白髪の女1-4
「燐、大丈夫か!?」
「う……うん!」
燐の様子を一瞬のうちに確認して、余計な間は置かずすぐに壁の向こう側、河を見渡すコンクリートの堤防の上に降り立つ。
「燐、来いっ」
「うん……!」
次いでバッと、ちょうど身長の高さぐらいある壁の上から飛び降りてきた燐を受け止めると、「ふう……」と一息だけついて態勢を整える。そして一度周囲を見渡した。……ここに直接降り立つのは初めてだが、何度か見たことはある景色だ。おおよそこの堤防がどこまで続いてどこに抜けられるかは想像がついた。幸いに半ゾンビもいないみたいだし、上手くいけばこのまま俺が元いた土手まで行けそうだ。土手ほどの広さがあれば半ゾンビを避けるのは難しくないだろうし、土手を抜ければ俺たちの家まではすぐだ。……ようやくゴールが見えてきて、さっきまでの緊迫していた状況の反動もあってか、思わずほっと胸をなでおろす。
「燐、こっちだ。急ぐぞ」
「うん」
しかし、そうしてゆっくりとコンクリートの堤防を駆け出そうとしたその時だった。
ガッ、ザッ! という背後からの物音で、その安堵が全くの早計だったと知った。
「きゃっ……」
「……うそだろっ、早すぎる!」
そこには堤防の上に降り立ち手を着く、白髪の姿があった。
それを見て俺も燐も思わず一歩後ずさった。
見るからに焦りを浮かべると俺と燐とは対照的に、少女は笑う。
「逃げられると、思ったか? 逃げ場などどこにもないと、言っただろう」
少女がまさに嘲笑うかのように俺に言うが、もはやそれに反応する余裕すらない。
俺はすぐさま燐の腕を引っ張ると、「ぼうっとするな、燐っ。逃げるぞ!」と、またしても一目散にコンクリートの堤防を駆けだした。
「お兄ちゃん!」
「無駄だよ、わかっているだろう?」
燐と少女が、それぞれ俺に声を掛けてくるが、そのどちらにも反応はしない。
ただひたすらに、俺は燐を引っ張って、堤防の上を走り続ける。
はあ、はあ! と、今日何度目かわからない全力疾走に瞬く間に息が上がるが、スピードを落とすことは決してしない。『こいつから逃げないと、確実に死ぬ』……その思いだけが、俺の足を動かし続ける。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




