光の雨は、しとしとと6
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午前の講義が行われている間にユイナは昼食を済ませる事にした。当然ながら昼休憩前の食堂に生徒の姿はなく、厨房の女性達がまるで戦場のようにキリキリと働いていた。全生徒の食事を準備するのは並大抵の労力ではないのだろう。野菜を切り分ける音や調味料を混ぜる音が飛んで来る。忙しそうで声をかけるのも気が引けるが、さっさと昼食を終えないと他の生徒達が押し寄せてしまう。
「すいません」
ユイナが注文に行くと、一人の女性が注文場に出て来た。
「いらっしゃいませ」
「あの……日替わり定食をおねがいします」
「かしこまりました」
女性は恭しく頭を下げ、注文内容を厨房へと伝える。彼女を含めて厨房で働いているのはすべて平民だ。平民と言っても、貴族の食事を用意するために舞姫学校への入場を許された高職と呼ばれる存在だ。貴族の食事を作るという事でノノルの街に定住している品行方正な女性から選ばれる。夜の掃除婦も高職になるので、本来なら素性の知れていないユイナ達は参加できないはずだが、そのあたりは代役を依頼してきたギブリー婆さんの手回しがあったに違いない。
食事が出てくるのを待つ間、テキパキと動く女性達を眺めた。
自分もあんな風に料理が作れたら誰かに喜んでもらえるのだろうか。
いや、特に誰と決めている訳ではないけど……。
食堂の献立は、朝や昼だとパン、サラダ、スープが中心だが、夕食はもっと大変で煮込み料理や炒め料理などの火を使った料理が出てくる。それは料理に使う焚火を利用し、大量の湯を沸かして大浴場に流すためなのだとサマンサ教頭が教えてくれた。昨夜、夜更けの誰もいない浴場を利用したが、広くてゆったりとしていた。湯はぬるくなっていたけど、肩まで浸かっているとまるで包まれているような安心感があり、銀狼に包まれて眠った夜を思い出した。
「どうぞ」
食堂の女性に声をかけられて背筋が伸びる。
「ありがとうございます」
頭を下げると、女性に驚かれた。それには気付かない振りをして席で食事をとった。
昼休憩が始まる頃に食事を終えたユイナは、生徒達が食堂に集まってくる前に自室へと引き上げた。そしてゆっくりと休んだ後、昼休憩の終わりを告げる鐘の音を聞いて自室を後にした。
日傘を差して学生寮を出ると、午後の講義を受けるために校舎へと入っていく生徒達の姿が見えた。その最後尾に気付かれないように付いていこうとした時だった。学生寮の隣にハサミの看板を掲げる美容室があるのだが、その陰で背伸びをしていた白衣のおじさんと目が合った。ユイナは文字通り飛び上がった。
「ちょっとぉ、どうしてそんなに驚くのよ。取って食ったりしないから安心して」
化粧を施した顔で笑いかけてくるが、得体の知れない恐怖に体が硬直してしまう。
腕を組んで黒髪をしげしげと眺めていたおじさんは、立てた親指を横にして校舎の方に向ける。
「ゆっくりしていていいの? もうすぐ講義が始まるわよ?」
彼の言う通りだった。遅れるのはまずい。
「し、失礼します」
「時間がある時にいらっしゃい。私なら貴女をもっと美しくできるわ」
誘いから逃げるようにして、歴史学が行われる一年二組の教室へと向かった。
視線を感じる。しかも、一つや二つではない。
初めて教室を訪れたユイナは、最前列のど真ん中に陣取っていた。いや、ギリギリに来た時にはそこしか空いていなくて、座らざるを得なかったと言うべきか。
カラーンラーン、カラーンラーン。
