本当はずっと、知っていたんだ。1−2
町が地獄に変わって命の危険が迫った時、俺は無意識のうちに「死んでもいい」と、思ってしまった。むしろこれで死ねると、安堵する感情さえ芽生えた。けれどそんな後ろ向きな感情を認めることが嫌で、俺は妹を理由にした。妹を助けるためにと、自分に言い訳をして、頑張らなければ、死んではいけない理由を作った。だから学校で妹が無事だとわかった途端、俺の身体は重くなった。妹が無事であるのなら、もはや俺が頑張る理由も生きる理由もない。むしろ、「死んでもいい」「死にたい」という負の感情の方が強くなり、無意識のうちに俺は、自ら死のいざなう方向へと進んでいった。恐れもせず校舎の外壁をつたったり、自ら自分を囮にしたり……そして最後には、白髪の少女に出会ったんだ。
『さようなら……名無し君』
その時も俺は、妹を言い訳にした。
本当はただ自分が死にたかった、終わりたかっただけなのに、最後まで俺は妹を言い訳にした。『妹を助けるためだから』と格好つけて、都合よく自分だけ死のうとしたのだ。
『蛇に……生まれた』
そう、全ては『蛇に生まれた』せい……
蛇にさえ生まれてなければ、俺は……
『それでも私は、お兄ちゃんのために生きようと、決めた』
その声で灰がハッと我に返る。
これは……燐の声?
なんで……逃げたはずじゃ……?
目を開けようと力をこめるが、どうしても開かない。
それどころか全身をついばまれるような痛みに襲われて、「うぐっ……!?」と再度意識を失いかける。
そんな中で声が……燐の声だけが遠くどこかから両耳に響いてくる。
『私とお兄ちゃんがここに来たのは、去年の十月のことだった』
それは……懺悔の、物語だった。
自分の過ちで家族を、俺を引越しさせることになり、大切な人の大切なものを失わせてしまった……
俺と同じくヘビに生まれ、その間違いに気づき、自分を見失い、転落していった、つまらないだけの人生……
後悔と苦しい思い出だけが詰まった、悲しい過去の物語だ。




