ちゃんと使ってくれたんだとは言えないけど。野々はちゃんとメイクをして来てくれた。嬉しい。


「昨日母にもう一度教えてもらいながらやっとここまでできました。そう言ってもらえて嬉しいです」

「うん、このボクに可愛いって言われるなんてラッキーだよ。じゃあ、これに着替えて」

「はい?」

「ボクはゴスロリだから、野々には甘ロリ系のワンピースを持ってきたんだ!」

「……高そうですね」

「そりゃまあ、それなりに?」


 可愛いとか、これを着るのはちょっと……みたいな反応が普通だと思うんだけど。

 お金気にする辺りこれが野々ちゃんらしい反応なのかな。


「よし、完璧だね。さあ行こう!」

「すごく、目立ちませんか、これ」

「その為の服でしょ?」

「はぁ」

「大丈夫! 似合ってるから。ボクの隣を歩くのにさっきの格好の方が浮いちゃうよ」

「そう、ですか」


 少しほっぺが赤くなってる。満更でもない感じ? うんうん、良い傾向だね! ボクと同じような格好をしろなんて言わない。まあ、仲間がいたら楽しいけどさ。女の子を楽しまないと勿体ないんだから。

 ショッピングモールへと移動し、モール内へと入ると洋服のお店をぐるりと回る。いろんなジャンルの服を、とにかくたくさん着てみる。それだけでも十分に楽しい。いつもはイゼリアとして来ても1人だし、ロリータ系のお店しか見ないけど、今日は野々ちゃんもいるからね。いろんな服を着て自分がどんなのが好きか、似合うのかを感じてもらわなきゃ。まあ、メイク次第でどんな服でも似合うと思うけどね。


「け、桁が違う……」


 値札を見ては驚きの声をあげる野々ちゃん。それ、疲れないかな。もっと気楽に楽しくやればいいのに。

 ひと通り見てまわって明らかに疲れた顔を横目に見ながらお腹を摩る。お腹空いてきたな。


「お昼、何がいい?」

「そうですね。イゼリアさんは?」

「うーん、和食が好きだけど。野々が食べたいならガッツリお肉でも!」


 スタイルを維持するのは大変なことだけど、たまーになら食べすぎちゃっても大丈夫でしょ。


「和食で、お願いします」


 ……と、言いつつ野々ちゃんの返事にホッとして、何度か入ったことのある定食のお店に入った。

 焼き魚がメインの、煮物とお味噌汁もついた定食が運ばれる。ゆっくりと食べ進めつつ、どのお店が気に入ったか、どんな洋服が良かったかを話す。優しい味とまったりとした空間に満足し、温かいお茶を啜る。同じくらいのタイミングで野々ちゃんも食べ終わったみたいだ。


「食べ方、綺麗ですね」

「そう?」

「はい。ご飯粒も残ってませんし、お魚も綺麗に骨だけです。誰かと一緒だと大抵私は1番時間がかかるのですが、同じくらいだということはイゼリアさんはよく噛んでいるということですね。良いことです。ちょっと意外でした」


 珍しく凄い褒めてくれるなぁ。でも最後の一言はどういうことかな。


「意外ってどういう意味?」

「無駄遣いばかりしているので、ご飯の食べ方も……と」


 それは聞き捨てならないなぁ。


「高い洋服もメイク用品も、スキンケアだって全部無駄遣いじゃないからね! ……それにね、この格好をしている以上ボクはお姫様なの。だから綺麗に食べるのは当たり前なんだよ」

「なるほど。それは失礼しました。誰にでも出来ることではありません。とても素敵な心がけだと思います」


 う……。そんなに褒められると流石に恥ずかしいんだけど。

 野々ちゃんは今まで見た中で1番優しい顔をしてて、悔しいけどその顔がすごく可愛く見えた。

ご飯食べ終わった時の会話がお気に入りです

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