壊れた世界2-2
「燐……とりあえず、早くここから――」
と、そこではじめて気づく。燐の後ろに、もう一人誰か別の人間がいた。
「あー……、ようやく気づいてくれた?」
一瞬こそ動揺したものの、すぐにそれが半ゾンビではないとわかって、俺は肩の力を抜いた。
「あ……ああ、すまない」
「土禍くんだよね? はじめまして……なのかな? 一応同じ学年の張田マナです」
張田マナ……同じ学年なのか。はじめて知った。
燐が一歩前に出てきて「吹奏楽部の部長なの」と付け加える。
俺も丁寧に張田に答える。
「はじめ、まして。B組の、土禍、灰……だ」
「知ってるよ。割とよく、知ってる」
張田が続ける。
「隣のクラスだし、燐ちゃんのお兄さんだしね」
それに土禍くんって、なんか目立つし、と最後に意味深なことを小さく付け加えるが、それはスルーする。この学校では友達など一人もいないはずだが、それはなぜか前からよく言われることだった。だが今は、そんなことどうでもいい。
「……そうだったんだ。いつも妹がお世話になってる」
そう言って小さく頭を下げると、食い気味に張田が止めてくる。
「いいよ、いいよ! こんな時に。それより助けに来てくれて、ありがとうね!」
妹を助けに来たのであって、別に張田を助けに来たわけではないが、否定するのも変かと思い、言わないことにする。
「いや、気にしないで。それよりもとにかく早くここから出ないと。遅くなればなるほど、襲われる可能性が高くなる。出口は……」
言いながら一応部屋の中を見回すが、やはり廊下へのドアはない。この部屋から出るには、一度音楽室を経由するほかないようだ。
それを十分理解してか、燐も張田も浮かない顔をして言う。
「……ご覧のとおりよ。ここを出るにはそこから出るしかない。でもドアの前には例の変なやつが待ち構えている。強行突破できればいいけど、襲われて噛まれるリスクが高すぎる。土禍くん一人ならさっきみたいにサッと突き抜けられるのかもしれないけど」
続いて燐が音楽室に繋がるドアの半透明の小窓を覗いて言う。
「それももうダメみたい、お兄ちゃん。さっきのでドアの前の人影が増えてる……。二、三人か、もしかしたらもっと多くか……」
それを聞いてさすがの俺もため息がでる。
「はあ……悪い。助けに来たつもりが、むしろ状況を悪化させちまったか」
言うと、慌てて二人が「ううん! お兄ちゃんのせいじゃないよ!」「それにどうせ一人だろうが、何人だろうが私たちがここを出られるとは思えなかったしね。気にしないで」とフォローをいれてくれるが、それで状況が良くなるわけでもない。
三人が黙ると、自然三人の間に落胆のようなため息が落ちた。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




