壊れた世界2-20
「ふざ、けんなっ! そんなわけ……」
あるかよ、と言いたかったが……これも言えなかった。
今度は事情があって言えなかったわけじゃない。
本当に張田の言うことの方が正しいと思ったから、言い返せなかったのだ。
町中で半ゾンビに襲われながら俺に助けを求めていた人たち、校門で半ゾンビとなったクラスメイトにおいかけられていたいじめっ子と、半ゾンビになってしまったいじめっ子、そして校舎の玄関で俺に助けを求めた女生徒……そのいずれも、俺は見捨ててきた。
『仕方ない』
たったその一言だけで、全員を見捨ててきた。
しかし本当に正義感のある人間なら、そうも簡単に『仕方ない』のたった一言で助けを求めてきている人間を見捨てられるだろうか……? 俺の答えは、『ノー』だ。……少なくとも俺が彼ら、彼女らを置いてここに来るとき、俺はなんの躊躇いも持たなかった。仕方ないと言いながら、なんの躊躇いもなく、全員を見捨ててきたのだ。現に俺は、おそらく燐が先の張田と同じ状況になったなら、躊躇いなく半ゾンビを殺すだろう。だからあえてあの時俺は、張田に対し自信を持たないまま『人殺し』と断言した。人殺しだから、半ゾンビを殺そうとしなかったのだと。――本当は、燐のためになら何でもするが、張田のためにはそうしようとしなかったという、それだけの話なのに。だから俺は張田に、何も言い返せない。俺はあの時『半ゾンビを殺し人殺しになるリスク』と『張田が死ぬリスク』を天秤にかけ、前者を取ったのだ。正確に言えば、後者に比べて前者のリスクを取りたくなかったのだ。それはおよそ正義感とは程遠いもので……
さらに張田は続ける。
「それにあなた一番始めに、私が『なにか知っているの』と聞いたとき、明らかにはぐらかしたでしょ。……それはつまり、あなたがこの事態を引き起こした張本人で、その全部を知っているからじゃないの?」
「だからそれは……!」
――それも、全くの勘違いだ。ただ俺の中で白い髪の女の子が原因だと確信してははいたものの、あの時はその根拠が示せなかったからだ。だから言いかけて止めた。それだけの話だ。なのに張田は、完全にそれを勘違いして捉えていた。かと言って今更それを丁寧に説明している時間もなければ、説明したところでおよそ信じてくれるとも思えない。それほど目の前にいる張田の顔は俺に対する疑念に満ち溢れていた。なんでこうもかみ合わないのだろうか……。胸の奥からむしゃくしゃした気持ちが沸き上がってくる。
そのうえ張田の次の一言が、違う意味を持って俺に衝撃を与えた。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




