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1.

「芹菜ちゃん、またきなこ豆乳飲んでる〜」


 昼休みになり、昼食の前にきなこ豆乳を勢いよく飲む。意識してたくさん飲んでるけど、胸が大きくなる気配はない。やっぱりか、という感じ。これは由々しき問題です。現在16歳ですがまだまだ……!


 私は、この星花女子学園に通う高等部2年生です。桜花寮という寮でルームメイトの女の子と2人で暮らしています。寮のルールで、ネット通販の利用は寮母さんを通って生徒へ届けられることになっているのですが、私は寮生の中でもかなりヘビーユーザーだと思います。きなこ豆乳もまだまだ、箱買いした物があるのです。飲食物や生活必需品は基本的にネットで済ませています。


「よく飽きないね? 重いと大変だよ。でもそんなに大きくなりたいなら、わたしが揉んであげようか?」


 後ろから伸びてきた怪しい動きをする手をペチンと叩く。


「遠慮しておきます。そうやってあなたは大きくなったの?」

「いや、別に?」


 背中に友人の柔らかいものを感じながら自分を見下ろす。


「くっ」


 何度見てもまごうことなき絶壁。いろんな噂を信じて試しているけど成果は得られず。かといって身長も小さなままで。やはり私の成長は止まってしまったのでしょうか。彼女は何もしていないのにこの大きさだなんて、神様はやはり不平等です。


「2人とも! 今日発売のアイシャドウ、一緒に買いに行かない?」


 お弁当箱を片手にやってきた友人に、そういえば気になってた物があったんだよな、と思い出す。

 3人で昼食を摂りながら、放課後の話に花を咲かせます。


「おっ、いいね〜。駅前のお店に行く?」

「あー、私、今日はバイトを入れてて……」

「そっかー。でも、期間限定とかじゃないし、急いで買わなくてもいいから行ける日に一緒に行こう?」

「それはもちろん。明日なら、バイトはお休みですので」

「じゃあ明日行こう! あー、またいろいろ買っちゃいそうだな」


 あれもこれも、と欲しいメイク談義を始める友人たちに自分の気持ちも高揚するのを自覚しつつ、グッと拳を作る。もうすぐクリスマスコフレ……いろいろなブランドがクリスマス限定の物や定番商品の詰め合わせ等が販売し、メイク好きには欠かせないシーズン。早いところは予約や販売が行われていて既に金欠気味ですが、まだまだ狙っている物がたくさんあるので、無駄遣い出来ないのです。

 私の趣味はメイクや美容の研究。新しい商品は次々と発売され、どんな風に自分のメイクに取り入れるかを考え組み合わせ、顔を作る。お金はかかるけど、楽しくてやめられないんです。自分で稼いだお金だから親も何も言わないし。


「ねえ、そろそろ教えてくれても良いんじゃない? 芹菜のバイト先」

「それ! すごく気になるんだけど!」

「来られると恥ずかしいですから。それにヒントを出したでしょう?」

「飲食店ってだけじゃ曖昧過ぎるって! 私たちだって相談していろんなところに行ってみたんだよ?」


 知ってますよ、だって、うちに来たこともありますからね。でも、絶対に見つかるわけがないんです。絶対、ですよ?


 ⭐︎


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 放課後、アルバイトに勤しむボクの元に、今日もたくさんの人がやって来る。自意識過剰とかじゃないんだよ。本当に、ボクに会いに来てくれるんだから。


「わー! 本当にイゼリアだ! 可愛い〜」


 あ、星花の子たちだ。


「ありがとう! さ、席まで案内するよ」


 イゼリアというのは、ボクのネットでの名前。メイド喫茶でバイトする時も、本名を隠すためにこの名前で働いている。平日は放課後の3時間ほどしか働けないけど、それでもメイド喫茶だけあって、高校生アルバイトにしては結構な額をいただいてると思う。何よりイゼリアとしてここで働くことが楽しくて仕方ない。

 ルームメイトがいる桜花寮生の芹菜では、正体を隠してイゼリアで活動することが難しい部分もある。1日遊びに出かけられる土日はいいとして、それまでの5日間芹菜として学校用のナチュラルメイクしか出来ないのが、ボクとしては物足りないのです! 

 シェーディングとハイライトをガッツリと入れて顔の形を変え、アイライナーやビューラー、マスカラを駆使して目の大きさを変え、ウィッグも付けて派手な髪色になった姿。声も気持ちトーン高めに、ハキハキと喋っているのも芹菜とは違う、もう一人のボクであるイゼリアも大好きなんだ。


 ⭐︎


「野々ちゃんも来れば良かったのにねぇ」

「今日はご両親とお食事だって言ってたし、次は一緒に来れると良いですね」

「私、今度イゼリアを見せてあげようっと」

「先輩、携帯持ってないですもんね」

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