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3.

「使わなくなった物や、壊れてしまった物があれば是非ボランティア部で引き取らせてくださーい!」


 今日も、私はボランティア部員として放課後の部活動中です。


 不要品を引き取り、恵まれない方や校内でも使ってくれそうな場所へ届ける、実に有意義な部活動です。もう使えないと思う物でも、誰かが必要としている可能性はあります。例えば短くなってしまった鉛筆も、ボロボロになったタオルだって、まだまだ使い方次第で活躍できるんです。


 どんな物にも感謝して、最後の最後まで使うべき。この部活をしていて本当に良かったのは、実際に不要品として集まる物はほとんどがまだまだ使える物ばかりで、引き取り先のない物はその恩恵を私自身が受けていることです。紐じい思いをしているわけではありません。ちゃんと年相応に……いえ、それ以上にお小遣いをもらっています。ですが、お金は使わずに貯めるに越したことないのです。1円の無駄遣いもしたくない。そうして無駄なく生活して、通帳の残高を眺めることが、私の楽しみでもあります。


「今日は全然ですねー」

「ま、そんなもんでしょ。あ、それより矢ノ原先輩! 聞いてくださいよ」

「なんですか? まだ部活中ですよ」

「もう、このくらい良いじゃないですかぁ。この間先輩が来られなかった日、みんなでメイド喫茶に行ったんですよ!」


 メイド喫茶なんて、近くにあることも知りませんでした。ただでさえ外で食べるのはお金がかかるのに、メイド喫茶なんて。どれくらいのお金が飛んでいくのか想像もできません。


「確か入るだけでお金を取られるシステムだったような。よくそんなところにお金を使えますね。普通のカフェじゃダメだったんですか? まあ、カフェだって高いものばかりですが」

「いやいや、そんなに全部否定しないでくださいよぅ! そ・れ・に! ただのメイド喫茶じゃないんです! イゼリアがいるんですから!!」

「イゼリア? その名前、最近聞きましたね」


 はて。どこで聞いたんでしたっけ。


「そうそうびっくりしたんだよ! この間野々先輩に会いに行ったら隣にいたんだから!」

「え! マジ!?」

「大マジだよ。ニコって笑ってくれてもう、ほんっと幸せだった!」

「うわ〜いいなー! メイドイゼリアも可愛かったけどそれ、プライベートってことでしょ?」 

「そんなに有名な人なんですか?」

「そうですよ! あんな有名人が近所にいるってだけでもう凄くて! 見てくださいこれ!」


 しまった。こうなると彼女はお喋りが止まりません。まだ部活中なのに。

 興奮した様子でスマホを取り出した後輩に見せられたのは、確かにこの間見た少女の写真でした。


「この辺りで知らない人はあまりいないですよ。こうやってたくさんSNSにアップしてて、よくカフェに行った写真なんかもあげてるんですけど、知ってる場所も多くて」

「イゼリアが来た場所らしいって、その後にお客さんが増えることもあるそうです。何より、噂ではこの学校に通ってるとか……」

「そうそう! ファンとしてはすっごく気になっちゃうよね。もしかして今の人かも、なんて」

「見ればすぐに分かるでしょうに」


私の偏見かもしれませんが、そういう有名な人のオーラというものは簡単に隠せそうもないというか。なんとなく、そういうイメージがあります。


「それが、イゼリアってメイクの技術がすごいんですよ。もちろんすっぴんなんて見たこと無いんですけど。メイクは輪郭とか目の大きさとか、鼻の形だって変えられるんですよ。たまにメイク講座みたいなことを配信でしてくれるんですけど、それもごく一部だし最初からってわけじゃないし……つまり、見てすぐ分かるかどうかも分からないんです」

「そういうものなんですか?」

「そういうものです!!」


 えっへん、と胸を張って答えた後輩は、このあとイゼリアさんが使っているらしいという化粧品の説明をし始めたのですが、興味のない私には何を言っているのかさっぱり分からず、聞き流す他ありませんでした。


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