蛇に、生まれた。1−10
「はあ……もうわかっただろう、お前も。お前の兄は死んでるんだ。手遅れなんだ。何もかも」
さらに急に刺すような目つきに変わって、燐に最後の選択肢を告げる。
「そしてお前も、選ばないといけない。目の前の兄のように、一度死んで私の操り人形になるか、それとも私の仲間になって生きながらえるか……選べ。今すぐ」
「……っ!」と、まだ兄のショックから立ち直り切れないうちに、新たな窮地に立たされて思わず燐の胸が締まるように痛む。
ここで前者を選び、後者を選ばなければ、私は死ぬ。そのことを頭が理解するより早く本能が理解した。
死にたくは……ない。
冷たい恐怖が足元をさらう。
けれど……
燐が答える。
「私はお兄ちゃんを、見捨てない」
その答えに、白髪の少女が驚いた。
「……はっ? 聞き間違え……じゃないんだよね?」
「……そう。聞き間違えじゃない。私はお兄ちゃんを、見捨てない」
燐がこくりと頷き、また少女の顔が疑問と、もう一つ不快の色に包まれる。
少女は聞いた。
「なんで……? 何がお前に、死を選ばせる? どうしたってお前の兄は死んでいるんだ。ならお前だけでも助かるのが、この状況じゃ最善の道だろう。どうして!?」
「ちがうっ!!」
燐が強い口調で反論する。その目からは今やとめどなく涙があふれ出て、死への恐怖や、追い詰められていることの孤独感が完全に消え去ったわけではなかったが、それでも燐は強い瞳で白髪の少女を見て、言った。
「あなたはさっき言った。『後悔しているのか』と『恨んでいないのか』と。けど違うんだっ。私が唯一後悔しているのは、お兄ちゃんに迷惑をかけたこと。私が唯一恨んでいるのは、過去の無知だった自分……っ! それ以外のことなんて、どうでもいい! ヘビになれるから転校しなきゃいけなかっただとか、イジメを受けたことだとか、全く気にしてないかと言えばウソになるけど、そういうことじゃないんだっ!」
ぎゅっと、白髪の少女を見たまま、灰の服を握る両手に力をこめる。
思わず頭を兄の胸に沈めたくなるが、気持ちを抑えて燐は少女にぶつけ続ける。自分の思いを。




