壊れた世界2-16
「きゃっ……!」
たまらず燐がしりもちをついて転ぶ。
男子生徒は「ああ……はあっ! はあっ、たすけて、誰か!」と後ろを振り返ることもなく校舎裏を逃げ去っていく。
俺は固唾を呑んで燐の方を見やった。
張田がとっさに叫んだ。
「リンちゃん、危ない!!」
燐のすぐ目前には、さっきまで男子生徒を襲っていた数体の半ゾンビが迫っていた。
そしてその手はもう燐の顔寸前にまで――
それを見た瞬間、今度は燃え上がるように頭の中が真っ赤に染まった。
そして反射的に俺は燐の前に身を乗り出し、半ゾンビの群れに向かって怒号を飛ばしていた。
「触るなッッ!!」
――その時だった。
「うぅ……」と、半ゾンビ全員の動きが止まったのだ。
思わず「……?」と俺を含め俺たち三人の動きも止まる。
「なに……? どうしたの?」
後ろで張田が驚きの声を漏らす。
思わず飛び出した俺でさえ動揺を隠せない。
半ゾンビが止まった……?
言葉が通じた……? 怒声におののいた? それとも他のなにかが……?
張田も、俺も、これまででおよそ初めての状況に半ば混乱をきたす。
しかし燐だけが、その答えを知っていた。
「お……お兄ちゃん、眼……」
燐が俺にだけ聞こえる声量で呟く。
それを聞いてハッと我に返る。
――眼が、俺の眼が蛇の眼に変わっていた。
直接鏡で見たわけじゃない。ただ見なくても変わっているとわかるほど、眼にいつもとは違う感覚がある。
――まずい。
半ゾンビを目の前にしている状況にもかかわらずとっさに自分の眼を覆い隠す。そうしてほんの少しの間で、気持ちを落ちつける。置かれている状況もあってすぐには気持ちを落ち着けられそうにはなかったが、意識を集中させて、なんとか眼だけでも元に戻す。ちらりと少しだけ顔を左斜め後ろに向けて、「……燐」と言外に確認を求める。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