鐘の音とともに初老の女性が入室してきた。彼女は、ユイナの黒髪に気付いて足を止めたが、澄まし顔をつくって教壇へと上った。生徒全員が立ち、教師を見詰めたまま「よろしくお願いします」と言い、着席した。頭を下げないのがロートニア式の挨拶らしかった。
「それでは王国史の講義を――」
教師の言葉が不意に止まるので気付いた。ユイナの右隣の生徒が(じ・こ・し・よ・う・か・い)と口を動かしている。
コホン、と教師が咳払い。
「見慣れない顔がありますし、自己紹介をしてもらいましょう」
どうぞ、と促してくる。全員の視線が集まるのを感じた。しぶしぶ立ち上がる。
「はじめまして。ユイナ・ファーレンです。よろしくお願いします」
簡素に名乗って着席すると、「それだけ?」と教師に問われた。
「詳しい事は聞かないでください。数ヶ月の在学ですので」
数ヶ月どころか今すぐにでも帰りたいぐらいだった。
自分の意志で入学した訳ではない。行かされたと思っている。それに、ロートニア舞踏大会の出場まで仕組まれていた。
「数ヶ月……?」
彼女は詳細を知らないのか聞き返してきた。
「それはどういう事かしら? せっかく転入してきたのに?」
ユイナは静かに教師を見上げた。
「私からは答えられません。詳しい事は校長に聞いてください」
「そ、そう……」
教師は勘繰るような目をしていたが、何も答える気がないユイナに、肩をすくめて教科書を開いた。
「前回まではロゼッタ舞姫の生い立ちについて学びましたね。今日からはその続きとなる、舞姫としてどのようにロートニアを導いていったのかを、学んでいきましょう――」
ちらちらと見下ろしてくる視線を前髪越しに感じた。
教師は掲げた教科書の影からこっそりと見ているつもりのようだが、視線に敏感なユイナには分かる。生徒に音読させている間も、右に移動してチラリ。左に移動してチラリ。
角度を変えて盗み見されるのは気持ちの良いものではない。
おまけに、両隣の生徒からも視線を感じる。それどころか、早口で音読を終わらせようとする生徒や、ページが変わっても紙をめくる音がしない事からして、教室中の視線が集まっているに違いなかった。
どうにも居心地が悪い。
令嬢達から注目されるなんて……。
シルバート王国の舞姫学校『セフィル』では、“平民上がりの魔力中毒者”として最後尾の壁際に追いやられていたし、嫌悪されていた。シルバート王国には強固な身分制度がある事、魔力中毒者に対して偏見がある事、決して納得はできないが理解はしていた。
それに比べ『ノノル』の生徒に嫌悪はない。ユイナの素性を知らないにしても、魔力中毒を連想させる黒髪に対して嫌がるどころか興味を持たれているのが不思議だった。考えてみれば宿屋の老夫婦だけでなく、港街の人々も珍しがるだけで嫌悪感はなかった。少なくとも、黒色=魔力中毒とはならないようだ。
国によって人々の認識も違うのかもしれなかった。
「ねぇ、どこからいらしたの?」
「どうして髪を染めているの?」
王国史の教師が部屋を出て小休憩になるなり十人ぐらいの生徒に囲まれて質問攻めされた。そのたびにユイナは謝った。
「すいません。詳しい事情は話せないんです」
彼女達は困惑を隠しきれない様子だったが、その中の一人が核心を突く質問を投げかけて来た。
「舞踏大会の十人目が貴女だという噂があるけど、本当なの?」
「ええ、まぁ、そうです」
肯定するしかなかった。
嘘をついても掲示板を見ればすぐに分かる事だ。
「それじゃあ、大会に出場するために来たの?」
「……そうなりますね」
「なんだ、もっと深い事情があるのかと思ったわ」
皆もそう思ったよね、とリーダー格の令嬢が同意を求めると皆が同様にうなずいた。それきり興味がなくなったのか、ユイナから離れてそれぞれの輪を作り、放課後のお茶会について話を始めた。数ヶ月しかいない人と交流を深める気もないのだろう。かくいうユイナも同じなので深く考えないで済んだ。今は友達の来る夜が待ち遠しい。近況も聞きたいし、アレスの事も――
