壊れた世界1-5
四階に着いた俺は、すぐさまドアを開けて中に入った。ドアノブに手をかけた瞬間、もしかしたら開かないのでは? と一抹の不安がよぎったが、幸いなことに杞憂に終わった。
中に入った俺は当面の安全だけ確認して、そこでようやく一息つく。
「ふう……いつも来てるここにたどり着くだけで、こんなに苦労するとはな」
廊下の奥には数人の半ゾンビがいたが、距離はかなり遠い。手前から二番目にある音楽室に入るには問題ない距離だ。
かといってのんびりしてる時間もない。俺は早歩きで音楽室の前まで行くと、ぐいっとスライド式のドアに手をかける。
「…………」
ほんの一瞬だけ目を閉じ心構えをして、それからゆっくりと音を立てないようにドアを開けた。
……中は、予想通りと言うべきか、凄惨な光景が広がっていた。バラバラに倒れた椅子や譜面台、教室の奥に転がる数名の生徒と、その周りに立っている数人の半ゾンビ……よくみたら教室手前奥には音楽の教師だった女先生もいる。部活中に事態が起きたことは容易に想像がつく。逃げのびた生徒ももちろんいるのだろうが、すくなくとも音楽室には十人以上の被害者がいるようだった。
その中でとにもかくにも、燐の姿を探す。
「燐。……燐! いるなら返事をしろ! 灰だ! 燐っ!!」
声をかけ、教室中を一周見回す。
教室の隅、机の物陰、半ゾンビ達の集団……
順に、しかし手早く、燐がそこにいないかどうかを。
…………
――よかった。いない。
少なくとも、すでに半ゾンビ化しているやつ、倒れている生徒の中に燐はいなかった。
燐が生き延びている可能性を知ってほっと胸をなでおろすも、当然次の問題が発生する。
じゃあ、燐は今どこに?
土手でこの事態が起きてからここまでに約三十分。
同じタイミングで事態が起きてたとしたら、燐が逃げてからおよそ三十分は経っている計算だ。普通に考えれば家に向かって逃げるとは思うが……
とにかく一旦、ここを離れなければいけない。
さっきの声で半ゾンビたちの注意が俺に向いていた。
動きが遅いとはいえ、長居は危険だ。
「燐……」
たまらず口からこぼれ出る。
くそっ……一体どこに行ったんだよ、なんて考えていると、その返答がまさかの方向から返ってくる。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




