白髪の女1-1
◆◇◆ Ⅲ:白髪の女
「久しぶりだね」
少女は言った。
その傍らには張田の身体が転がり、燐がそれを必死に揺すっている。
――張田部長っ、張田部長!
けれど燐の声はまるで蚊帳の外から響くようで、俺と少女の間には奇妙な沈黙だけが流れる。
――久しぶりだね。
夜の空気からはどこからともなく半ゾンビのうめき声が聞こえてくるのに、それよりも少女のこぼした小さな一言の方が強く俺の頭に反響する。
……久し、ぶり、か。
言うほど久しぶりではない気がするし、実際少女と会ったのは今朝が初めてで、今会うのもつい夕方振りだ。ものの数時間も経ってはいないだろう。……けれど少女の『久しぶり』という言葉は、この上なく今の状況に適しているように思えた。
「……久しぶり、とは返したくないな」
俺も何を思ったか、気づけば少女に向かって言葉を返してしまっていた。
言ってすぐに「ミスった……。話をするべきじゃなかった……」と後悔したが、もう遅い。俺が言葉を返すと、少女は嬉しそうに目尻を上げた。
「ふぅん、ようやく答えてくれたね」
少女の目がこちらを真っすぐ見る。
「……答えるつもりはなかったんだけどな」
俺がさらに少女に返すと、少女は微笑んだ表情を崩さぬまま俺に聞いた。
「この子は君のなんだい? 名無し君」
まるで夕方とは雰囲気が違う。
夕方の時は口調も顔つきももっとその見た目通り子供じみていた。けれど今のこいつはまるで妖艶な演劇女優か何かみたいで、見た目こそ少女然としているものの、真正面から相対する今はとても見た目通りの少女のようには扱えない。むやみに手を触れようとすればその手ごと火傷を負ってしまいそうな、そんな雰囲気がある……。今更ながらに彼女のその深紅の瞳に目が移る。彼女の眼は他の半ゾンビ達と違って赤い瞳の中にも一筋の鋭い黒目があり、意識が正常なのも明らかで、――それは、目の前の少女こそが今の状況を引き起こした真犯人だという確信を裏付けるこの上ない証拠であったが、相対する彼女の瞳からはそんなことさえどうでもよく思わせてしまうほど、深く危険な匂いだけがする。……このままだと、殺される。その直観だけが、さっきから絶えず俺の頭に警鐘を鳴らし続ける。
俺が様々な事に思いを巡らせていると、彼女の方から今一度問いかけてきた。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