「ユイナ」
呼ばれて顔を上げる。声の主を探して視線を動かすと、教室の戸口で三姉妹の長女カノンが手招きしていた。同い年なのに教室に姿がなかったので、おそらく一組に属しているのだろう。
「どうしたのですか?」
廊下に出ると次女シノンと三女セノンもいた。
「今日の放課後、合同練習に参加するでしょ?」
カノンの問いに、え、と言葉を詰まらせる。
「私は……」
「出ないの? 部屋にこもっていてもつまらないだけでしょう」
「そう言われましても……」
「見てみたいのよ。貴女の踊りを」
カノンはやさしく微笑んだ。しかし、瞳の奥に挑むような光を感じた。
「急にどうしたのですか」
「どうしたとは?」
「いえ、なんだか……」
説明できない違和感にどもっていると、廊下の向こうからサマンサ教頭が近づいてくる。彼女はこちらに気付くなり歩調を早めた。
「三人とも、もうすぐ講義ですよ」
背後から声をかけられた三姉妹はゆっくりと振り返る。
「先生」と、カノン。シノンが詰め寄る。
「どうしてユイナを同じ組にしてくれなかったのですか?」
「人数的には二組に入ってもらうのが妥当だったからですよ」
「もしかして、何か隠そうとしていませんよね?」
「そんな訳ないでしょう。いいから行きますよ」
サマンサ教頭が話を終わらせると、三姉妹を一組の教室へと促した。仕方なく従う三姉妹の中で三女セノンがちらりと視線を寄越した。
三姉妹は何かに感づいているのかもしれない。しかし、それが何か見当もつかなかった。
その日の夜。ユイナは星空の下にいた。と言っても、周囲を校舎や壁に囲まれているので、見える星空はほんのわずかだ。宿屋の屋上のように広い夜空が見渡せるわけではない。
地面に置いたランタンの灯りがぼんやりとあたりを照らしている。ユイナは学校指定の練習着姿で、正門近くにある花壇の縁に座っていた。まだかまだかと待っていると、ランタンを手にした守衛がやってきて、正門の脇にある鉄扉の前に立った。そこは高職の平民が入るための出入り口だ。大人が一人通れるだけの細い扉となっている。守衛は鉄扉の向こうにいる人といくつかやり取りした後、鍵を開けた。そして、入校してくる女性を数えていく。彼女達が帰る時に人数確認と持ち物検査をするのだ。
平民の扉をくぐってきた女性達がこちらに気付き、近付いてくる。ユイナは立ち上がって掃除婦の一行を迎えた。
「こんばんは」
「へぇぇー。ただ者じゃないとは思っていたけど、まさか貴族の仲間入りをするとはねぇ」
掃除のリーダーをしている女性が、ユイナの練習着姿を上から下までしげしげと眺めた。校章が刺繍された半袖に、下は七分のスカートとなっており、制服よりも動きやすい。
ユイナは人差し指を口の前に立てる。
「あの、内緒でお願いします。街で言い触らす事もしないでください」
「わかっているわよ。でも、知ってる人は知ってるわよ」
「ユイさん!」
「ユイナ!」
コルフェ、ルーア、ミアの三人が駆け寄ってくる。数日ぶりに会えたのがうれしくて、お互いに手を合わせあった。
「みんな! 元気にしていた?」
「元気だよ。ユイさんは?」
「もちろん元気」
見送られた時も泣いてしまったので心配かけたはずだ。せっかく会えた友達の前で落ち込む姿は見せられない。
「ユイさん、忘れないうちに渡しておくね」
コルフェがバッグを開いて封筒を取り出した。
「ペントから手紙だよ」
「ペントから?」
「長文らしいから『一人になった時に読んで』って言っていたよ」
「恋文だったりして」
「まさか」
