本当はずっと、知っていたんだ。1−5
――本当はずっと、知っていたんだ。
望月に『諦めてるの?』と言われた時、過去の恥ずかしい失敗を知られたみたいに、俺は動揺した。クラスメイトからボコボコにされたり水をかけられたり……そんな普通だったらとてつもなく嫌になることが起きても普通な振りをしていられたのは、俺が俺自身を諦めていたからだ。だから望月は怒ったのだ。自分自身を諦めている俺を気に入らなかったから。自分自身を諦めている俺を、そんな歳で人生悟ったみたいな顔して諦めてんじゃねえよ、って、俺を叱るために。
俺を執拗にイジメてきたクラスメイトも……南条、手塚、斎藤の三人だって、本当はそうだった。
俺が今の学校に移ってきて最初に話しかけてきてくれたのは、実はこの三人だった。
「土禍ってどこから来たの?」
「これから遊びに行こうぜ。みんなでカラオケでもいかない? 土禍の歓迎会兼ねてさ」
「なんでそんな辛気臭い顔してんだよ。せっかく格好いい見た目してんだから、もっと明るくいこうぜ! なっ!」
それを、俺の方が無視したのだ。
「疲れているから」と。
「興味ないから」と。
「いちいち俺に関わってくるなよ」と……ウソを、ついた。
……本当は嬉しかった。
以前みたいに、「いいね」と、「遊びに行こう」と、心の底から言ってやりたかった。
けれどその時にはもうダメになっていたのだ。
度重なる転校と、大切なものを手に入れては失い、手に入れては失いを繰り返して、俺の心はすっかり冷めきっていて、頭では「これじゃいけない」「こんなことをしていては本当にダメになる」とわかっていても、心はついてかなかった。口からは……表面をなぞる冷たい言葉しかもう出てこなかった。
思い返せば、南条達三人は俺をイジメながら、それでもいつも口にした。
『悔しくないのか』
『やり返してこないのか』
と。
そうだったのだ。
明らかに覇気のない自分を見て、それでもあの三人はそれをどうにか変えようとして、俺に突っかかってきていたのだ。
『悔しかったらやり返してみろよ』って。
どんな形でもいいから心の冷めきった俺を、自分自身を諦めている俺を、なんとか動かそうとしていた。けれど俺がそれに応えずずっと普通な振りを続けたから、いつしかそれは本当のイジメに変わっていった。逃げ続ける俺に、周囲も自分も騙す俺に、三人も徐々に熱意が怒りへと形を変え、俺を挑発するその言葉は悪意のある悪口に、反応を期待していた何気ないちょっかいは単なる暴力に、いつしか形を変えていった。




