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11.

「あれ、野々ちゃん?」


 メイクを落とし、スキンケアを終えてホッとひと息ついているところへ、野々ちゃんがやってきた。こんな時間に来るのは初めてだ。


「夜分にすみません。今夜はこちらで寝かせて貰えませんか?」


 イゼリアより先に芹菜で再会することになるとは。先日バイト先に来たことがすごく気になるんだけど。ここ何日かは私のバイトや野々ちゃんの部活があり、放課後も会っていなかった。芹菜で会ってもあれがなんだったのか聞けないじゃないですか。


「もちろん構いませんが。どうしたんです?」


 断る理由も無いので部屋へ招き入れると、うんざりした顔でため息をついた。


「ルームメイトに彼女ができたとかで……」

「あー、追い出された、と。こっちは反対に相手の部屋に泊まってるから私しかいないんですよ」


 あるあるだよね、お互い寮生の星花カップルお泊まり会。私自身は経験が無いけど。寮生だと親の目がない。女の子同士だからお泊まりもスキンシップも友達だって言えば良いし、まあ、そもそも理解のあるご両親も多いと思う。


「追い出されはしたけど、目の前でイチャイチャされても困るのでここに来て良かったです」

「うん、困った時は遠慮せずに来てもらって構いませんよ」


 そういうのって対応に困りますよね。よく分かります。


「そう言ってもらえるとありがたいです。もう寝るところですか?」

「ううん、もう少し起きてるつもり」

「そうですか」


 抱えている枕で見えていなかったけど、本も持ってきてたみたい。よく見ると恋愛漫画?


「野々ちゃんってそういうの読むの?」


  意外だなんて思うのは、ちょっと失礼かな。


「興味があったわけじゃないんですけど。借りた、というか押し付けられたんですよ、たくさん。サッサと読んで返してしまいたいので、持ってきました」

「そうなんだ」


 押し付けられたのに、律儀にちゃんと読んでから返すんだ。そういうところ可愛いよね。


「部員のお姉さんが漫画研究部らしくて、この本はその部誌らしいです。なんでも生徒会に目をつけられてて、しょっちゅう部誌が販売停止になる中、この3冊は日の目を全く見ず部外に出回ってなっ……!?」


 言いながら軽くパラッと冊子を捲った野々ちゃんが、次の瞬間勢いよく閉じた。わぁ、一気に耳まで顔が真っ赤だ。なるほど、そういうアレですか。生徒会も口を出さずにいられないほどの。その反応は逆にちょっと中身が気になりますが。


「と、ところで芹菜先輩には、そういうお相手はいないんですか?」


 誤魔化した。


「漫画を読んで恋愛に興味を持ちました?」

「えっと。まあ? 人の恋バナを聞く楽しさはなんとなく分かったというか」


 恋バナのネタを私は持ち合わせてはいないですけどね。恋愛してる時間なんて無いって思ってたし、野々ちゃんと同じく興味もあんまり持ったことがないです。


「残念ながらお相手はいませんし、恋愛経験もないですよ、私。すみません」

「いえ、先輩の好きな人の話を聞きたくて聞いたわけじゃない……ので。こちらこそ変なこと聞いて申し訳ないです」


 まあそうだよね。話の流れでそうなっただけだもん。


「別に気にしてないけど、野々ちゃんは恋人いないの?」

「いないですね。お金を貯める方が楽しいと思いますし」


 野々ちゃんらしい。人の恋バナを聞いたからって、自分がそういう経験をしたいって思うかはまた別問題だよね。そもそもそういう人がいたら私のところになんて来るわけないし。


「じゃあ、欲しいとは思わないんだ。好きな人とか気になる人がいたり」

「気になる人、という言い方だといるかもしれないです、ね」

「良いねえ青いねぇ〜。どんな人ですか?」


 自分が恋愛するのは相変わらず想像出来ないけど、そういう人がいるって聞くだけでもワクワクするもんなんだね。


「なんですかその反応。どんな人と言われると……変な人、ですかね」

「えー、なにそれ」

「だから、好きとかではなく気になる人と言ったでしょう……この部屋、温めすぎじゃないですか? ほら、こんなに上げたら電気代がどれだけかかるか。今くらいの気温なら付けなくて大丈夫です」


 再び強引に話を変えた野々ちゃんがリモコンを探しだし、エアコンを切る。遠慮が無いよなぁ。気を遣われるよりずっと良いし、別に構わないんだけどさ


「結構寒くない……?」

「くっついて寝れば温かいですよ」


 まあ、それもそうか。少し眠くなってきた私は深く考えず、ベッドに入ることにした。


「じゃあ、私はそろそろ寝ますね。明日は学校がありませんが、ゆっくりもしていられないので。ふわぁ」


 明日はイゼリアになって野々ちゃんとお出かけです。と言ってものんびりランチをする予定なのでお昼からですが、イゼリアの準備には時間がかかりますし、道具はほとんど実家にあるので1度帰らないといけないんです。


「確かに、くっつくと温かいんですね。いつもこうしてるんですか?」


 本を読むのは諦めたらしく、電気を消してから野々ちゃんが同じベッドに入ってくる。布団の中だというのもあるけど、野々ちゃんがあったかくてポカポカだ。


「いえ。ルームメイトとは、仲が悪いというわけではないんですが干渉もあまりしないので」

「そっかぁ〜」


 こっちも似たようなものかな。


「……芹菜先輩って」

「ん?」

「いえ、なんでもないです。おやすみなさい」

「おやすみ〜」


 頭で思っているより、体は疲れていたらしい。暗くなった部屋と、隣にある温もりのおかげで、私はすぐ眠りについた。

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