茶化すミアに苦笑し、ポケットに手紙をしまう。そこに女変化したテンマが合流した。護衛に徹しているのか会釈するだけで一言もしゃべらない。
「今日はどこを掃除するの?」
「大きいお風呂だって」
「大浴場? それなら案内するよ。見たらびっくりするよ。すごく広いから」
友達に学校の案内ができるだけで気分が高揚した。浮かれているのが自分でもわかった。
「先に行ってもいいですか?」
リーダーの女性に声をかける。
「行ってきな。終わったらここに集合だよ」
わかりました、と返事して、コルフェ達と大浴場へ向かう。他愛のない話をしながら大通りを進み、用水路にかかる石橋にさしかかった時、三人に謝ろうと思った。
「部屋を綺麗にしてくれたの、コルフェ達だよね?」
「そうだよ」
「あの時はお礼を言えなくてごめん。ありがとう」
アレスとの事で塞ぎ込んで迷惑をかけてしまった。
コルフェは首を横に振る。
「気にする事はないよ。誰だって落ち込む時はあるでしょ」
「そうそう」
うなずくミアの後ろでルーアもうなずいている。彼女達なら許してくれるような気がしていた。でも、確かめないと不安でしょうがなかったのだ。
「ありがとう」
気持ちが軽くなった。しかし、他にも気になっている事がある。
「あの男達はどうしているの? また来たりしてないよね?」
「あの男達って?」
「ほら、海上警備隊とかいう暴力的な男達」
その問いに「え?」とコルフェ達が立ち止った。
「ユイナ、知らないの?」
「……?」
聞き返されるとは思っていなかったので困惑する。コルフェがハッとした顔で手を打った。
「思い出した。ユイさんはずっと部屋に籠っていたから、あの話を聞いてないんだ」
「あー、だから知らないのか」
ミアとルーアが納得した顔になる。ユイナだけが取り残されている。
「な、何かあったの……?」
「心配しなくても大丈夫よ。海上警備隊はもういないから」
コルフェが安心させるように言う。だけど、それが逆に不安を誘う。
「いない……って? まさか、私を安心させるために嘘をついていないよね?」
ミアが苦笑した。
「ちょっとー。本当なんだから信じてよ」
「そうだよ。本当にいなくなったの」
「だ、大丈夫なの? いなくなったと見せかけて戻ってきたりしないよね。悪い人間って狡猾なんだよ。何をしてくるか分からないんだよ」
「それはないよ。だってアレスが――」
「いいじゃないミア。危険は去ったんだから、それ以上は言う必要ないよ」
コルフェは理由を言いたくないようだ。だけど、ミアが口を滑らせてくれたおかげでアレスが何かしらの解決をしたのは分かった。
「わかった。詳しくは聞かないよ。だけど、みんな無事なんだよね? 危害を加えられてないよね?」
「安心して。みんな無事だよ」
「そう……それなら良かった」
「それより、学校はどう?」
「学校? すごく綺麗な学校だよ。夜だと分かりにくいけど、この道の先に歴代舞姫の石像がずらりと並んでいて、あたりに紫色の花が咲いているんだよ。それに、学生寮の廊下には神話を表現したステンドグラスがあって神秘的な感じがするね」
「いいなぁ。昼間に来てみたいなぁ」と、ミア。
「ロートニアの令嬢とは仲良くなれそう?」
コルフェの質問にミアとルーアも興味津々な目をしている。本当はそれを聞きたかったらしい。
「ど、どうだろ……まだ三日目だしね。あ、そうだ。同じ学年に三つ子の姉妹がいるよ」
「三つ子?」
「そう! 顔がそっくりなの。最初に見た時はびっくりしたよ。あれは髪型を同じにされたら見分けつかないね」
はぐらかした。友達の夢を壊したくなかった。カトレアと一緒に生活しているから貴族令嬢に憧れるのは分かる。でも、慈愛に満ちた天女のような女性は珍しいはずだ。どんなに身分が違っても、どんなに着飾っても、中身は同じ人間なのだ。良い人もいれば悪い人もいる。
