蛇に、生まれた。1−7
『きゃっ……』
『あっ、ごめーん。転ばせちゃった? 土禍さん』
『……いえ、別に』
『仕方ないんじゃない。存在感薄くて見えなかっただけでしょ? ××のせいじゃないよ、アハハ』
『…………ごめんなさい』
あの時の私は、とても普通の状態じゃなかった。
何も信じられるものがなくて、ヘビになれてしまう自分はそれ以上に信じることができなくて、比喩ではなく世界のすべてのものが自分を襲ってくるように見えた。教師も、クラスメイトも、街中を歩く人も、黒板も机も、帰り道にある公園でさえ、自分を襲ってくる何かに思えた。
そして中学一年の中頃、私はまた、やってしまったのだ。
『ヘビのくせに』
名前も顔も覚えていないクラスメイトに言われたその一言は、結果から言えば単なる悪口の一つだった。けれど錯乱に錯乱を重ねた私は完全に『自分がヘビになれることがバレた』と思い込み、まだ授業中だったにもかかわらず学校から逃げ出してしまった。でも逃げ場所なんてどこにもなくて、街中をただ彷徨って彷徨って……結局最後には、家に帰るしかなくて、
『ど、どうした、燐!? 何があった!?』
家に帰えるとそこにはお兄ちゃんがいて、たまらず私はすべてを吐き出していた。
『…………た』
『……なんて?』
『……ばれちゃっ、た』
『……どうし、て?』
『わから……ない。わから、ないのっ。ごめん……ごめん、なさい。ごめんなさい、お兄ちゃん! ごめんなさいっ!』
そうしてお兄ちゃんが色々動いてくれて、私たちは再度別の場所に、今の場所に移ることになった。私のせいで……また私が起こした、問題のせいで……。
「つまり君は、後悔しているということかい?」
白髪の少女が尋ねる。
燐が答える。
「後悔……しているんだと思う。あの時からずっと」
白髪が聞く。
「ならやり返そうとは思わなかったかい? 自分をこんな状況に追い込んだ人間どもに、同じことをし返してやろうと、自分たちのしたことを死ぬほど後悔させてやろうと……私みたいに!」
「……私?」
急に雰囲気の変わった白髪に、燐が問い返す。
「どういう……意味?」
けれどその質問には答えてはくれず、白髪はさっきまでとはうってかわって熱のこもった口調で燐に語り掛けてくる。
「だから、やり返そうとは思わなかったのか、お前は!? たった一つ人と違うことがあるだけで周囲から迫害され、閉じ込められ、ずっと苦しめられて……お前は人間を恨んでないのかって、聞いてるんだっ!」
はあ、はあ、と、これまでで初めて白い髪の少女が息を乱す。その様子にやや押されて、燐の額に今更ながら冷汗が滲む。
「そ、それは……」




