蛇に、生まれた。1−8
あたりに再度静寂が落ちて、その中で「はあ……はあ……」と白い髪の少女が肩で息をする音だけが聞こえる。耳を澄ませば、壁の外では人々が騒ぎ立てているような雑音も今や聞こえた。燐がいつまでも答えられないでいると、やがて白髪の少女が先に口を開いた。
「……お前、私の仲間になる気はないか?」
はっと、予想外の提案に燐の意識が飛びのく。
「なか……ま?」
その意図が全くつかめなくて押し黙っていると、白髪の少女がそれに答えた。
「そう、仲間だ。もう察しているとは思うが、この事態を引き起こした犯人は私だ。私が多くの人間を殺し、操り人形にし、この町を地獄に変えた。これからもっと多くの場所を、ひいてはこの世界全部をこの町のようにするつもりだ。一人で」
白髪の少女が靴音をカッ、カッと鳴らしながらゆっくりと燐に近寄ってくる。
「……っ!」
けれど逃げ道のない燐は一歩も動けない。
生半可冷静になってしまった分、一挙に燐はついさっきまで忘れていた恐怖や焦りなど、自分がたった今命の危機に立たされていたんだということを思い出す。
一方で白髪の少女はあっという間に燐に手が届くぐらいまで距離を詰めてきて、そしてねっとりした声音で言う。
「だが、その計画を実行に移してどうしたことだろう。まさか自分と同じような立場の人間がいるなんて知った。お前は私と一緒だ。だから、私について来い。私の仲間になれ。そうすればお前だけは、他の人間みたいに操り人形にはしないでやる! どうだ?」
「私、は……」
白髪の少女の気迫に押されて、急に燐の足が震えてくる。
足の先から地面の冷たさが伝わってきて、ふと自分がずっとハダカでいたことも思い出す。
目の奥では今にも涙が出てきそうな圧があるのが、自分でもわかった。
……自分は弱い。
運動神経もなければ、世渡りも人一倍下手で、ヘビになれたって強くなるどころか逆に弱くなるだけで……たぶん、このまま何もしなければ、私はここで死ぬ。それならいっそ、今だけでも、嘘でもいいから「はい」と答えた方がいいんじゃないか……。燐は思う。
けど……




