壊れた世界2-17
燐も、直接言わずとも言いたいことをすぐに理解してくれて、「……もう大丈夫、お兄ちゃん」と答えてくれる。
俺は頭を切り替えるようにぶんぶんと首を左右に振ると、燐の方を向いて、
「燐……早く立て。逃げるぞ」
と声を掛ける。燐もさっきまでとは違う動揺を混ぜて、俺に頷いた。
「う……うん」
何から、とは言わない。
それが半ゾンビからなのか、それとも別の何かからなのか、俺でさえ区別がついていなかった。頭の中ではただひたすらに後悔だけが渦巻いていた。やってしまった……。あまりに異常な状況に置かれたせいで、いつもなら当然のように注意してしかるべきことを、完全に失念していた。真後ろにいた張田には見られてはいないだろうが、火のない所に煙は立たないように、俺たちにとっては火をあげないことがなにより重要なのだ。それなのに俺は……
「お、お兄ちゃん、早く!」
サッと立ち上がって後ろに駆け出そうとしている燐が、いまだぼうっとしている俺に声を掛けた。……後悔はおさまらないが、今はそれどころじゃないのも事実だ。
俺は悔恨の念を強いて取り払うと、依然その場に立ち尽くしている半ゾンビ達をしり目に燐の後ろを駆けだした。
――がしかし、そこでまた思わぬ事態が発生したのだった。
燐がちょうど張田の横を駆け抜け、俺も、なぜかいまだ逃げようとせずその場に踏みとどまっている張田を追い抜かそうとした、その時だった。
張田が俺の前に立ちはだかり、言った。
「――それ以上来ないで、土禍くん」
「……は?」
張田の訳が分からない行動に、思わず俺は素っ頓狂な声を上げた。
そんな俺に張田は、どこから持ってきたかわからないカッターナイフを突きつけて、再度告げた。
「それ以上近づかないでと言ったの、土禍くん」
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




