壊れた世界2-10
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カン、カン、カンと、鉄製の非常階段に三人分の足音が響く。
そのペースは日常よりいくぶん速く、また、音からだけでも足音の主たちが焦りを感じていることがわかる。
「張田、待て……」
「……なに?」
その先頭を少しオーバーペースで行こうとした張田を、俺は一番後ろから呼び止める。
張田はあからさまに不服そうな表情を浮かべたが、俺が呼び止めると一旦、その場に足を止めた。俺たちは今、三階と四階の間にある踊り場に差し掛かっている。
つまりその先には、
「やつらがいる。……最初に話した通りだ。位置が変わってないなら、おそらくすぐ下に、やつらが二体いるはずだ」
張田がちらりと下をみやる。
それでその存在に気づいたのか、一歩後退して俺の方を見た。
「そうだった……わね」
……まさかとは思うが、忘れていたのだろうか。
けれどそんなことはおくびにも出さず、また感謝する風もなく、張田は俺に問いかけてくる。
「で……どうするの?」
その口調は冷たく、俺を問い詰めるようでさえあった。
……確かにさっきの件は俺が悪かったかもしれないが、ここまで態度に出されたらそれはそれで不愉快というものだ。……とはいえそれをここで指摘しても意味がないので、仕方なく俺は、元々考えていた案を実行に移すことにする。
「……張田、下にいるのは髪の長い子と短い子の二人か?」
張田が答える。
「ええ」
俺が入念に確認する。
「他にはいないな? 位置は?」
張田が再度簡潔に答える。
「いないわよ。二人とも三階の踊り場にいるわ。なんだったら、自分で確認すればいいじゃない」
俺が答える。
「いや、それで十分だ。そしたら――」
ここでの作戦は非常に単純だ。
ただ俺が先頭に行って、短い髪の方の半ゾンビを転ばせ、長い髪の方の半ゾンビを身体で一瞬抑え込む。その間に二人を先に通し、俺もあとからついていくという作戦だ。
短い髪の方は相当に小柄だし、曲がりなりにも来る際に一度投げ飛ばしているため、こちらはなんとかできるだろうという自信がある。一方長い髪の方は比較的身体も大きいしさっき取っ組み合いをしていない分不確定要素が多かったが、おそらく大丈夫だろうと思う。本音は、これ以外の策が思いつかなかったというのが正直なところだが。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