「ここが大浴場だよ」
「わぁ、ひろーい!」
ミアの歓声が大浴場にこだました。大浴場には湯温を調整するために三連の棚湯がある。上段の湯舟には湯口から高温の湯が流れてくるので最も熱く、それを少し冷まして中段の湯舟に流し、さらに冷ました湯が下段の湯舟に流れていく仕組みだ。
「夕食を作る時に大量の焚火をするんだけど、その熱を利用して大量の湯を沸かしているらしいの。でも、お湯の温度を一定に保つのは難しいみたいで、だから三段階に温度が下がる湯舟をつくって、生徒達は好みの湯舟でくつろぐの。肩までお湯につかっていると疲れが溶けていくよ」
「贅沢だなぁ。濡らした布だけだと完全に綺麗にできる気がしないもんね。髪も水で洗っているだけだし、子供みたいに川で水浴びするわけにもいかないもんね」
「その気持ち分かる」
ミアの言葉に少女達は同意した。
出稼ぎ労働者の為につくられた宿場町には風呂がない。そのため、川沿いに造られた洗い場まで行って体を洗う必要があったが、男だらけなので女はまったく近づけない場所になっていた。年頃の少女にとって汚れやにおいは気になるが、異性に裸を見られるほうが恥ずかしかった。だから自室で濡らした布で体を拭いていた。
ふと、アレスが男の子達を連れて水浴びに行っていたのを思い出す。
今は銀狼の姿になって、メリル王女と近くの森に隠れているのだろうか。
魔眼の海賊を今も探しているのだろうか。
訊きたい事はまだまだあったが、コルフェ達が腕まくりして掃除に取り掛かろうとしているので聞きづらかった。掃除が終わった後で一息つけるはずだからその時に聞くしかなさそうだ。
ユイナはスカートの裾を膝上まで上げて濡れないように結んだ。ペントからの手紙は濡れない場所に置いている。
「順番に綺麗にしていこうか」
ユイナ、コルフェ、ルーア、ミア、そしてテンマは横に並んで壁や床を布でこすって綺麗にした。それが終わると今度は湯舟だ。湯舟は下段から擦って洗い、流し蓋を外して残り湯を流しきってから一つ上の湯舟を洗い、最後に綺麗な水を湯口から流し落として完了となる。
「それじゃあ水を流すね」
「うん。これで終わりだね」
ずっと屈んで掃除していたコルフェ達が背伸びをするのを横目に湯口から水を流した。綺麗な水の流れに目をやっていたユイナは、同じように流水を眺めていたコルフェ達へと視線を向ける。
「ねぇ、今も魔眼の海賊を探しているの?」
メリル王女が海に向かって黒い鳥を飛ばしているのを何度か見かけた事がある。そして、数日後に帰ってきた鳥に触れると、鳥が見た景色を断片的に見る事ができるらしい。
「メリル王女が海賊船を見つけたみたい。詳しい場所までは分からないけど、方角は分かるからそのうちたどり着くだろうって」
アレスはすぐにでも動こうとするだろう。子供達をさらっていく海賊を決して許しはしない。
「それじゃあ……」
「船の修理が終わったら海賊の討伐に行くと言っていたよ。それに、これからは別行動するみたい」
ユイナはミアを凝視する。
「別行動って……?」
「カトレアさんと一緒にノノルに残る人達と、アレスと一緒に救世の旅に出る人達に分かれるの」
恐れていた事だった。胸をわしづかみにされたように苦しくなってくる。
「ま、待って……それはいつ? 船の修理はいつ終わるの?」
「来週ぐらいじゃないかな?」
「そんな……」
絶望の声がもれた。
ロートニア舞踏大会まであと一ヶ月もあるのだ。アレスの旅立ちに間に合うわけがない。
それどころか、何も言わずに置いて行かれるのだと思うと、胸が苦しかった。




