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4.

「よく来るの? ここ」


 いつもより少し大人しめのメイクとワンピースを着たボクは、数日ぶりに再会する。

 隣に並んで声をかけると、彼女の肩にかかる髪がふわりと揺れた。

 振り向いたが、特に驚く様子もなく返ってくる。


「えぇ、まあ。また来たんですね」

「今度こそ楽しむ為に来たんだ。君、前回もこの猿山のとこにいたよね?」


 タイミングが良いのかな。


「お気に入りなので」

「なんで休日に制服なの?」


 多分、ボク程じゃないけど、動物公園で制服って、なかなかに目立つと思うよ。まあ気にしてたら来ないだろうし言わないけどさ。


「部活の収集がいつあるか分からないですから」


 部活か。あれ、もしかしてこの間のって、


「前に先輩って呼ばれてたけど、友達とかじゃなくて部活の後輩ってこと?」

「ああ、そうですよ」

「ふーん……なんか、勿体ないことしてるね」

「とても有意義な時間を過ごしていますが?」


 友達、いないのかな。星花、中高一貫だよ? 中等部で友達いないって、先のこと考えるときついのでは?

 ボクには関係ないことだけど。


「新しい服を見に行ったり、化粧品を買ったりさぁ。中等部なら確かにお金に限りはあるかもだけど、それでも同じくらいの頃はしょっちゅうウィンドウショッピングしてたよ?」


 余計なお世話だけど、もっとこう、あるじゃない。年頃の女の子らしい遊びが。


「ここには暇なんじゃなくて、この子たちを見るのが好きで、来たくて来てるんです。物欲が増えるとお金が貯まらないじゃないですか。服は最低限着回せれば結構。メイクは社会人になってからで十分です」


 普通その歳で、そこまでお金を貯める為に固執するかなぁ。


「興味、無いの?」

「無いですね」


 はっきり言うじゃん。そこまで言われると、メイクも洋服も大好きなボクとしては、いかに楽しいか教えてあげたくなっちゃうなー。


「ねえ、名前教えてよ」

「人に尋ねる時はまず自分からでは? ……矢ノ原野々です」

「ボクは身バレが困るからイゼリアとだけ名乗っておく。君はボクのこと知らないみたいだけど、結構有名人なんだからね」

「この間後輩が教えてくれましたよ。私自身はスマホを持ってないので知らなかったんですが」

「えーっ!?」


 スマホを、持ってない? それでどうやって生きてくの? まだ中等部の子だから……でも近頃は物騒だし、星花に通うくらいの家の子なら持ってるのが普通だと思うけど。


「びっくり……あ、そうだ、今度一緒に遊ばない? お姉さんがショッピングの楽しさを教えてあげよう! ご飯くらい奢るよ」


 我ながらいい案では? 身バレは困るけどイゼリアの時だって友達の一人くらい居てもいいじゃない。今まで考えたことも無かったけど。この子は素材が良いからメイクしたら絶対もっと可愛くなるし、ロリータの道を勧められるかも。


「やっぱり、歳上なんですね。奢りなら良いですけど。暇なんですか?」

「まさか! 学校もアルバイトもあるし、配信だってしたいし、結構忙しいんだよ? ボクが人と遊ぶなんてすっごくレアなんだから光栄に思ってよね! うーんと、二週間後の日曜日、とか大丈夫?」


 やっぱり1日遊びたいし、かといって土日は稼ぎ時だからアルバイトも結構入れてて。だいぶ日にちは限られてきちゃうけど。


「分かりました。それで、集合は?」


 そっか、後で連絡が出来ないんだっけ。


「じゃあ、10時に……ここ?」

「それで大丈夫です」

「おっけー、楽しみにしてるよ! ボクと並んで歩くんだから可愛くしてきてよね! じゃ!」


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