蛇に、生まれた。1−13
「……それが、お前の答えか」
燐は整いきらない呼吸のまま、俯いたまま白い髪の少女に答えた。
「うん……それが私の、選んだ答え」
白い髪の少女も答えた。ゆっくりと、告げるように。
もう興味がなくなったかのように。
「そうか、じゃあ死ね。お前の大好きな兄と一緒に」
もはや燐も抵抗はしなかった。
するだけの力も残されていなかった。
だからただ頷いた。
「……うん」と。
決意を込めてしかし、小さな声で。
白髪の少女が一度目をつむる。
何かを考えるようにして、わずか上を見上げ、やがて目を開けて口を開いた。
「……私を裏切ったことを、後悔すればいい。……やれっ」
その言葉で今度は今まで平静を保っていた灰が、
「うぅ……があぁ……あああぁあああっ!」
と大きな叫び声をあげ、右腕を振り上げた。
燐が顔を上げる。
そこには今はもう別のものに姿を変えてしまった兄がいる。
目は真っ赤で表情は敵意に満ち、今にもその右腕を自分に振り下ろし、噛みつこうとしてくる兄。それを見て、燐は覚悟を決める。
(ごめん……ね。お兄ちゃん)
そして目の前の兄が右腕を振り下ろす。
燐はもはや目を閉じて、最後の一瞬を待った。
「うあああ―――――――――――っ!!」
けれどその叫び声を聞いて、「……え?」と燐は目を開けた。
それは自分のものでも、兄のものでもない……白い髪の少女のものだった。
目を開けると目の前から兄の姿は消えていて、代わりにすぐ傍で白髪の少女が兄に腕を食われていて、燐は「え……どうして?」と驚愕の色をあらわに呟いた。
「おいっ……なんのつもりだっ、お前ッ!! やるのは私じゃない。あっちだ。離れろ!!」
「うぅ……がぁああ!!」
白髪の少女が額に汗を浮かべて兄に命令するが、兄はそれを聞かない。
それどころかより強く、引きちぎるかのように白髪の少女の腕に強く噛みつく。
「お……お兄ちゃん? お兄ちゃん!?」
燐が慌てて兄に向かって呼びかける。
わずかに振り向いた兄の目は、真っ赤であることに変わりはなかったが、少しだけその中に兄の瞳の色が垣間見えた気がした。




